幽霊のユーコさん!

るちぇ。

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第1章 光るバッハ

第1話「黙って幽霊にしなさい!」

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3-A組には超が付く程の優等生がいた。
校則の範囲内の黒髪ロングストレート。
ネクタイまでキッチリ締めたブレザー姿。
成績優秀、スポーツ万能。
それでいて可愛いという文句の付け所の無い女子高生が。

「ほほぉ……申し開きはそれだけ?」

名前は日比野 幽子。
親しい友人からはユーコと呼ばれている。
そんな誰からも好かれる要素を兼ね備えた彼女だが、
今は椅子に座って足を組みながら、下で土下座している「それ」を睨み付けていた。

「大変、申し訳ありませんでしたっ!」

それ、と形容するのは心優しい人のすることではない、のかもしれない。
ただし、万事、事情によるだろう。
特に今は。
なにせユーコが話している相手は――

――死神、だった

間違っても見た目は可愛くない。
100人に聞いたら100人が死神と答えるような、
とにかく禍々しい見た目をしている。

あろうことか。

そんな超常の存在を土下座させているのだ、ユーコは。

「それで? 謝って済む問題じゃないって、わかるわよね?」
「勿論であります!

死神はパンフレットを2枚取り出した。
味気ない真っ黒な、でも高級な材質の紙に白字で印字されている。

「読めないわ。音読しなさい」
「え? でも日本語で書かれている……いえ、何でもありません」

ギロリと睨み付けられて、
死神はゴホンと咳払いしてから音読を始める。

「まずお勧めするのはウハウハ再出発コースになります。転生先はこの上ない最高条件。誰もが目を引く美人に生まれ、しかも一生不自由なく過ごせる特典付きです」
「却下、次!」
「え、き、却下でありますか?」

きちんと日本語で銘打っている
最高級ウハウハ再出発コース、と。
これ以上の好条件で転生することは不可能。
それを足蹴にされてしまっては、残るは。

「そ、そうなるとこちらですが……」

死神が差し出したもうひとつのパンフ。
タイトルは「幽霊コース」
現世に留まり悶々と過ごす日々を送るだけだ。

「それよ、それにしなさい」
「い、いいんですか?」
「黙って幽霊にしなさい! あぁ、当然、多少のおまけはしてくれるんでしょ?」

ユーコは悪魔のような微笑みを浮かべている。
これを見て、死神は

(……大変なことを仕出かした!)

そう、後悔するのだった。

これは突然死して幽霊になった超ドSな女子学生ユーコと、
それに巻き込まれる死神の、
ドタバタ非日常的学園ドラマである。
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