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第1章:愉快でトリッキーな仲間たちと

実戦は何が起こるか、うん、わからない

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 3人は王都近郊の草原に出るや否や、早速、ゴブリンの集団と出くわしていた。

「いいか、アイリス。俺たちが倒すから見ていろよ?」
「わかった、見届けさせて貰おう」

 アイリスは冒険者として登録していなかったため、レベルは1である。

 装備も無いためゴブリンすら十分に脅威だ。

 そこで初心者育成の基本、見て経験値を稼ぐという方法を選んだのである。

「そういえば、イブ。お前はいいのか? モンスターと事を構えたら余計に怒られるんじゃ?」
「あんな畜生など、むしろ殺し尽くせば喜ばれますのでご安心を」

 イブリースは狂気に走った目付きをし、手をワキワキさせていた。

「ゴブリンは特に害悪でしてね。えぇ、恨みつらみでおかしくなってしまいそうです」
「い、一体何があったんだ?」
「よくぞ聞いてくれました! あいつらは本能に忠実なケダモノです! よく魔王城に乗り込んで来ては、3時のおやつを盗みやがるのです!」
「お……おやつ?」
「狡猾で罠を張っても回避され、私は泣く泣く午後になるとおやつの前に居座るしかなく……そのせいで、未だ幹部候補生のままっ!」
「あ、あー……そっすか。何でもいいけど、やる気は十分なんだよな?」
「えぇ、そりゃもう! ここで会ったが百年目! 草の根分けても探し出して血祭にしてやります!」

 悪魔が血祭とか言ったら恐怖映像になるのだろうが、動機が可愛いので全く恐く見えないルークであった。

「よし、じゃあ遠慮は要らない! じゃんじゃん稼いで、今夜はご馳走だ!」
「ふ、ふはははっ! 見えます、見えますよ! 奴らに食われたおやつの亡霊が、私をご馳走へと誘う姿がっ!」

 それはもう凄惨な光景だった。

 イブリースの影から伸びた手が、次々とゴブリンの首をはねる。

 異変に気付いたのだろう。

 ゴブリンたちも対処行動に出ようとするが、動きを見せた瞬間に首がポロリと落ちていく。

「やるな、イブ殿は」
「あぁ、あいつはあれでも結構強いから――」

 そのときだった。

 突如、どこからか矢が飛来し、アイリスの肩に突き刺さる。

「な、何だっ!? どこから来た!?」
「旦那様、あっちのようだ!」

 指さされた方を見た瞬間、ルークは死を覚悟した。

 既に目の前まで矢が飛んで来ているのだ。

 防御などとても間に合わない程の近距離。

 文句なく脳天が貫かれるだろう。

「――ふぁ?」

 なぜか矢は方向転換。

 アイリスの腕に突き刺さった。

「だ、大丈夫か、旦那様!?」
「あ、あぁ、俺は大丈夫だけど……お前は平気なのか!?」
「うむ、心配要らない。昔から体力だけは自信があるからな!」

 その瞬間、四方八方から矢の乱れ撃ちが飛来する。

 ルークは咄嗟に広域防御魔法を展開しようとした――のだが、思わず手を止めた。

「あれ?」

 矢は全てあらぬ軌道を描き、一直線にアイリスへと向かう。

 どうやらイブリースに向かったはずの矢すら同様らしい。

 針山のようになってしまう彼女だが、全く苦悶の表情を浮かべない。

 むしろ嬉々とした表情をしている。

「せ、戦闘とはかくも危険なものなのか! これぞ冒険者の醍醐味!」
「いや、違うと思うぞ!」
「そこにも隠れていたかっ! 死にさらせっ!!」

 木の上に隠れていたゴブリンたちも次々と惨殺されていく。

 最後に残ったゴブリンたちは、それはもう盛大に号泣していた。

 無理もない。

 狡猾な頭脳でもって戦術を立てていたのだろうが、珍現象によってことごとく破綻したのだから。

「ふぅ、軽く30体は葬りましたね。いやぁ、スッキリ爽快です~」

 一方的な勝利で戦闘は終わった。

 ルークとイブリースは無傷。

 最後方で見学していたはずのアイリスだけが悲惨な状態である。

「うぅむ、戦闘とは何たるか痛感できた。ありがとう、旦那様」
「いやいや、そんなつもりは毛頭なかったから! それよりも行くべき所が出来た。ほら、すぐに戻るぞ!」
「ま、待ってくれ。背中に刺さった矢にどうしても手が届かないのだ」

 このまま王都に戻ったら騒ぎになりかねない。

 ルークは手で持って、思い切り引っ張る。

「あ……んあぁぁぁっ!」
「い、色っぽい声を出すなよ! くそ、なんでこんなに深々と刺さっているんだ!?」
「ち、ちょっと! 一番の功労者を無視するとは何事ですかっ! あと、守られていたはずのアイリスが一番の被害者ってどういう事態ですかっ!」
「騒ぐ暇があったら手伝ってくれ! 意外に大変なんだ!」
「ふふん、仕方ありませんね。非力なルークに変わって、この美少女が力を貸して――あ、根本で折れた。いやぁ、これを抜くのは大変そうですね」
「お、お前なぁっ!」

 何とか矢を全て引き抜いて、3人はギルドに戻る。

 そして向かったのは鑑定士の所だった。
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