無職で透明

sui

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無職で暇

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『無職』
 そう、それは今の俺を指す言葉だ。
働かずゴロゴロと過ごす日が一年続いている。
今のような何もなく、豪遊せず、問題のない日々が続けば、少なくともあと50年は働かないまま生きていける計算になる。

運良く初めてやった賭け事で大盤狂わせの大勝。

そのあとも10の数字を予想して当てる【数十神すうてんしん】と呼ばれるものがある。
誰だこんなクソダサい名前つけたヤツ。
まぁ、それなりに難しいものだから当たれば金額もそれなり凄い。
そして俺の貯金額はえらいことになり、財布の中身もホクホク。

速攻で、あまり好かない職場に退職届を出してきて、家でダラダラした日々をスタートさせた。

だが、働かず、家でダラダラと本を読んだり、家の隅々まで掃除するのにも流石に飽きた。

家の外へと行けばそれなりに娯楽はたくさんあるだろうが、人混みは得意じゃないし、面倒な奴等だっている。何か俺がハマるようなモノがあれば衝動的に買ってしまうかもしれない。そんな事ばかりしてたら50年働かないで生活という計算事態がパァだ。

「なんかやるかな…働くのは無しだけど」

独り暮らしをしていると自然と出る独り言。寂しいわけじゃないからな?

ふと立ち上がり、机の上に置いてあるクリスタルを見た。
これは通信機器で、クリスタルには一つ一つ個性があり、その違いを【クリスタルコード】という。
相手と通話する場合は紙に相手のクリスタルコードを書き、その上に自分のクリスタルを置いてから魔力を少し注ぐと通話可能状態になる。
かけている最中は魔力を注ぐ必要はない。切るときはもう一度魔力を注ぐと自動的に切られる。
ちなみにかかってきた場合はただ、クリスタルに魔力を注ぐと繋ぐ事ができる。多少の光とキーンという澄みきった音が響くのが相手から呼び出しのサインだ。

ここ一年あまり使うことがなかった代物だ。

「…有効活用してみる…か」

羊皮紙を机の中から取り出し、思い付くままにとりあえず書き、バッグへ詰め込み、ローブを着て商業ギルドへと向かった。
商業ギルドには誰でも張ることができる掲示板がある。報酬がはっきりしている一度きりの依頼は張れないため、ほとんどが店の宣伝や伝言などだ。
掲示板の隣には係りの者が2人控えており、張りたいものを見せ、下に取り外される日付を記載してもらう。
期間は1週間。だけど、お金を払えば期間は延長することができる。

「あの、1ヶ月でお願いします」

「では、小銀貨5枚となります」

持ってきたお財布の中から小銀貨を5枚枚取り出し係りの人に渡した。

「確かに。ではこちらはお預かりさせていただきます。延長なさる場合は廃棄される前にお越しください。」

それから少しだけ注意事項を聞き、その場を後にした。

華やかさもなく、たいして目立たない羊皮紙は係の者により、掲示板の端の方に張られた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【コードQⅠ】

悩みがある方。知っている人には相談したくない方。ただ自分の話を聞いてほしい方。
クリスタルコードを使って私とお話してみませんか?
お話の内容は外部に流しません。

基本値段としては1時間銅貨5枚です。後は用相談。


【クリスタルコード】
174-◯◯◯◯◯◯◯


注意
・相談と言ってもたいしたアドバイスはできません。期待は絶対にしないでください。聞き手9割、相談1割程度だと思ってください。
・時間により出られないことがあります。
・外部に漏らさないとお約束は致しますが、 もし、不安な場合追加料金で『誓約宣言』を行うことも可能です。
・直接会っての相談は受け付けてはいません。

N488.2.20
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