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第二部 異世界の戦争
19.戦乱のはじまり(2)
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――黒装束を倒した。
さやかは先ほどまで、黒装束と対峙していた女性のところに行く。よく見たら、朝に彼女を起こしてくれたおばさんだった。
おばさんがさやかに声をかけてくる。
「あんた、大丈夫かね?」
「はい。それよりおば様も大丈夫ですか? それに女の子も……」
さやかが心配した女の子は、倒れている父親に覆いかぶさり泣いていた。まだ父親は息をしていたが、呼吸はだいぶ荒い。
「おば様。治療ができる場所はこの近くにありますか?」
この辺りのことに詳しいかと思い、さやかは尋ねる。
「あるけどこの混乱じゃ……」
おばさんはそう言った。確かにそうだとさやかも思ったが、ある考えが浮かんだ。
「向こうにある基地でなら治療できるのでは? だって軍隊ですよね?」
さやかは基地の方向を指差しながら問いかける。その言葉を聞いておばさんも考えるような表情になった。
「そりゃ、軍人さんの施設なら治療はできるだろうけど……。この騒動だしなんとも言えないねぇ。でも……」
「でも!」
さやかは「がばっと」身を乗り出して問い返した。
「行かないよりは行ったほうがいいだろうさ。でも、どうやってこの人たちを連れていくか。背負っていくには厳しいさね……」
たしかにケガ人を背負っていくには無理がある。
さやかは一瞬考え、すぐに方法を見つけた。
「あれに乗っけていきましょう」
さやかはそう言い、路肩にあるトラクターを指さした。
「あれって『オーラクター』かい? あれは『オーラ』が使えないと動かせないもんだよ。あのタイプだと私は動かしたことがないけど、あんたは使えるのかい?」
おばさんはさやかに聞いてくる。
「やってみないとわかりません。とりあえずここまで移動してみましょう」
さやかは、トラクターまで戻って座席に座ってみた。
「よいしょっと。それよりこれって『オーラクター』って言うのね……。そのネーミングセンスに作為を感じるわ」
さやかはバイクに似たハンドルを両手で握ると、ゆっくりと下腹部にオーラをためるような呼吸をする。
さやかは心の中で「落ち着いて、ゆっくり、ゆっくり」と自分に言葉をかけた。
昔、スクーターをはじめて運転したときを思い出す。いきなりアクセルを入れたので、急発進して転倒した覚えがある。さやかはそのときのことを思い出しながら、ゆっくりとオーラを下腹部から両手に回した。
彼女は、オーラが両手からハンドルに伝わるのがわかった。ハンドルをよく見たら、簡単な紋様のようなものが刻まれている。さっきの黒装束の小太刀や、さやかが付けているリングにも紋様があるので、この紋様が『オーラ』を伝えるのに関係しているのだろうかと思う。
オーラクターはゆっくりと動き出した。動かしてみると操縦は単純で、バイクと同じようにアクセルはハンドルに付いている。ブレーキも足もとにあった。
さやかは低速で、オーラクターをおばさんの所に移動させた。
なんとかして女の子と父親を荷台に乗せる。まだ2人が倒れていたが、すでに亡くなっているとおばさんが言う。
さやかは基地へ向かって『オーラクター』を走らせた。おばさんも荷台だ。
オーラクターの運転にはすぐに慣れてきたのでスピードを上げた。
基地への道すがら争いは続いていた。
兵士と見られる人や、自警団っぽい人たちが黒装束と戦っている。
さらにオーラクターを走らせていると、味方のオハジキが敵のオハジキを追撃している光景も遠目に見えた。
しばらく進むと基地が見えてきた。
ドゴーン!
だがそのとき、前方の地面に何かが落ちた。
「わーん!」
激しい衝撃音とともに、荷台にいるうしろの女の子が泣きはじめる。
前の道は、落ちてきた何かで吹き飛ばされ陥没していた。さやかは急ハンドルを切ってその陥没を避ける。だが、バランスを崩したオーラクターはバランスをたもてない。立て直そうとさやかはハンドルを元に戻そうとするが、車輪が浮き上がり、前から基地の外壁に衝突した。
「あいたたたた……」
前方からぶつかったので荷台は無事だが、さやかへのダメージがデカい。さやかは起き上がりながら「これはむち打ちになるかな」と感じた。
オーラクターから降りて基地の正門方向を見ると、頭上にいた数機の敵方オハジキから、さらに黒装束たちが次々と飛び降りてきた。
そのタイミングで、基地の中からも兵士たちが現れる。
さやかは兵士たちを見て気がついた。兵士たちの中央にいたのは、前回彼女を助けてくれた栗色の髪をした青年レイカーだった。
レイカーは、右手に持った剣を前に出しながら声をあげる。
「かかれ! 一人も逃がすな!」
レイカーの号令とともに、兵士たちが黒装束の集団に襲いかかる。さやかたちがいた場所は正門の近くだったので、オーラクターの側で呆然とするしかなかった。
敵味方入り乱れての激しい乱戦状態。黒装束たちをよく見ると、その中で攻撃に参加していない者が数人いる。その者たちは黒装束ではなく軽装のヨロイを着ていた。
その中で目立つように女性が一人立っていた。
長いウェーブがかかった紅蓮のような赤い髪。その女の表情からは、怖いくらいに笑みがこぼれている。彼女は横にいた若い男と話をしていた。
「お嬢! 偵察なのになにやってんですか! 遊ぶのにもほどほどにしてくださいよ」
若い男が赤い髪の女に言った。
「戦う前に、相手の様子くらい見ておきたいもんじゃないか。あたしはねぇ......無能な敵との戦いは嫌いなんだよ」
赤い髪の女は、楽しそうに言い返している。
さやかはその会話を聞き取れてはいない。だが、その雰囲気から「うん。あれは……なんか関わっちゃいけない人な気がする」と心の中で決めた。
「あっ!」
さやかのうしろでおばさんの声がした。振り返ると数人の黒装束が、横からさやかたちに近づいてくる。
「なんで、こっちを狙うの!(泣)」
さやかは、覚悟を決めて黒装束の前にでる。その手にはさっき使ったシャベルを持っていたが「この人数が相手じゃ無理!」と心の中で訴える。
シャベルを持ったさやかに向かって黒装束が襲ってきた。彼女は襲ってきた黒装束の小太刀を先ほどのようにシャベルで受け止めるが、横からも違う黒装束が襲ってくる。
さやかは「あっ、ダメだ。今回はゲームオーバーかも……」と遠い目で思った。
黒装束の小太刀がさやかの喉に向かってくる。
彼女にとって、その瞬間は本当にスローで「あっこれはダメなやつだ」と感じた。さやかは小太刀の先端を見ながら「痛そうだな~」と感じたとき。
ボゴォォ!!!
「えっ?」
変な声とともに、黒装束の上半身がド派手に吹き飛んだ……。
さやかの目の前にいた黒装束。あるのは胴体の下半分でそれはそれはスプラッターな光景のはずだが、さやかはなぜか不思議と驚かなかった。
なぜなら、胴体の向こう。さやかの目の前に立っていたのは、さっき見た赤い髪の女で、その女性にさやかの目線がくぎ付けになっていたからだ。
その女性の手には剣が握られている。黒装束を切断したのはその女だった。
驚愕の表情をしているはずのさやかの顔を横目で見ながら、楽しそうに笑っている……。
さやかは自然に口に出した。
「なぜ? あなたの味方じゃないの?」
赤い髪の女は、さやかのほうを向いて口を開く。
「あたしは無能な敵は嫌いだけど、無能な味方はもっと嫌いさね。でも、なんでこいつらがあんたを斬ろうとしたかは感じでわかるさ。それは斬りたくなったからさ」
「えっ! そんな理不尽な」
さやかはそう口に出す。
「あたしも……あんたを斬りたくなった」
赤い髪の女がそう言い、目が大きく開かれる。
さやかはこの瞬間恐怖に襲われた。
口にだして「えっ? ちょっと待ってよ。この女の人。さっきの黒装束よりぜんぜん怖いっ!」と叫びたいが声にでない。
赤い髪の女の目線で背筋が凍る。身体が動かない。襲われると感じて、さやかは『あの』呼吸をしようとした。
でもできなかった。
赤い髪の女の目は、髪と同じく炎のように赤く、さやかは目をそらすことができない。女は、笑いながら手に持つ剣を構えて声をだす。
「おかしいねぇ……。なぜかあんたを殺したくなる。あたしを恨んでいいからさ」
女の剣が、さやかの喉を狙って水平に流れてくる……。
さやかは「これはなに? この剣はわたしを殺そうとしている……」と実感した。
だが、赤い髪の女の剣は、さやかの面前で急停止した。
「おい、なんでお前の顔は嬉しそうに笑ってる……」
女はさっきよりも低音の口調でそう言った。さっきまでの楽しそうな話しぶりではない。
さやかは心の中で答える「わたしが笑ってる? そんなはずはない。わたしは怖くて死にそうだ……本当に冗談ではない」と。
「まぁいいさ。死んでおしまいよ」
赤い髪の女の剣は再び動き出し、深い呼吸音も聞こえた。剣にはオーラの光が宿っている。
その光は女の髪のように赤い光。さやかは、今度こそゲームオーバーだと感じた。
ガチィーン!!!
赤い髪の女の剣が、さやかの眼球に到達する寸前。横から飛び出してきた剣にさえぎられた。
さやかは、剣が出てきた方向に目線を向ける。そこには男性が立っていた。
その男性は、赤い髪の女の剣を受けると同時に、さやかと女の間に割って入る。そして、さやかを守るように女性の前に立ちふさがる。
男性の顔は見えず背中しか見えなかったが、さやかがその光景を見たのは二度目だった。
さやかは思った。「なぜ彼がさやかの夢の中にいるのかはわからない」でも……また彼が助けてくれたのだ。
その男性は、横顔を見せて優しく答えてくれる。
「さやか、大丈夫か」
「アキトさん……(泣)」
さやかにとってのヒーローが現れたのだ。
さやかは先ほどまで、黒装束と対峙していた女性のところに行く。よく見たら、朝に彼女を起こしてくれたおばさんだった。
おばさんがさやかに声をかけてくる。
「あんた、大丈夫かね?」
「はい。それよりおば様も大丈夫ですか? それに女の子も……」
さやかが心配した女の子は、倒れている父親に覆いかぶさり泣いていた。まだ父親は息をしていたが、呼吸はだいぶ荒い。
「おば様。治療ができる場所はこの近くにありますか?」
この辺りのことに詳しいかと思い、さやかは尋ねる。
「あるけどこの混乱じゃ……」
おばさんはそう言った。確かにそうだとさやかも思ったが、ある考えが浮かんだ。
「向こうにある基地でなら治療できるのでは? だって軍隊ですよね?」
さやかは基地の方向を指差しながら問いかける。その言葉を聞いておばさんも考えるような表情になった。
「そりゃ、軍人さんの施設なら治療はできるだろうけど……。この騒動だしなんとも言えないねぇ。でも……」
「でも!」
さやかは「がばっと」身を乗り出して問い返した。
「行かないよりは行ったほうがいいだろうさ。でも、どうやってこの人たちを連れていくか。背負っていくには厳しいさね……」
たしかにケガ人を背負っていくには無理がある。
さやかは一瞬考え、すぐに方法を見つけた。
「あれに乗っけていきましょう」
さやかはそう言い、路肩にあるトラクターを指さした。
「あれって『オーラクター』かい? あれは『オーラ』が使えないと動かせないもんだよ。あのタイプだと私は動かしたことがないけど、あんたは使えるのかい?」
おばさんはさやかに聞いてくる。
「やってみないとわかりません。とりあえずここまで移動してみましょう」
さやかは、トラクターまで戻って座席に座ってみた。
「よいしょっと。それよりこれって『オーラクター』って言うのね……。そのネーミングセンスに作為を感じるわ」
さやかはバイクに似たハンドルを両手で握ると、ゆっくりと下腹部にオーラをためるような呼吸をする。
さやかは心の中で「落ち着いて、ゆっくり、ゆっくり」と自分に言葉をかけた。
昔、スクーターをはじめて運転したときを思い出す。いきなりアクセルを入れたので、急発進して転倒した覚えがある。さやかはそのときのことを思い出しながら、ゆっくりとオーラを下腹部から両手に回した。
彼女は、オーラが両手からハンドルに伝わるのがわかった。ハンドルをよく見たら、簡単な紋様のようなものが刻まれている。さっきの黒装束の小太刀や、さやかが付けているリングにも紋様があるので、この紋様が『オーラ』を伝えるのに関係しているのだろうかと思う。
オーラクターはゆっくりと動き出した。動かしてみると操縦は単純で、バイクと同じようにアクセルはハンドルに付いている。ブレーキも足もとにあった。
さやかは低速で、オーラクターをおばさんの所に移動させた。
なんとかして女の子と父親を荷台に乗せる。まだ2人が倒れていたが、すでに亡くなっているとおばさんが言う。
さやかは基地へ向かって『オーラクター』を走らせた。おばさんも荷台だ。
オーラクターの運転にはすぐに慣れてきたのでスピードを上げた。
基地への道すがら争いは続いていた。
兵士と見られる人や、自警団っぽい人たちが黒装束と戦っている。
さらにオーラクターを走らせていると、味方のオハジキが敵のオハジキを追撃している光景も遠目に見えた。
しばらく進むと基地が見えてきた。
ドゴーン!
だがそのとき、前方の地面に何かが落ちた。
「わーん!」
激しい衝撃音とともに、荷台にいるうしろの女の子が泣きはじめる。
前の道は、落ちてきた何かで吹き飛ばされ陥没していた。さやかは急ハンドルを切ってその陥没を避ける。だが、バランスを崩したオーラクターはバランスをたもてない。立て直そうとさやかはハンドルを元に戻そうとするが、車輪が浮き上がり、前から基地の外壁に衝突した。
「あいたたたた……」
前方からぶつかったので荷台は無事だが、さやかへのダメージがデカい。さやかは起き上がりながら「これはむち打ちになるかな」と感じた。
オーラクターから降りて基地の正門方向を見ると、頭上にいた数機の敵方オハジキから、さらに黒装束たちが次々と飛び降りてきた。
そのタイミングで、基地の中からも兵士たちが現れる。
さやかは兵士たちを見て気がついた。兵士たちの中央にいたのは、前回彼女を助けてくれた栗色の髪をした青年レイカーだった。
レイカーは、右手に持った剣を前に出しながら声をあげる。
「かかれ! 一人も逃がすな!」
レイカーの号令とともに、兵士たちが黒装束の集団に襲いかかる。さやかたちがいた場所は正門の近くだったので、オーラクターの側で呆然とするしかなかった。
敵味方入り乱れての激しい乱戦状態。黒装束たちをよく見ると、その中で攻撃に参加していない者が数人いる。その者たちは黒装束ではなく軽装のヨロイを着ていた。
その中で目立つように女性が一人立っていた。
長いウェーブがかかった紅蓮のような赤い髪。その女の表情からは、怖いくらいに笑みがこぼれている。彼女は横にいた若い男と話をしていた。
「お嬢! 偵察なのになにやってんですか! 遊ぶのにもほどほどにしてくださいよ」
若い男が赤い髪の女に言った。
「戦う前に、相手の様子くらい見ておきたいもんじゃないか。あたしはねぇ......無能な敵との戦いは嫌いなんだよ」
赤い髪の女は、楽しそうに言い返している。
さやかはその会話を聞き取れてはいない。だが、その雰囲気から「うん。あれは……なんか関わっちゃいけない人な気がする」と心の中で決めた。
「あっ!」
さやかのうしろでおばさんの声がした。振り返ると数人の黒装束が、横からさやかたちに近づいてくる。
「なんで、こっちを狙うの!(泣)」
さやかは、覚悟を決めて黒装束の前にでる。その手にはさっき使ったシャベルを持っていたが「この人数が相手じゃ無理!」と心の中で訴える。
シャベルを持ったさやかに向かって黒装束が襲ってきた。彼女は襲ってきた黒装束の小太刀を先ほどのようにシャベルで受け止めるが、横からも違う黒装束が襲ってくる。
さやかは「あっ、ダメだ。今回はゲームオーバーかも……」と遠い目で思った。
黒装束の小太刀がさやかの喉に向かってくる。
彼女にとって、その瞬間は本当にスローで「あっこれはダメなやつだ」と感じた。さやかは小太刀の先端を見ながら「痛そうだな~」と感じたとき。
ボゴォォ!!!
「えっ?」
変な声とともに、黒装束の上半身がド派手に吹き飛んだ……。
さやかの目の前にいた黒装束。あるのは胴体の下半分でそれはそれはスプラッターな光景のはずだが、さやかはなぜか不思議と驚かなかった。
なぜなら、胴体の向こう。さやかの目の前に立っていたのは、さっき見た赤い髪の女で、その女性にさやかの目線がくぎ付けになっていたからだ。
その女性の手には剣が握られている。黒装束を切断したのはその女だった。
驚愕の表情をしているはずのさやかの顔を横目で見ながら、楽しそうに笑っている……。
さやかは自然に口に出した。
「なぜ? あなたの味方じゃないの?」
赤い髪の女は、さやかのほうを向いて口を開く。
「あたしは無能な敵は嫌いだけど、無能な味方はもっと嫌いさね。でも、なんでこいつらがあんたを斬ろうとしたかは感じでわかるさ。それは斬りたくなったからさ」
「えっ! そんな理不尽な」
さやかはそう口に出す。
「あたしも……あんたを斬りたくなった」
赤い髪の女がそう言い、目が大きく開かれる。
さやかはこの瞬間恐怖に襲われた。
口にだして「えっ? ちょっと待ってよ。この女の人。さっきの黒装束よりぜんぜん怖いっ!」と叫びたいが声にでない。
赤い髪の女の目線で背筋が凍る。身体が動かない。襲われると感じて、さやかは『あの』呼吸をしようとした。
でもできなかった。
赤い髪の女の目は、髪と同じく炎のように赤く、さやかは目をそらすことができない。女は、笑いながら手に持つ剣を構えて声をだす。
「おかしいねぇ……。なぜかあんたを殺したくなる。あたしを恨んでいいからさ」
女の剣が、さやかの喉を狙って水平に流れてくる……。
さやかは「これはなに? この剣はわたしを殺そうとしている……」と実感した。
だが、赤い髪の女の剣は、さやかの面前で急停止した。
「おい、なんでお前の顔は嬉しそうに笑ってる……」
女はさっきよりも低音の口調でそう言った。さっきまでの楽しそうな話しぶりではない。
さやかは心の中で答える「わたしが笑ってる? そんなはずはない。わたしは怖くて死にそうだ……本当に冗談ではない」と。
「まぁいいさ。死んでおしまいよ」
赤い髪の女の剣は再び動き出し、深い呼吸音も聞こえた。剣にはオーラの光が宿っている。
その光は女の髪のように赤い光。さやかは、今度こそゲームオーバーだと感じた。
ガチィーン!!!
赤い髪の女の剣が、さやかの眼球に到達する寸前。横から飛び出してきた剣にさえぎられた。
さやかは、剣が出てきた方向に目線を向ける。そこには男性が立っていた。
その男性は、赤い髪の女の剣を受けると同時に、さやかと女の間に割って入る。そして、さやかを守るように女性の前に立ちふさがる。
男性の顔は見えず背中しか見えなかったが、さやかがその光景を見たのは二度目だった。
さやかは思った。「なぜ彼がさやかの夢の中にいるのかはわからない」でも……また彼が助けてくれたのだ。
その男性は、横顔を見せて優しく答えてくれる。
「さやか、大丈夫か」
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