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恐怖
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「まずは食事ね、これを食べて」
目覚めない間ずっと食べていなかったのだからお腹が空いているだろうと用意してあったスープを差し出した。
最初は不審がっていたものの、パクパクと食べ進めペロリと平らげてしまった。
「うまいな…」
「様々な味が折り重なりとても美味しいです。これはどのように作っているのですか?」
「魚介スープと野菜スープを合わせて、薬草で味により深みを加え、調味料で整える。そこに芋を入れ、煮込めば完成。アク取りを怠ると雑味が出るからそこは注意して。
おかわりはいる?」
二人共おかわり希望で作ったかいはあったようだ。
「今の状態ではまだポーションを使ったとしても、効果はでないから食べて回復させておくように。」
「食べて回復?どういうことだ?」
「さっき薬草を入れてるって言ったでしょ?それによって体内の自然回復を上昇させているの。ポーションやヒールほどの効果は得られないけれど。」
そして、なんということでしょう。
10人前作れるお鍋で作ったスープがすっからかん。
「食べ過ぎ」
「だってよ。食べた方が早く回復をするんだろ?」
いっぱい食べたからって回復力が倍増するわけでもないので、こんなに食べる必要なんてないのだ。
包帯を交換し、もう一度スープを作り終えると最後の塗布の時間だ。
「ん?何するんだ?」
「これからこの子に最後の塗布をするのよ。これで目が覚めるはず。」
「どのようにされるのですか?」
やり方は対象の刻印に指に塗った薬を滑らせながら魔力を注いでいく。
パァッと一瞬光り、刻印は消えていった。
「うん。消えた。」
これで【悪夢への誘い】が解かれる。
「うぅんっ…」
「ラフィ!!おい、ラフィ!!」
「エ…ル…ヴィン?」
「あぁそうだ!!身体はどうだ?」
「痛いけど…大丈夫。ここ…は…」
バチリと目があった。
「キャァァァァァァァァ!!!!!!!!」
鼓膜が破れるのではないかと思うほど大きな悲鳴。
これが普通人が見た反応。彼らが驚かなさすぎだと思う。
「なんで!!なんで!!ここに
魔族がいるの!?!?」
とりあえず私はその場から退場し、説明を彼らに任せた。
スープを持って行くとビクリと肩を震わせ、部屋の隅へと縮こまっていた。
一歩、また一歩と近づくほどにまた肩を震わせ今にも泣きそうな顔をしていた。
「これ、食べて。食べないと早く回復しないから。」
「いやっ!!来ないで!!貴方が作ったものなんて食べたくない!!ここから出して!!」
「ラフィ落ち着いてください!」
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
いやぁぁぁぁ!!!!!!!!」
持ってきたスープは手で払われ、バシャリと地面へと落ちてしまった。
これはパニックに陥って、仲間の声もほとんど聞こえていないみたい。
「私は会わない方がいいみたい。落ち着いたら教えてくれる?奥の部屋にいるから」
「はい、わかりました。すみません。」
それから二時間後彼女は寝たようで、呼びに来てくれたハンシルさんが彼女のことを少し話してくれた。
幼少の頃魔族に襲われ両親を亡くしたそうだ。これまでも魔族をみるとパニックになることはあったが、今回は異常だったと。
「それは多分【悪夢への誘い】の呪いのせいだと思う。あれにかかると一番怖いと思っている恐怖を膨らませるから。」
「なるほど。でも呪いは解かれたのですよね?」
「解いたとしてもその恐怖は心に刻まれる。それはポーションや薬草、魔法では取り去ることはできないの。」
心に刻まれた恐怖は自分で乗り越えなくてはならない。恐怖に勝てず、廃人になった人さえいる。
「あんな小さな子にあの呪いは酷すぎる…」
目覚めない間ずっと食べていなかったのだからお腹が空いているだろうと用意してあったスープを差し出した。
最初は不審がっていたものの、パクパクと食べ進めペロリと平らげてしまった。
「うまいな…」
「様々な味が折り重なりとても美味しいです。これはどのように作っているのですか?」
「魚介スープと野菜スープを合わせて、薬草で味により深みを加え、調味料で整える。そこに芋を入れ、煮込めば完成。アク取りを怠ると雑味が出るからそこは注意して。
おかわりはいる?」
二人共おかわり希望で作ったかいはあったようだ。
「今の状態ではまだポーションを使ったとしても、効果はでないから食べて回復させておくように。」
「食べて回復?どういうことだ?」
「さっき薬草を入れてるって言ったでしょ?それによって体内の自然回復を上昇させているの。ポーションやヒールほどの効果は得られないけれど。」
そして、なんということでしょう。
10人前作れるお鍋で作ったスープがすっからかん。
「食べ過ぎ」
「だってよ。食べた方が早く回復をするんだろ?」
いっぱい食べたからって回復力が倍増するわけでもないので、こんなに食べる必要なんてないのだ。
包帯を交換し、もう一度スープを作り終えると最後の塗布の時間だ。
「ん?何するんだ?」
「これからこの子に最後の塗布をするのよ。これで目が覚めるはず。」
「どのようにされるのですか?」
やり方は対象の刻印に指に塗った薬を滑らせながら魔力を注いでいく。
パァッと一瞬光り、刻印は消えていった。
「うん。消えた。」
これで【悪夢への誘い】が解かれる。
「うぅんっ…」
「ラフィ!!おい、ラフィ!!」
「エ…ル…ヴィン?」
「あぁそうだ!!身体はどうだ?」
「痛いけど…大丈夫。ここ…は…」
バチリと目があった。
「キャァァァァァァァァ!!!!!!!!」
鼓膜が破れるのではないかと思うほど大きな悲鳴。
これが普通人が見た反応。彼らが驚かなさすぎだと思う。
「なんで!!なんで!!ここに
魔族がいるの!?!?」
とりあえず私はその場から退場し、説明を彼らに任せた。
スープを持って行くとビクリと肩を震わせ、部屋の隅へと縮こまっていた。
一歩、また一歩と近づくほどにまた肩を震わせ今にも泣きそうな顔をしていた。
「これ、食べて。食べないと早く回復しないから。」
「いやっ!!来ないで!!貴方が作ったものなんて食べたくない!!ここから出して!!」
「ラフィ落ち着いてください!」
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
いやぁぁぁぁ!!!!!!!!」
持ってきたスープは手で払われ、バシャリと地面へと落ちてしまった。
これはパニックに陥って、仲間の声もほとんど聞こえていないみたい。
「私は会わない方がいいみたい。落ち着いたら教えてくれる?奥の部屋にいるから」
「はい、わかりました。すみません。」
それから二時間後彼女は寝たようで、呼びに来てくれたハンシルさんが彼女のことを少し話してくれた。
幼少の頃魔族に襲われ両親を亡くしたそうだ。これまでも魔族をみるとパニックになることはあったが、今回は異常だったと。
「それは多分【悪夢への誘い】の呪いのせいだと思う。あれにかかると一番怖いと思っている恐怖を膨らませるから。」
「なるほど。でも呪いは解かれたのですよね?」
「解いたとしてもその恐怖は心に刻まれる。それはポーションや薬草、魔法では取り去ることはできないの。」
心に刻まれた恐怖は自分で乗り越えなくてはならない。恐怖に勝てず、廃人になった人さえいる。
「あんな小さな子にあの呪いは酷すぎる…」
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