11 / 30
世界で一番可愛い俺のカノジョ①
しおりを挟む
栞梨が俺の家に泊まりに来る当日、俺は早朝から非常に緊張していた。栞梨は午後一時に来ることになっているから、そんなに早くから緊張することもないのかもしれない。だが、昨日の夜から心臓がバクバクと激しく音を立てていて、ほとんど寝られなかった。だから俺にとっては、早すぎるということは決してない。人生で初めて俺の家に女子がやってくるのだ。これで緊張しないのはラノベの鈍感系主人公くらいだ。
朝から落ち着かない気持ちだった俺は、自分の部屋の掃除を徹底的に行うことにした。昨日も掃除をしたから散らかっていないのだが、これからこの部屋に栞梨が来るんだと思うと、何度掃除をしてもしたりない気分だった。
だから俺は掃除機を三回かけて、本棚や机の埃を一つも見逃すことなく取り除き、部屋を照らす照明器具もとことん磨き上げた。
なかでもベッドメイクは気合いをいれて取り組んだ。シーツや枕カバーを洗濯したばかりのものに変え、枕元にはこっそりと避妊具をセットした。栞梨にその気があるか分からないが、念には念をいれて、いざそのときに焦らなくてもいいようにだ。備えあれば憂いなしである。
また自分の部屋以外にも、リビングやキッチン、お風呂、さらにはトイレまで、栞梨が足を踏み入れそうなところは、すべて掃除をした。正直なところ、自分の部屋以外はいつも母さんにまかせっきりで、自分でリビングやキッチンを掃除したのは初めてのことだ。だけど、少しでも俺の家が栞梨にとって居心地のいい空間なってほしいという一心だったから、まったく苦にはならなかった。
そうして日が昇る前の早朝から始めた掃除もすべて終わり、現在の時刻は一二時五〇分となっていた。栞梨が来るまであと一〇分だ。俺はもはや何をしても落ち着くことはないと悟り、玄関のドアの前で直立不動で待機することにした。まさに地蔵のように。客観的に見て奇行だと思う自分がいたが無視して、カノジョが到着するのを待ち続けた。
しばらくして「ピンポーン」とチャイムが鳴った。すぐさまドアを開けると、世界で一番可愛い女子が立っていた。
「ちょっと早く来すぎちゃったかな?」
栞梨は子犬のような丸い目を細めてはにかむ。五月初旬で少し汗ばむような気温だからだろうか、カノジョの服装はボーダーの七分丈のTシャツに、デニムのミニスカートという出で立ちだ。スカートの丈は膝上一五センチくらいで、かなり短い。栞梨の私服はこれまでに何度も見ているが、いつもよりも肌の露出が多く感じられる。
初夏の陽気のせいなのかもしれないが、もしかすると栞梨もその気なのかもしれないと、俺に淡い期待を抱かせた。心臓の鼓動が早くなった。
「ぜんぜん早すぎるなんてことないよ。遠慮せずにあがってよ」
俺は冷静さを装って、栞梨を家に招き入れるのだった。
「わー、右京くんの部屋だー!」
俺の部屋に入ると、栞梨はもの珍しそうにきょろきょろと部屋を見渡す。とくに代わり映えしない一般的な男子高校生の部屋だと自分では思っているのだが、栞梨は部屋に置いているものを見てはいちいち感嘆の声をあげている。
俺の私物に興味を持ってくれているようで嬉しいのだけど、なんだかくすぐったくなる。だけど俺が初めて栞梨の部屋を訪れたときの気持ちと同じだと感じられて、そのことが俺を心地良くさせた。
ひとしきり俺の部屋を観察して栞梨は満足したようで、ちょこんとクッションに腰をおろした。
「それにしても右京くんの部屋はキレイに片付いてるね」
栞梨は部屋を見渡しながら感心したように言う。何回も掃除した甲斐があったと俺は心の中でガッツポーズをした。
「いや、いつもはもっと散らかってるんだけどな。今日はほら、栞梨が来るからさ」
「私のために片付けてくれたの? もう、そんなに気をつかうことないのに」
とは言うものの、栞梨の顔はほころんでいる。
「でも普段からある程度は掃除してないと、ここまで片付けられないと思うよ。ほら、まーくんの部屋って、一日や二日でキレイにしようとしても無理でしょ」
「あー、たしかに正道の部屋はちょっとな……」
栞梨の家で勉強会をするときに何度か隣にある正道の家にも行ったことがある。親友の部屋は、普段部屋をあまり片付けない俺の目から見ても、ひどい有様だったことを思い出す。脱ぎ散らかした服が山のように重なり、漫画や文庫本が床の至る所に積み上げられていた。足の踏み場がないとは、まさに正道の部屋のような状態を言うのだろう。
勉強会を三人でしようとなったとき、女子の部屋に入るのに抵抗があったから、初めは栞梨の部屋ではなく正道の部屋で行おうと考えた。だけど栞梨に激しく反対されて、後日親友の部屋の惨状を見て俺は納得した。見た目はイケメンなだけに、汚部屋の住人であることが非常に悔やまれる。
栞梨といつもと同じように楽しく会話をしているうちに、俺の部屋にカノジョと二人きりだという状況にもだいぶ慣れてきた。それでも自分の部屋に、いつもはいない栞梨がいるという非日常感に、心臓だけはバクバクと落ち着くことなく激しく鳴っていた。
俺と栞梨はそれから小一時間ほど談笑してから、ゴールデンウィーク明けの試験に向けての勉強を始めた。
朝から落ち着かない気持ちだった俺は、自分の部屋の掃除を徹底的に行うことにした。昨日も掃除をしたから散らかっていないのだが、これからこの部屋に栞梨が来るんだと思うと、何度掃除をしてもしたりない気分だった。
だから俺は掃除機を三回かけて、本棚や机の埃を一つも見逃すことなく取り除き、部屋を照らす照明器具もとことん磨き上げた。
なかでもベッドメイクは気合いをいれて取り組んだ。シーツや枕カバーを洗濯したばかりのものに変え、枕元にはこっそりと避妊具をセットした。栞梨にその気があるか分からないが、念には念をいれて、いざそのときに焦らなくてもいいようにだ。備えあれば憂いなしである。
また自分の部屋以外にも、リビングやキッチン、お風呂、さらにはトイレまで、栞梨が足を踏み入れそうなところは、すべて掃除をした。正直なところ、自分の部屋以外はいつも母さんにまかせっきりで、自分でリビングやキッチンを掃除したのは初めてのことだ。だけど、少しでも俺の家が栞梨にとって居心地のいい空間なってほしいという一心だったから、まったく苦にはならなかった。
そうして日が昇る前の早朝から始めた掃除もすべて終わり、現在の時刻は一二時五〇分となっていた。栞梨が来るまであと一〇分だ。俺はもはや何をしても落ち着くことはないと悟り、玄関のドアの前で直立不動で待機することにした。まさに地蔵のように。客観的に見て奇行だと思う自分がいたが無視して、カノジョが到着するのを待ち続けた。
しばらくして「ピンポーン」とチャイムが鳴った。すぐさまドアを開けると、世界で一番可愛い女子が立っていた。
「ちょっと早く来すぎちゃったかな?」
栞梨は子犬のような丸い目を細めてはにかむ。五月初旬で少し汗ばむような気温だからだろうか、カノジョの服装はボーダーの七分丈のTシャツに、デニムのミニスカートという出で立ちだ。スカートの丈は膝上一五センチくらいで、かなり短い。栞梨の私服はこれまでに何度も見ているが、いつもよりも肌の露出が多く感じられる。
初夏の陽気のせいなのかもしれないが、もしかすると栞梨もその気なのかもしれないと、俺に淡い期待を抱かせた。心臓の鼓動が早くなった。
「ぜんぜん早すぎるなんてことないよ。遠慮せずにあがってよ」
俺は冷静さを装って、栞梨を家に招き入れるのだった。
「わー、右京くんの部屋だー!」
俺の部屋に入ると、栞梨はもの珍しそうにきょろきょろと部屋を見渡す。とくに代わり映えしない一般的な男子高校生の部屋だと自分では思っているのだが、栞梨は部屋に置いているものを見てはいちいち感嘆の声をあげている。
俺の私物に興味を持ってくれているようで嬉しいのだけど、なんだかくすぐったくなる。だけど俺が初めて栞梨の部屋を訪れたときの気持ちと同じだと感じられて、そのことが俺を心地良くさせた。
ひとしきり俺の部屋を観察して栞梨は満足したようで、ちょこんとクッションに腰をおろした。
「それにしても右京くんの部屋はキレイに片付いてるね」
栞梨は部屋を見渡しながら感心したように言う。何回も掃除した甲斐があったと俺は心の中でガッツポーズをした。
「いや、いつもはもっと散らかってるんだけどな。今日はほら、栞梨が来るからさ」
「私のために片付けてくれたの? もう、そんなに気をつかうことないのに」
とは言うものの、栞梨の顔はほころんでいる。
「でも普段からある程度は掃除してないと、ここまで片付けられないと思うよ。ほら、まーくんの部屋って、一日や二日でキレイにしようとしても無理でしょ」
「あー、たしかに正道の部屋はちょっとな……」
栞梨の家で勉強会をするときに何度か隣にある正道の家にも行ったことがある。親友の部屋は、普段部屋をあまり片付けない俺の目から見ても、ひどい有様だったことを思い出す。脱ぎ散らかした服が山のように重なり、漫画や文庫本が床の至る所に積み上げられていた。足の踏み場がないとは、まさに正道の部屋のような状態を言うのだろう。
勉強会を三人でしようとなったとき、女子の部屋に入るのに抵抗があったから、初めは栞梨の部屋ではなく正道の部屋で行おうと考えた。だけど栞梨に激しく反対されて、後日親友の部屋の惨状を見て俺は納得した。見た目はイケメンなだけに、汚部屋の住人であることが非常に悔やまれる。
栞梨といつもと同じように楽しく会話をしているうちに、俺の部屋にカノジョと二人きりだという状況にもだいぶ慣れてきた。それでも自分の部屋に、いつもはいない栞梨がいるという非日常感に、心臓だけはバクバクと落ち着くことなく激しく鳴っていた。
俺と栞梨はそれから小一時間ほど談笑してから、ゴールデンウィーク明けの試験に向けての勉強を始めた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる