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第1章 偽りの騎士
第8話 緊急速報 1
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人が溶けた謎の現象から3日。カルマを中心として調査しているが、まだ有力な手がかりは掴めていない。今日も進展が無かったという報告をウロボロス、アザレアから受けていた。
「必ずや吉報をお持ちします。もう少々お待ちください、我が君」
「でもなぁ……」
溶けた者の武装や服はおろか、髪の毛一本さえも残っておらず、なんならあの液体の染みすら見当たらない。まさに手がかりは皆無。八方塞がりも良いところだ。俺を引きずり出すための罠と考えられなくもないが、その可能性は極めて低い気がする。
俺はこの世界に来てまだ数日。変な話、華々しいデビューを飾ったのはエグゾダスを放った時だ。魔王を討つためと言って地域一帯ごと消滅させようとしてくるのも、まぁ、あり得ないこともないだろう。でもまだ数日なんだ。あんな大規模な反抗作戦を企画、準備、実行できるなんて現実的に考えてあり得ない。
仮にそのような強硬手段を即座に取ることができたとすれば、もっと直接的に攻める手段を持っているんじゃなかろうか。例えば、俺と同じくドミニオンズ出身の猛者が相手なら、そんな回りくどいことをする意味なんてない。
「もうさ、俺も直接出向いてみようかと思うんだけど」
だから俺は提案する。俺たちが被害を受ける可能性は低いと思えるし、何より、そろそろ出なくては手遅れになるかもしれないと考えたから。
まず、この数日間、ファントム・シーカーをランダム配置しているが、どの個体にも異常は発生していない。あいつらに影響がないのなら、俺たちにも直ちに影響があるとは考えにくい。
そして、なぜ手遅れになるかもしれないと思うのか。俺が危惧しているのは時限爆弾だ。時間経過で自動発動するタイプなのだとすれば、こうして引き篭もっているのは返って危険である。早々に原因を究明して対処するべきだ。
そういう理由があっての提案なのだが、案の定、ウロボロスから強く止められる。
「それは駄目です! 御身に万が一の事があったら……っ!」
「あれから3日、何も起こっていないじゃないか」
「それはゼルエル様のスキルがあってこそです!」
まぁ、全ての魔法、スキル、アイテム効果の発動を無効にし、効果を打ち消す最上級スキル、クリスタル・バニッシュExの加護があれば確かに安心だ。しかしさっきも言ったように、その恩恵を受けていないファントム・シーカーたちが大丈夫なのだ。そこまで警戒する意味もないと思うんだが。
「ただなぁ……このままって訳にもいかないんだよ。敵にただ時間を与えているだけかもしれないだろ?」
そう、敵の狙いはきっと別にある。前々から何か良からぬ計画を企てていて、その準備が整ったのか、もしくは何かきっかけがあって実行したに違いない。だが、カルマの調査によれば何も異常は見付かっていないらしい。ならば、まだ完遂されていないと言える。人を溶かすような真似をする奴だ。このまま放置すればどんな大惨事が起こるかわかったものじゃない。今はまだ影響が出ていないが、いずれは俺たちも同じ末路を辿るかもしれないのだ。
「我が君の危惧されていることはわかります。しかし万が一にでも、我が君を誘い出す罠であってはならないのです」
「まぁ……それを言われたら反論はできないが」
そう、何も痕跡が見付からない以上、ここまでの話全ては憶測に過ぎないのだ。こういう自然現象です、という結論で終わってしまうかもしれない状況である。万が一にでも危険があれば、と言われては何も言い返せるはずがない。
だが、そうやって3日も平穏無事に過ごして来たのは事実で、未だにこんな議論をしているのは完全に後手に回っている証拠だ。肝心な時に足をすくわれてしまう場合も考慮すれば、ここはもう、現地調査に乗り出して何がなんでも情報を得なければならないだろう。
「そうだ、アザレア」
案はある。それには少し時間が必要で、実際には3日も経ってしまった訳だ。それでもこの袋小路の状況を打開するためには、この方向で話を進めるしかなかったのだ。さぁ、始めさせて貰おうか。説得を。
「アデルの村の復興状況を教えてくれ」
さて、こんな事態ではあるが、むしろこんな事態だからこそ、無理を言って村の復興は続けて貰っていた。村の喪失に加えて村人まで溶けたのだ。生き残った村人たちは相当なプレッシャーにさらされている。ここで復興まで止めてしまえばもう希望は一切無くなってしまうだろう。逆に復興を続けていれば、俺の力がまだ及んでいるという安心感を持って貰えるんじゃないか、希望を捨てないでいてくれるんじゃないか、そんな期待をしてのことだ。これにはアデルも同意してくれていて、念のために俺と会わないでいるものの、アザレアとはコンタクトを取りながら復興を続けてくれている。
「必ずや吉報をお持ちします。もう少々お待ちください、我が君」
「でもなぁ……」
溶けた者の武装や服はおろか、髪の毛一本さえも残っておらず、なんならあの液体の染みすら見当たらない。まさに手がかりは皆無。八方塞がりも良いところだ。俺を引きずり出すための罠と考えられなくもないが、その可能性は極めて低い気がする。
俺はこの世界に来てまだ数日。変な話、華々しいデビューを飾ったのはエグゾダスを放った時だ。魔王を討つためと言って地域一帯ごと消滅させようとしてくるのも、まぁ、あり得ないこともないだろう。でもまだ数日なんだ。あんな大規模な反抗作戦を企画、準備、実行できるなんて現実的に考えてあり得ない。
仮にそのような強硬手段を即座に取ることができたとすれば、もっと直接的に攻める手段を持っているんじゃなかろうか。例えば、俺と同じくドミニオンズ出身の猛者が相手なら、そんな回りくどいことをする意味なんてない。
「もうさ、俺も直接出向いてみようかと思うんだけど」
だから俺は提案する。俺たちが被害を受ける可能性は低いと思えるし、何より、そろそろ出なくては手遅れになるかもしれないと考えたから。
まず、この数日間、ファントム・シーカーをランダム配置しているが、どの個体にも異常は発生していない。あいつらに影響がないのなら、俺たちにも直ちに影響があるとは考えにくい。
そして、なぜ手遅れになるかもしれないと思うのか。俺が危惧しているのは時限爆弾だ。時間経過で自動発動するタイプなのだとすれば、こうして引き篭もっているのは返って危険である。早々に原因を究明して対処するべきだ。
そういう理由があっての提案なのだが、案の定、ウロボロスから強く止められる。
「それは駄目です! 御身に万が一の事があったら……っ!」
「あれから3日、何も起こっていないじゃないか」
「それはゼルエル様のスキルがあってこそです!」
まぁ、全ての魔法、スキル、アイテム効果の発動を無効にし、効果を打ち消す最上級スキル、クリスタル・バニッシュExの加護があれば確かに安心だ。しかしさっきも言ったように、その恩恵を受けていないファントム・シーカーたちが大丈夫なのだ。そこまで警戒する意味もないと思うんだが。
「ただなぁ……このままって訳にもいかないんだよ。敵にただ時間を与えているだけかもしれないだろ?」
そう、敵の狙いはきっと別にある。前々から何か良からぬ計画を企てていて、その準備が整ったのか、もしくは何かきっかけがあって実行したに違いない。だが、カルマの調査によれば何も異常は見付かっていないらしい。ならば、まだ完遂されていないと言える。人を溶かすような真似をする奴だ。このまま放置すればどんな大惨事が起こるかわかったものじゃない。今はまだ影響が出ていないが、いずれは俺たちも同じ末路を辿るかもしれないのだ。
「我が君の危惧されていることはわかります。しかし万が一にでも、我が君を誘い出す罠であってはならないのです」
「まぁ……それを言われたら反論はできないが」
そう、何も痕跡が見付からない以上、ここまでの話全ては憶測に過ぎないのだ。こういう自然現象です、という結論で終わってしまうかもしれない状況である。万が一にでも危険があれば、と言われては何も言い返せるはずがない。
だが、そうやって3日も平穏無事に過ごして来たのは事実で、未だにこんな議論をしているのは完全に後手に回っている証拠だ。肝心な時に足をすくわれてしまう場合も考慮すれば、ここはもう、現地調査に乗り出して何がなんでも情報を得なければならないだろう。
「そうだ、アザレア」
案はある。それには少し時間が必要で、実際には3日も経ってしまった訳だ。それでもこの袋小路の状況を打開するためには、この方向で話を進めるしかなかったのだ。さぁ、始めさせて貰おうか。説得を。
「アデルの村の復興状況を教えてくれ」
さて、こんな事態ではあるが、むしろこんな事態だからこそ、無理を言って村の復興は続けて貰っていた。村の喪失に加えて村人まで溶けたのだ。生き残った村人たちは相当なプレッシャーにさらされている。ここで復興まで止めてしまえばもう希望は一切無くなってしまうだろう。逆に復興を続けていれば、俺の力がまだ及んでいるという安心感を持って貰えるんじゃないか、希望を捨てないでいてくれるんじゃないか、そんな期待をしてのことだ。これにはアデルも同意してくれていて、念のために俺と会わないでいるものの、アザレアとはコンタクトを取りながら復興を続けてくれている。
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