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【シャルデル伯爵の房中】

10.シャルデル伯爵の渇望 *

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 何をするのだろう、と見ていれば、予想もしなかったものに触れさせられそうになって、リシアは手を引っ込めようとした。
 ディアヴェルは、それ以上リシアの手をそれに近づけようとはしなかったけれど、解放もしてくれない。 なので、リシアが困ってディアヴェルを見れば、ディアヴェルが甘えるように言った。
「…俺の、握って?」
「っ!?」
 やはり、そういうことだったのか。


 そう、思うと同時に、リシアは激しく狼狽する。
 その狼狽を察したようで、ディアヴェルは苦笑した。
「あ…嫌? 男のとか、触るの。 なら」


 好きか嫌いかと聞かれたら、どう答えたかわからない。
 けれど、嫌か嫌じゃないかと問われたら、嫌なんて、言えるわけがない。
「…ディアヴェルのなら、嫌じゃ、ない」


 答えたリシアを、ディアヴェルが驚いた表情で見る。
 リシアだって、ほとんど反射で出たその言葉に驚いている。 けれど、ディアヴェルが落胆したのを感じ取って、応えたいと思ってしまったのだ。
 笑んだディアヴェルは、上半身を起してリシアのことも抱き起こす。 そして、リシアの身体にシーツを巻きつけた。


「…触って?」
 誘う言葉に、リシアはどきどきと心臓を高鳴らせながら手を伸ばす。
 熱くて、硬い彼に、恐る恐る触れる。 そうすると、触れた彼がビクリ、と震えた。
 その反応に、リシアは思わず手を引く。


「あ。 ごめんなさい、嫌、だった?」
 リシアが聞くと、ディアヴェルは目元を染めてすっと視線を流した。
「…違います。 ………貴女の触り方、やらしい」
「なっ…」
 リシアは、言われた言葉に目を白黒させる。
 何がいやらしいと言ったのか、このひとは。


「ああ、妬ける。 慣れていらっしゃる?」
 むっとした調子で問われた言葉に、リシアもむっとして声を大にした。
「は、初めてです! 男のひとの、触るの、なんて…」
 慣れているはずがない、と続けるより先に、ディアヴェルの手が、リシアの手に触れる。
 ぐっと顔を近づけてきた彼が、吐息がかかりそうなほどの距離で囁いた。


「だめ、貴女の好きにさせてたら、俺、きっとおかしくなる。 だから、握って」
「こ…こう?」
 リシアがディアヴェルを見上げながら問うと、ふいとディアヴェルの顔が背けられた。


「…どうして、握り方もやらしいんでしょう」
「!?」
 握り方にいやらしいも何もないだろう。
 そんなにいやなら、握らないししない、と手を離そうとすれば、そっとリシアの手の上にディアヴェルの手が重ねられた。


「俺の可愛いひと」
 小さく、甘く囁いた彼が、リシアの瞼に口づけるから、リシアは態度を軟化させる。
 彼のものを握ったリシアの手を、上から彼が握って、動かす。
 熱くて、硬くて…先端から、何かが溢れてきている。


「は…」
 彼の息も、微かに乱れていて、色っぽくて。
 男性が、こんな顔をして、こんな声を出すなんて。
 本当に自分は、男女のことなど何も知らないのだなぁ、と思う。


「ん…」
 時折、彼が口づけてきたり、あいている手で、リシアの身体に触れたりする。
 けれど、リシアに無理を強いるわけではなく、「リシアの声聞くと興奮する」ということだったりする。
「あ…いきそ…。 …でそ…。 っ…」
「っ」
 びくっびくっと手の中の彼が震える。
 彼が震えるのに呼応するように、そこからびゅくびゅくと白濁がシーツにまき散らされた。


 驚いていると、勢いのなくなった最後の方の白濁が、先端から伝ってリシアの手を汚す。
 その、温かさに、出されたものに、リシアが呆然としていると、ディアヴェルがその手を取って、柔らかく拭いてくれる。


「…ありがとうございました、とても、気持ちよかった」
 ちゅ、と啄ばむようなキスを、唇に貰ったときにようやく、リシアはハッと我に返った。


「ひどい!」
 リシアが声を上げれば、ディアヴェルはきょとんとする。
「…リシア?」
 一体どうしてリシアが怒っているのかわからない、という顔をしている。


 どうして、わかってくれないのか、という気持ちのままに、リシアはディアヴェルに訴えていた。
「今の、赤ちゃんの種でしょう? どうして、わたしのなかに、くれなかったの?」
 あれは、リシアに与えるべきものであって、あんなふうに吐き出すものではない。
 それとも、リシアの認識が間違えているのだろうか。


「っ…」
 訴えるリシアに、ディアヴェルの目元が染まる。
 小さくディアヴェルが震えたように思えて、少し視線を落としたリシアは、固まった。
 力を失ったはずの彼が、また大きくなり始めている。
「…貴方、また」
「…誰の、せいだと」
 リシアが頬を染めながら言うと、ディアヴェルは憎々しげに告げる。


 誰の、せいだというのだろう。
 まさか、リシアのせいだと?


 そんなことは言いがかりだ、と言おうとしたのだが、とすん、と彼にベッドに押し倒されてしまった。
「…欲しいもの、なかに、あげますよ?」

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