【R18】石に花咲く

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石に花咲く

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 光を集めて、紡いだら、あんな色彩になるのだろうか。

 そんなことを考えるほどにまばゆい、金と銀のあわいのような色の髪。
 細くて柔らかそうで、絹糸の如き、とはきっと、こんな髪を言うのだろう、と思った。
 しっかりとしていて硬質なのにうねりが強いシィーファの髪とは、全く性質が違うのだろう。


 その瞳は、夜明けを待つ空のような、深い紫紺。
 美しい色だ、と思いながらシィーファはそっと目を伏せる。


 確認して、安堵して、もう見る必要はない、と判断した。


 容貌ではない。
 身に纏う色彩でもない。
 シィーファが確認したかったのは、その目だ。
 値踏みするような目ではなかった。
 それだけで、シィーファには十分だった。

 多少、違和感を覚えたのは、何かを探すように、しっかりと、一人一人の顔を覗き込んで確認していたことだろうか。
 性格など知りようがないのだから、好みの外見の娘を探そうというのは自然なことではある。
 だが、おかしなことに、なぜシィーファはそのとき、その方が、【特定の誰か】を探しているように直感したのだ。


 本当に、おかしなことだ。
 そう、シィーファはその直感を頭の隅に追いやろうとする。

 代わりに、別のことを考え始めた。

 できれば、乙女がいいだろう。
 あの方に選ばれた乙女は、きっと大切にしてもらえる。

 だが、本気の恋をしてしまっては、つらいことになる。
 自分の置かれた境遇と、一族の定めを理解した、賢い乙女を選んでくれればいい。


 考えるシィーファの視界が、急に暗くなった。
 何が、と思って、視線を上げる。 と、夜明けを待つ空の色の瞳と、かち合う。

 驚いて、目を見張った。
 間近に見るとその瞳は、虹彩が銀のような金のような色をしている。
 とても、綺麗だ。
 綺麗な、だけでなく、その虹彩の中心へ、引き込まれそうな感じがして、シィーファは瞬きを繰り返す。


 シィーファたち、一族の女の目を見る者の気持ちが、わかった気がする。
 そんなことを考えていた、数瞬の出来事だった。


「決めた」


 音が、聞こえた。
 シィーファは、そのように認識した。

 誰の声かはわからなかった。
 問題にしなかった、と言った方が正しいかもしれない。


 低すぎず、高すぎず、きれいな音だった。
 その音だけを拾っていたために、言葉の意味を認識するのが遅れた。


 目の前の、夜明けを待つような色の瞳が、金と銀の虹彩が、睫毛で蓋をされるかのように見える。
 微笑んだ、とシィーファの脳が理解したのも、しばし後だった。


 だが、確かにそのとき、その人物は微笑んで、告げたのだ。


「貴女にしよう」


 脳が彼の言葉を理解したとき、思った。
 悪い夢だ、と。

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