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第三章 揉める部活と失恋大騒動
第57話 渇望の熱
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俺以外、みんなが意見を言った。
椎名と増倉は現実と理想をぶつけながら言い争った。
それはお互いに譲れない想いと今後の部活を考えた本気同士の悲嘆だった。
部活のことを思ってみんなで現状を打破することをしようとした増倉。
誰かが言わなきゃいけないことを誰よりも先にはっきりと言った椎名。
樫田は冷静に、されど誰よりも情熱的に後悔した。
それは役割を全うしながらも、自分の心の悲鳴だった。
自分の至らなさを語りながらも今後のことを誰よりも考えている樫田。
夏村は目一杯の感情を共感させた。
それは当事者だからこその辛さと部活への慈悲だった。
この事態に誰よりも心を痛めながらも、なおも部活が好きという夏村。
そして俺は――。
思えば、俺はいろんなことを知っている。
樫田の警戒も、増倉の同情も、山路の信頼も、椎名の覚悟も。
そんな俺だからこその言葉。
今、言えるありったけ。
「じゃあ、俺の番だな」
自然とそんな言葉が口から出た。
これっぽっちも覚悟なんてできてないのに、虚勢を張って笑う。
みんなにそれが通じるかなんて知ってことではない。
注目なんて歯牙にもかけない。
そんなもん慣れてんだこっちは。
言わせてもらうぞ、俺の言葉。
「俺は後悔している。あの時、花火を買いに行って二手に分かれることになった時、嫌な予感があったのにどうしようもできなかった。仕方がないからしょうがないから、後悔しないなんてことは俺にはできない。だってそうだろ。そんなん俺に聞きたいことがあるって言った池本にも失礼だろ」
限られた選択肢を選んだ時に、後悔しないでいられるのか?
確かに胸張って、自信もって選んだのならそうなのかもしれない。
でも後ろ髪を引かれる想いがあったなら、それは後悔していると言わないといけない。
それが失敗を認めるということだから。
「買い終わって集合場所に行って、池本を先に公園に行かせた後、夏村の涙を見たとき俺はどうすればいいか分からなかった。正直樫田からの連絡がなかったら何もできなかっただろうし、その後に樫田が奮い立たせてくれなかったら冷静になることもなかった。俺は…………俺は目の前で泣いている仲間に対して何もできなかった。混乱して、周りを見えずに憤慨して次を考えなかった」
ああ、これも後悔だな。
あのときあの場に俺じゃなくて樫田だったら、あるいは同じ女子の椎名や増倉だったら違うことになっていたんじゃないかっていう、かもしれないだ。
「公園に行ってからもそうだ。自分一人でどうにかしようとして椎名に心配されなかったら何にもできなかったと思う。増倉と山路が場を必死に盛り上げてくれているのも分からずに、みんなの行動を無下にしていた。そんな俺に対して、みんなで自分のできることをしていた。状況を見て、行動を考えて、楽しい歓迎会にしてくれた」
歓迎会が台無しにならなかったのは、みんなのおかげだ。
俺は心の底からそう思う。
「だから、まずはありがとうって言わせてくれ」
俺は頭を下げた。
両膝にそれぞれ手を置いて、深々と感謝した。
――。
誰も何も言わない。
数秒、感情を噛み締める。
そして、顔を上げみんなを見て言う。
「大槻のしたことが許せないってのはみんな同じなのは分かった。その上で今後どうすべきかみんなのそれぞれだってのも分かった。辞めさせるべきなのか、話し合いでどうにかすべきなのか、受け入れるべきなのか、先輩としての行動で判断すべきなのか。同じ思いで、でも別々の論点で話している」
誰が息を呑んだ。
部屋中の空気が一段階重くなったように、呼吸が苦しくなった。
それでも全身に力を入れて俺は言う。
「俺には目指しているがある。そしてそれはみんなで成し遂げたいんだ。大槻は許せない。許せないけど…………それより俺はさ。どうしようもなくみんなで演劇したいだ。だから俺は大槻が謝るならとか部活に来る意志があるとか関係ない。辞めさせるなんて論外だし、先輩として部活のことを考えるなんて知らない。俺は――俺がみんなと部活がしたいんだ!」
椎名と増倉は現実と理想をぶつけながら言い争った。
それはお互いに譲れない想いと今後の部活を考えた本気同士の悲嘆だった。
部活のことを思ってみんなで現状を打破することをしようとした増倉。
誰かが言わなきゃいけないことを誰よりも先にはっきりと言った椎名。
樫田は冷静に、されど誰よりも情熱的に後悔した。
それは役割を全うしながらも、自分の心の悲鳴だった。
自分の至らなさを語りながらも今後のことを誰よりも考えている樫田。
夏村は目一杯の感情を共感させた。
それは当事者だからこその辛さと部活への慈悲だった。
この事態に誰よりも心を痛めながらも、なおも部活が好きという夏村。
そして俺は――。
思えば、俺はいろんなことを知っている。
樫田の警戒も、増倉の同情も、山路の信頼も、椎名の覚悟も。
そんな俺だからこその言葉。
今、言えるありったけ。
「じゃあ、俺の番だな」
自然とそんな言葉が口から出た。
これっぽっちも覚悟なんてできてないのに、虚勢を張って笑う。
みんなにそれが通じるかなんて知ってことではない。
注目なんて歯牙にもかけない。
そんなもん慣れてんだこっちは。
言わせてもらうぞ、俺の言葉。
「俺は後悔している。あの時、花火を買いに行って二手に分かれることになった時、嫌な予感があったのにどうしようもできなかった。仕方がないからしょうがないから、後悔しないなんてことは俺にはできない。だってそうだろ。そんなん俺に聞きたいことがあるって言った池本にも失礼だろ」
限られた選択肢を選んだ時に、後悔しないでいられるのか?
確かに胸張って、自信もって選んだのならそうなのかもしれない。
でも後ろ髪を引かれる想いがあったなら、それは後悔していると言わないといけない。
それが失敗を認めるということだから。
「買い終わって集合場所に行って、池本を先に公園に行かせた後、夏村の涙を見たとき俺はどうすればいいか分からなかった。正直樫田からの連絡がなかったら何もできなかっただろうし、その後に樫田が奮い立たせてくれなかったら冷静になることもなかった。俺は…………俺は目の前で泣いている仲間に対して何もできなかった。混乱して、周りを見えずに憤慨して次を考えなかった」
ああ、これも後悔だな。
あのときあの場に俺じゃなくて樫田だったら、あるいは同じ女子の椎名や増倉だったら違うことになっていたんじゃないかっていう、かもしれないだ。
「公園に行ってからもそうだ。自分一人でどうにかしようとして椎名に心配されなかったら何にもできなかったと思う。増倉と山路が場を必死に盛り上げてくれているのも分からずに、みんなの行動を無下にしていた。そんな俺に対して、みんなで自分のできることをしていた。状況を見て、行動を考えて、楽しい歓迎会にしてくれた」
歓迎会が台無しにならなかったのは、みんなのおかげだ。
俺は心の底からそう思う。
「だから、まずはありがとうって言わせてくれ」
俺は頭を下げた。
両膝にそれぞれ手を置いて、深々と感謝した。
――。
誰も何も言わない。
数秒、感情を噛み締める。
そして、顔を上げみんなを見て言う。
「大槻のしたことが許せないってのはみんな同じなのは分かった。その上で今後どうすべきかみんなのそれぞれだってのも分かった。辞めさせるべきなのか、話し合いでどうにかすべきなのか、受け入れるべきなのか、先輩としての行動で判断すべきなのか。同じ思いで、でも別々の論点で話している」
誰が息を呑んだ。
部屋中の空気が一段階重くなったように、呼吸が苦しくなった。
それでも全身に力を入れて俺は言う。
「俺には目指しているがある。そしてそれはみんなで成し遂げたいんだ。大槻は許せない。許せないけど…………それより俺はさ。どうしようもなくみんなで演劇したいだ。だから俺は大槻が謝るならとか部活に来る意志があるとか関係ない。辞めさせるなんて論外だし、先輩として部活のことを考えるなんて知らない。俺は――俺がみんなと部活がしたいんだ!」
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