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第1章 光るバッハ
第8話 敵は校長先生よ!
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光るバッハとの対決まで3日の猶予が設けられた。
互いに準備が必要だろうと、
合意の上での取り決めだった。
「君のやること成すことは、本当に僕の斜め上をいってくれますね?」
「ご託はいいから、さっさと準備しなさいよ」
勝負の詳細は以下の通りだ。
お互いに、とある人物を驚かす。
格を競い合い、どちらかが負けを認めたら決着となる。
とある人物とは、あの人。
この学校のことを思い、近く、深夜に警備をしようと意気込んでいる人物。
校長先生だった。
頑固そうな見た目通り、大変に融通の利かない人物である。
ユーコはかの人物を、とてもガードが堅いと予想した。
黒板を爪で引っかいたり、
氷を背中に入れたり、
上からこんにゃくを落としたり、
そんな子供騙しでは、心底恐怖はしてくれないだろうと。
「そうは言いますがね、警備員や学生たちで使った方法でいいんじゃないんですか?」
「駄目よ。子どもの悪戯レベルじゃないの。あれだけでどうこうできる相手じゃないわ」
「それをセレクトしたの、貴女なんですが……」
「当り前じゃない。私はね、3-Aの幽霊なんて呼ばれるつもりは無かったのに」
それがどういう訳か、
犯人が見付からないとなって、
ちょっと工夫すれば誰でもできる悪戯が、
幽霊の仕業、なんて言われてしまったのだ。
「貴女は一体、何をしたいんですか?」
「言ったでしょう? 私は愉悦に浸りたいの。あぁ、そうだ。そこまであんな子供騙しを過大評価しているのなら、校長先生に試してみればどう?」
「試す……僕が?」
それは何の冗談なんだろう。
まさか、死神が自ら幽霊っぽい脅かしをするなんて。
「別にいいじゃない。敵情調査も立派な仕事よ」
「敵情調査って……そんな大袈裟な」
「グダグダ言わないの。死神の力、とくと見せてみなさいよ」
「はいはい……そこまで言うなら」
そうして迎えた夜。
死神は校長室へ忍び込んだ。
「……何が悲しくて人を驚かせなくちゃいけないんでしょう」
しかし拒否すればチクられる。
それは何としても避けなければならない。
死神はプライドを捨てて、
まずは黒板に爪を立ててみる。
「……駄目ですっ! これだけは生理的に駄目!」
これだけは却下。
校長先生がどれ程の人物か見るだけなら、
他のふたつの手段でも十分だろう。
そういうことにして、
死神は氷を背筋に放り込んでみる。
「ぬぐぅ……っ!?」
校長先生は身悶えした。
額に青筋を浮かべもした。
でも、それだけだ。
明かに怒ってあちこち見渡しているものの、幽霊の仕業、とは言わない。
「……なるほど、中々に我慢強い人のようですね」
念のため、こんにゃくを頭に落としてみる。
この炎天下の中、常温放置していた非情に強烈なやつだ。
「ぐぬぅ……っ!?」
見る見る校長先生は顔を真っ赤にした。
こんにゃくを払うと、
般若のような顔をして周囲をキョロキョロしている。
「……何だか、少しだけわかった気がするかもしれません」
ユーコが楽しそうにする理由が少しだけわかった。
ついでに、校長先生は強敵だとも理解した。
そういう収穫を得て、
死神は手伝いに戻るのだった。
互いに準備が必要だろうと、
合意の上での取り決めだった。
「君のやること成すことは、本当に僕の斜め上をいってくれますね?」
「ご託はいいから、さっさと準備しなさいよ」
勝負の詳細は以下の通りだ。
お互いに、とある人物を驚かす。
格を競い合い、どちらかが負けを認めたら決着となる。
とある人物とは、あの人。
この学校のことを思い、近く、深夜に警備をしようと意気込んでいる人物。
校長先生だった。
頑固そうな見た目通り、大変に融通の利かない人物である。
ユーコはかの人物を、とてもガードが堅いと予想した。
黒板を爪で引っかいたり、
氷を背中に入れたり、
上からこんにゃくを落としたり、
そんな子供騙しでは、心底恐怖はしてくれないだろうと。
「そうは言いますがね、警備員や学生たちで使った方法でいいんじゃないんですか?」
「駄目よ。子どもの悪戯レベルじゃないの。あれだけでどうこうできる相手じゃないわ」
「それをセレクトしたの、貴女なんですが……」
「当り前じゃない。私はね、3-Aの幽霊なんて呼ばれるつもりは無かったのに」
それがどういう訳か、
犯人が見付からないとなって、
ちょっと工夫すれば誰でもできる悪戯が、
幽霊の仕業、なんて言われてしまったのだ。
「貴女は一体、何をしたいんですか?」
「言ったでしょう? 私は愉悦に浸りたいの。あぁ、そうだ。そこまであんな子供騙しを過大評価しているのなら、校長先生に試してみればどう?」
「試す……僕が?」
それは何の冗談なんだろう。
まさか、死神が自ら幽霊っぽい脅かしをするなんて。
「別にいいじゃない。敵情調査も立派な仕事よ」
「敵情調査って……そんな大袈裟な」
「グダグダ言わないの。死神の力、とくと見せてみなさいよ」
「はいはい……そこまで言うなら」
そうして迎えた夜。
死神は校長室へ忍び込んだ。
「……何が悲しくて人を驚かせなくちゃいけないんでしょう」
しかし拒否すればチクられる。
それは何としても避けなければならない。
死神はプライドを捨てて、
まずは黒板に爪を立ててみる。
「……駄目ですっ! これだけは生理的に駄目!」
これだけは却下。
校長先生がどれ程の人物か見るだけなら、
他のふたつの手段でも十分だろう。
そういうことにして、
死神は氷を背筋に放り込んでみる。
「ぬぐぅ……っ!?」
校長先生は身悶えした。
額に青筋を浮かべもした。
でも、それだけだ。
明かに怒ってあちこち見渡しているものの、幽霊の仕業、とは言わない。
「……なるほど、中々に我慢強い人のようですね」
念のため、こんにゃくを頭に落としてみる。
この炎天下の中、常温放置していた非情に強烈なやつだ。
「ぐぬぅ……っ!?」
見る見る校長先生は顔を真っ赤にした。
こんにゃくを払うと、
般若のような顔をして周囲をキョロキョロしている。
「……何だか、少しだけわかった気がするかもしれません」
ユーコが楽しそうにする理由が少しだけわかった。
ついでに、校長先生は強敵だとも理解した。
そういう収穫を得て、
死神は手伝いに戻るのだった。
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