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第2章:一筋縄でいかないギルド創設の道
負けられない手続き
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遂にこの時がやってきた、気がしていたルーク。
アイリスの借金を返済し、いざ、ギルド創設。
申請用紙を記入していた時の出来事である
「なぁ、イブ」
「何ですか、ルーク」
「言わなくてもわかるだろ?」
「じゃあ聞かないで下さい。魅入られたら終わりですよ?」
王国ギルドの酒場は賑わうのが普通。
しかし、今に限ってあり得ない。
静寂。
布の擦れる音、ペンを走らせる音がよく聞こえてしまう程に。
「お前の力でどうにかならないか?」
「無理ですよ。私の美貌が通じる相手じゃないです」
「え、何の冗談だ?」
「ほほう、遺言は――っ!?」
言いかけたイブリースの口を、プルートが咄嗟に塞ぐ。
「だ、駄目だよ、イブ! 忘れたの!? そんなこと言おうものなら、うぅ、どうなっちゃうか!」
「うぅ、うぅーーーっ!」
「何とか言ってよ! 思い出して! あの苦く辛い記憶を! たった1時間前のことじゃない!」
「う……う……う」
次第にイブリースの抵抗が弱くなっていく。
ついでに、目から生気が失われていく。
「おい、プル。なんか顔が青くなってきてないか?」
「え? あ、あぁっ!?」
不運。鼻までしっかり塞がれたイブリース。
プルートに介抱されつつ離脱する。
「おい、旦那様。早く書かないと危険だぞ」
「あ、あぁ、分かっている」
アイリスの言う通りだ。
この静けさは異常。
その元凶から放たれるオーラは半端ではない。
ルークはささっと必要事項を書き終え、後は最後の署名欄を残すのみ。
「あ、あああ、あの、早く書いてくれませんかねぇ!?」
恐怖に耐えられなくなったらしい。
受け付けの男が泣き付く。
「そのペン重いですか!? 筆ペン使います!? 血で書いても結構ですよぉっ!」
「ば、馬鹿――っ!」
もう遅い。
これを好機と元凶が――王女が詰め寄って来る。
「ルーク様、お手は大丈夫ですかっ!? すぐに入院を!」
「あぁ、軽いなぁ! 書きやすいなぁ! くっそう、どこの匠だ、こんな逸品を世に放ったのは!」
「なんと! 必ず見つけましょう!」
「匠の邪魔をするなぁぁぁっ!」
ルークは深呼吸する。
気持ちを落ち着かせ、今一度確認した。
「あの、王女様。この国にいるという条件で話は無しになったはずですよね?」
「えぇ、誠に遺憾ながら」
「では、どうしてこのような?」
「私はこの国の王女です。たまたまお会いしても不思議ではありませんよね?」
それはその通りである。
例え物陰に隠れて、隠し切れない存在感を放ち、熱い視線を送っていたのだとしても。
――変な人に魅入られたなぁ、俺も
ルークは頭痛を覚えながら、最後の署名欄に名前を入れようとする。
「……あれ?」
突如、突風が吹いて用紙は飛んで行った。
窓でも開いていたのだろうか。
否。犯人は涙目の憲兵たち。
各々、大きな団扇を持って一心不乱に風を送っていた。
「俺たち何しているんだろうなぁっ!?」
「考えるな! 風になるんだっ!」
「違う、風を送るんだっ!」
――まさか!
狙いに気付いたルーク。
急いで駆け出した、その時。
「させますか――っ!」
王女は俊敏な動きで追い抜き、
「――おっとぉっ、足が滑ったあぁぁぁっ!」
ヒールの高い靴で踏みつけた。
憐れ、用紙が大きく裂ける。
「な、なんてことを!?」
「はい? あら、これは失礼。たまたま足の下に」
「させますか! とか、おっとぉっ!? とか言ってませんでした!?」
「記憶に御座いませんが、申し訳なさで胸が締め付けられる思いがします。本当に申し訳ありません」
――もしかして、改心してくれたのか
一瞬、ルークが油断する。
「せめてものお詫びの印として、とても良い話があるのですが」
「お断りしますっ!」
油断した彼が馬鹿だった。
それはともかくとして、こんなやり取りを続けること3日も経つ。
「ルーク様、新しいギルド創設の申請用紙をどうぞ」
「何か色々と書き込まれていませんか?」
「お手間かと思い、後は名前を書き込むだけにしてあります」
「人はそれを余計なお世話と言いますよ」
まだまだ戦いは終わりそうにない。
――このままじゃ駄目だ
「あの、王女様。少し話をしませんか?」
「まぁ! このようなところでプロポーズだなんて!」
「違いますから! はぁ……まったくもう」
これまでも話の通じにくい、もしくは通じない相手とやり合ってきたルーク。
その中でも王女は別格。権力を笠にやりたい放題。
しかし、避けては通れない相手である。
ルークは気合を入れた。
「俺は自分のギルドを一から作りたいんです」
「はい、何度も聞きました。しかし不思議です。なぜ王国ギルドではいけないのでしょう?」
なぜ、と聞かれるとルークは困る。
魔族たちが仲間だからです、なんて言おうものなら極刑だ。
「さっきも言いましたが、王国ギルドとなれば多くの者を受け入れなくてはなりません。俺は気心の知れたメンバーだけでやっていきたいんです」
「しかし、ギルドメンバーの募集はしているのでしょう? 矛盾していませんか?」
流石は王女か。
あの面接の一件を把握しているらしい。
「あの時はメンバーが不足していましたから。今は大丈夫なので、その必要はありません」
「しかし今後の事を見据えれば――」
憲兵が近付き、王女に耳打ちする。
一瞬、王女は目を丸くすると、
「急用が出来てしまいました。でも、私は諦めませんからね、ルーク様!」
急いでどこかへ行ってしまった。
解放されたルークたちはホッと胸を撫で下ろした――のも束の間だった。
アイリスの借金を返済し、いざ、ギルド創設。
申請用紙を記入していた時の出来事である
「なぁ、イブ」
「何ですか、ルーク」
「言わなくてもわかるだろ?」
「じゃあ聞かないで下さい。魅入られたら終わりですよ?」
王国ギルドの酒場は賑わうのが普通。
しかし、今に限ってあり得ない。
静寂。
布の擦れる音、ペンを走らせる音がよく聞こえてしまう程に。
「お前の力でどうにかならないか?」
「無理ですよ。私の美貌が通じる相手じゃないです」
「え、何の冗談だ?」
「ほほう、遺言は――っ!?」
言いかけたイブリースの口を、プルートが咄嗟に塞ぐ。
「だ、駄目だよ、イブ! 忘れたの!? そんなこと言おうものなら、うぅ、どうなっちゃうか!」
「うぅ、うぅーーーっ!」
「何とか言ってよ! 思い出して! あの苦く辛い記憶を! たった1時間前のことじゃない!」
「う……う……う」
次第にイブリースの抵抗が弱くなっていく。
ついでに、目から生気が失われていく。
「おい、プル。なんか顔が青くなってきてないか?」
「え? あ、あぁっ!?」
不運。鼻までしっかり塞がれたイブリース。
プルートに介抱されつつ離脱する。
「おい、旦那様。早く書かないと危険だぞ」
「あ、あぁ、分かっている」
アイリスの言う通りだ。
この静けさは異常。
その元凶から放たれるオーラは半端ではない。
ルークはささっと必要事項を書き終え、後は最後の署名欄を残すのみ。
「あ、あああ、あの、早く書いてくれませんかねぇ!?」
恐怖に耐えられなくなったらしい。
受け付けの男が泣き付く。
「そのペン重いですか!? 筆ペン使います!? 血で書いても結構ですよぉっ!」
「ば、馬鹿――っ!」
もう遅い。
これを好機と元凶が――王女が詰め寄って来る。
「ルーク様、お手は大丈夫ですかっ!? すぐに入院を!」
「あぁ、軽いなぁ! 書きやすいなぁ! くっそう、どこの匠だ、こんな逸品を世に放ったのは!」
「なんと! 必ず見つけましょう!」
「匠の邪魔をするなぁぁぁっ!」
ルークは深呼吸する。
気持ちを落ち着かせ、今一度確認した。
「あの、王女様。この国にいるという条件で話は無しになったはずですよね?」
「えぇ、誠に遺憾ながら」
「では、どうしてこのような?」
「私はこの国の王女です。たまたまお会いしても不思議ではありませんよね?」
それはその通りである。
例え物陰に隠れて、隠し切れない存在感を放ち、熱い視線を送っていたのだとしても。
――変な人に魅入られたなぁ、俺も
ルークは頭痛を覚えながら、最後の署名欄に名前を入れようとする。
「……あれ?」
突如、突風が吹いて用紙は飛んで行った。
窓でも開いていたのだろうか。
否。犯人は涙目の憲兵たち。
各々、大きな団扇を持って一心不乱に風を送っていた。
「俺たち何しているんだろうなぁっ!?」
「考えるな! 風になるんだっ!」
「違う、風を送るんだっ!」
――まさか!
狙いに気付いたルーク。
急いで駆け出した、その時。
「させますか――っ!」
王女は俊敏な動きで追い抜き、
「――おっとぉっ、足が滑ったあぁぁぁっ!」
ヒールの高い靴で踏みつけた。
憐れ、用紙が大きく裂ける。
「な、なんてことを!?」
「はい? あら、これは失礼。たまたま足の下に」
「させますか! とか、おっとぉっ!? とか言ってませんでした!?」
「記憶に御座いませんが、申し訳なさで胸が締め付けられる思いがします。本当に申し訳ありません」
――もしかして、改心してくれたのか
一瞬、ルークが油断する。
「せめてものお詫びの印として、とても良い話があるのですが」
「お断りしますっ!」
油断した彼が馬鹿だった。
それはともかくとして、こんなやり取りを続けること3日も経つ。
「ルーク様、新しいギルド創設の申請用紙をどうぞ」
「何か色々と書き込まれていませんか?」
「お手間かと思い、後は名前を書き込むだけにしてあります」
「人はそれを余計なお世話と言いますよ」
まだまだ戦いは終わりそうにない。
――このままじゃ駄目だ
「あの、王女様。少し話をしませんか?」
「まぁ! このようなところでプロポーズだなんて!」
「違いますから! はぁ……まったくもう」
これまでも話の通じにくい、もしくは通じない相手とやり合ってきたルーク。
その中でも王女は別格。権力を笠にやりたい放題。
しかし、避けては通れない相手である。
ルークは気合を入れた。
「俺は自分のギルドを一から作りたいんです」
「はい、何度も聞きました。しかし不思議です。なぜ王国ギルドではいけないのでしょう?」
なぜ、と聞かれるとルークは困る。
魔族たちが仲間だからです、なんて言おうものなら極刑だ。
「さっきも言いましたが、王国ギルドとなれば多くの者を受け入れなくてはなりません。俺は気心の知れたメンバーだけでやっていきたいんです」
「しかし、ギルドメンバーの募集はしているのでしょう? 矛盾していませんか?」
流石は王女か。
あの面接の一件を把握しているらしい。
「あの時はメンバーが不足していましたから。今は大丈夫なので、その必要はありません」
「しかし今後の事を見据えれば――」
憲兵が近付き、王女に耳打ちする。
一瞬、王女は目を丸くすると、
「急用が出来てしまいました。でも、私は諦めませんからね、ルーク様!」
急いでどこかへ行ってしまった。
解放されたルークたちはホッと胸を撫で下ろした――のも束の間だった。
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