【R18】レイナール夫人の華麗なる転身

環名

文字の大きさ
上 下
21 / 55
【シャルデル伯爵の手中】

10.レイナール夫人の羞恥 *

しおりを挟む
 シャルデル伯爵は菫青石の瞳の色を濃くして、今度は親指の腹で布地を押し上げる固まりを刺激する。
「ああ…夜着の上からでもわかりますよ…? 固くなってしまっている…。 俺に触れられたい、と」
 触れられたいなんて、思ってもいない。


 リシアがお尻で後ろにずり下がって逃げようとすると、そのままとさりとベッドに押し倒されてしまった。
 これは、いよいよ、逃げ場がない。
「お願い、お止めになって」
 フロックコートを脱ぎ捨てて、タイを緩めながらゆっくりと、影が覆いかぶさってくる。


「貴女のその声と言葉は、逆効果です。 お厭でしたら、噛みついて?」
 彼の美しい顔が近づいてくるので、キスを予感したリシアは横を向く。
 そうすれば、彼の唇はちゅ、とリシアの唇の端に触れた。
 それ以上横を向けないリシアは、せめてもの抵抗でしっかりと唇を引き結ぶ。 けれど、シャルデル伯爵は身体をずらして、優しくリシアの唇に唇を重ねた。


「っ…」
 繰り返される口づけに、唇に力を入れ続けたリシアは、呼吸が辛くなる。
 唇を引き結びながら鼻で呼吸をするのは、リシアには難しい。 苦しくなって、一瞬力を抜いたときに、口も開いてしまった。


「んっ…」
 口内に、彼の侵入を許してしまう。
 柔らかくて、甘いのに、濃くて、深い。 気持ち、いい。
 喉の奥から声が漏れそうになる。


 じゅ、ちゅう、と舌を深く貪られ、開いたままの口の端から唾液が零れそうになる。
 このままでは唾液を垂らすという醜態を晒すことになる、とリシアは慌てて何か拭くもの、と手を動かす。
 そうすれば、一度シャルデル伯爵の唇が離れるから、リシアはこくん、と唾液を飲みこむ。 けれど、間に合わずに口の端から零れた唾液を、シャルデル伯爵の舌が舐めとった。
 そうされただけでも、とてつもなく恥ずかしいというのに、この男は、
「ああ…この味だ」
 と目を細めて艶めかしく笑んだ上、舌で唇を舐め上げている。


 じんじんと、リシアの舌は痺れていた。 身体の中心も、熱をもってじんじんと疼いている気がする。
「心配していたんです。 貴女は魅力的だから。 俺以外の男にも迫られているんじゃないかと。 迫られても、赦しはしなかったようですね…?」
 安心したように告げるシャルデル伯爵に、リシアはうろたえた。
「ど、どうして」
 そんなことがわかるのか、という言葉は続けられなかった。
 微笑んで見下ろすシャルデル伯爵が、わかる理由を披露してくれたからだ。


「わかりますよ。 俺が教えた通りに反応しますから。 ああ、でも、身体の確認もしなければいけませんね」
 後半の、不穏な言葉に、リシアはびくりとする。
 身体の確認、ということは、今されたキスのような確認をされるということだろう。


「それは、だめ」
「どうして? 貴女の身体は、俺に触れられたいようですが?」
 前触れもなく急に、きゅっとネグリジェを押し上げる胸の尖りを摘ままれて、びりり、と何かが駆けた。
「ぁん」
 思わず漏れた声が甘ったるくて、リシアはぱっと口を押さえて真っ赤になる。


 シャルデル伯爵の瞳は、光を吸いこんで甘く深い藍紫色になっていた。
「確認だけで止めますから。 ね? リシア?」
 甘く誘うような声が、リシアの返答を待たずにするするとネグリジェをたくしあげていく。
 リシアは小さく首を振ったのだが、シャルデル伯爵は言い含めるように笑むばかりだ。


「貴女だって、色んな男に身体を開いていると思われるのは嫌でしょう?」
 ぐ、とリシアは言葉を飲み込む。
 出逢った場所が出逢った場所で、あんな関係から始まったのだから、リシアが淫らな女だと思われても、それは仕方ないかもしれない。
 けれど、リシアはシャルデル伯爵に抱かれるまで、男を知らなかった。 子の作り方さえも。
 誰でもよかったわけではなく、シャルデル伯爵だったから、身体を開いたのだ。


 そして、彼に抱かれたあと、リシアが「貴方でよかった」と言ったのは、リシアの本心だ。
 それを、疑われたくはなかった。
 恥ずかしい、と涙目になりつつも、シャルデル伯爵に身を委ねたリシアは、あっという間に裸体を晒すこととなった。
 胸と恥部を腕と手で何とか隠そうとするリシアを見下ろして、シャルデル伯爵はほぅと感嘆の溜息をついたようだった。


「やはり、素晴らしい…、よく見せて」
 シャルデル伯爵の手が伸びて、リシアの腕をどかそうとする。
 強引に外してしまえばいいのに、リシアが抗えるくらいの力加減というのがにくい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...