5 / 5
駆け出しの知恵
しおりを挟む
エリスと俺はまず先立つものは金ということもあり、日の国の西方にあるコルト国を目指した。
コルト国は商業国家であり周囲の国とも良好な関係を保っていたため、渡り鳥向きの仕事も比較的たくさんあるのだとエリスが教えてくれた。エリスも渡り鳥になってから何度もこの国を拠点に周辺国家を旅したんだとか。
俺は海洋国家であった日の国に育ったためほかの国は白黒のフォトと呼ばれる紙でしか見たことがなかったがこんなに人がたくさんいて市場に活気があふれ男の怒号や女の客を引く声が響くにぎやかな街があるとは思ってもみなかった。
市場に並ぶ野菜や果物は見たことがなく青や赤や黄色、紫など色とりどりで、形も一つ一つが不ぞろいだが何とも新鮮でおいしそうに見えた。
日の国の野菜や果物は一つ一つに規格があり画一的に分類され出荷されていたためこの光景が新鮮に見えた。
市場を抜けて背のひときわ高い建物に入ると壁には渡り鳥のシンボルである青い羽のエンブレムが飾ってあり、人が集まっている掲示板には渡り鳥に充てた依頼書が張ってあった。
それを眺めているとエリスが「こっち、こっち!」とてまねきしていた。そこには車いすに座っている12,3歳くらいの女の子が一人いた。
その女の子は手紙を握りしめていて、「この手紙を離島で離れて暮らしているお父さんに届けてくれませんか?」とエリスと俺に頼んでいた。エリスはそれを受け取って「この依頼を受けよう。」と一言。
俺も異論はなかったのでエリスの言葉に従うことにした。
エリスの言葉には従ったが疑問が残る。なぜ張り紙の依頼ではなく女の子の依頼を受けたのか。張り紙には高額な依頼もたくさんあり、言い方は悪いが女の子の依頼一つだけでは自分たちの往復の燃料費を稼げるかも怪しい。
でも俺的には、足が悪い女の子の父に手紙を届けたいという一途な思いに応え依頼をこなすというのは気持ち的には賛成である。彼女もそう思ってこの依頼を受けたのだろうか?
しかし俺の知っている彼女は感情よりも理性に重きを置いている。少なくとも四年前まではそうだった。だからこそ飛行機を止めてある飛行場に向かう道中、俺はエリスに「なぜあの子の依頼を受けた?」と率直に質問した。
そしたら「だって私も君も渡り鳥の中では駆け出しも同然。張り紙を出した依頼主にしてみたら依頼を果たしてくれる信用はないし、依頼を果たしたとしても駆け出しなんだからって足元を見られて後から値切られるのがこの世界の常識。それにもしかしたら依頼書に書いてないリスクが隠れているかもしれない。なら小さい仕事でもコツコツ積み重ねてリピーターを作ってまず信用を得ていくほうがいい。それに、、」
彼女の含みを持った言い方に対し「それに?」と聞き返すと「あの子の乗っているのは日の国製の電動車いす。しかもまだ新しい。もしかしたら彼女のお父さんがお金持ちってこともあり得る。もし違ったとしても別に少しの損をするだけ。」
なるほど理性的だ。こういうところは四年前と変わってはいなかった。
「あと困った子を助けるのに理由がいる?」おっと訂正しよう。四年前よりも少しは進歩しているじゃないか。
「それに君もあの子の車いすのこと日の国製だってとっくに気づいているでしょ。フフっ、君も少しはしたたかになったみたいだね。」
しまった藪蛇だった。思わぬ返しを受けてしまった。
こうして俺たちは小さな依頼人のため、この国の南にある離島にいる女の子の父に手紙を届けるために出発した。
コルト国は商業国家であり周囲の国とも良好な関係を保っていたため、渡り鳥向きの仕事も比較的たくさんあるのだとエリスが教えてくれた。エリスも渡り鳥になってから何度もこの国を拠点に周辺国家を旅したんだとか。
俺は海洋国家であった日の国に育ったためほかの国は白黒のフォトと呼ばれる紙でしか見たことがなかったがこんなに人がたくさんいて市場に活気があふれ男の怒号や女の客を引く声が響くにぎやかな街があるとは思ってもみなかった。
市場に並ぶ野菜や果物は見たことがなく青や赤や黄色、紫など色とりどりで、形も一つ一つが不ぞろいだが何とも新鮮でおいしそうに見えた。
日の国の野菜や果物は一つ一つに規格があり画一的に分類され出荷されていたためこの光景が新鮮に見えた。
市場を抜けて背のひときわ高い建物に入ると壁には渡り鳥のシンボルである青い羽のエンブレムが飾ってあり、人が集まっている掲示板には渡り鳥に充てた依頼書が張ってあった。
それを眺めているとエリスが「こっち、こっち!」とてまねきしていた。そこには車いすに座っている12,3歳くらいの女の子が一人いた。
その女の子は手紙を握りしめていて、「この手紙を離島で離れて暮らしているお父さんに届けてくれませんか?」とエリスと俺に頼んでいた。エリスはそれを受け取って「この依頼を受けよう。」と一言。
俺も異論はなかったのでエリスの言葉に従うことにした。
エリスの言葉には従ったが疑問が残る。なぜ張り紙の依頼ではなく女の子の依頼を受けたのか。張り紙には高額な依頼もたくさんあり、言い方は悪いが女の子の依頼一つだけでは自分たちの往復の燃料費を稼げるかも怪しい。
でも俺的には、足が悪い女の子の父に手紙を届けたいという一途な思いに応え依頼をこなすというのは気持ち的には賛成である。彼女もそう思ってこの依頼を受けたのだろうか?
しかし俺の知っている彼女は感情よりも理性に重きを置いている。少なくとも四年前まではそうだった。だからこそ飛行機を止めてある飛行場に向かう道中、俺はエリスに「なぜあの子の依頼を受けた?」と率直に質問した。
そしたら「だって私も君も渡り鳥の中では駆け出しも同然。張り紙を出した依頼主にしてみたら依頼を果たしてくれる信用はないし、依頼を果たしたとしても駆け出しなんだからって足元を見られて後から値切られるのがこの世界の常識。それにもしかしたら依頼書に書いてないリスクが隠れているかもしれない。なら小さい仕事でもコツコツ積み重ねてリピーターを作ってまず信用を得ていくほうがいい。それに、、」
彼女の含みを持った言い方に対し「それに?」と聞き返すと「あの子の乗っているのは日の国製の電動車いす。しかもまだ新しい。もしかしたら彼女のお父さんがお金持ちってこともあり得る。もし違ったとしても別に少しの損をするだけ。」
なるほど理性的だ。こういうところは四年前と変わってはいなかった。
「あと困った子を助けるのに理由がいる?」おっと訂正しよう。四年前よりも少しは進歩しているじゃないか。
「それに君もあの子の車いすのこと日の国製だってとっくに気づいているでしょ。フフっ、君も少しはしたたかになったみたいだね。」
しまった藪蛇だった。思わぬ返しを受けてしまった。
こうして俺たちは小さな依頼人のため、この国の南にある離島にいる女の子の父に手紙を届けるために出発した。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
私にかまわないでください
雨夜澪良
ファンタジー
「この穀潰しがっ!!」
「気味が悪いわ。その赤い目でこっちを見ないでちょうだい」
親友だと思っていた少女にはめられ、牢屋に入れられてしまったユースティア。
村人達にさげすまれ暴力を振るわれる日々。さらには異常な男の執着。この男によってユースティアは脱獄できないでいた。そんなある日、ユースティアにとって人生を変えるような男と出会う。
「なあ、お嬢さんはどうして牢屋に入れられたんだ?」
その男はただの旅人のはずなのに牢屋に現れた。しかも、ヒーローのように手を差し伸べるわけでもなく、ただ話を聞きに来ただけだったのだ。
これは最強の一角であるユースティアの前日譚。まだ少女が最強ではなかった頃のお話。
本編の「僕は幸せになるために復讐したい!」を読まなくても楽しめます!
【休載中】
本編完結してから執筆する予定。もしかしたら消して新しく書き直すかもしれません。
人と豚のハルマゲドン
みらいつりびと
ファンタジー
人と豚とキャベツの世界で人と豚の最終戦争が勃発する。遠未来思索実験小説。
遥かなる過去に神が創造した生き物たちは次々と絶滅への道を歩んだ。そしてついに、地上に残された生き物はヒト、ブタ、キャベツの三種のみ、という時代が到来した……。
旅人ロンドンとわがままかわいいキャベツ姫は大発生した野豚の大群に立ち向かう。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
【完結】消えたら? かつて、あなた方がとった方法です。【1000文字ほど】
BBやっこ
ファンタジー
ある村に来た。郷愁はあったのかもしれない。
変わらない、村の様子に、過ぎ去った年月を思う。歳をとったらしい
しかし、同じような危機に遭い、あの時に戻されたかのような言葉。
私は、村長の懇願を拒否した。
職人は旅をする
和蔵(わくら)
ファンタジー
別世界の物語。時代は中世半ば、旅する者は職人、旅から旅の毎日で出会いがあり、別れもあり、職人の平凡な日常を、ほのぼのコメディで描いた作品です。
異世界の神様って素晴らしい!(異神・番外編)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる