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第1章 出会いと経験

第16話 新人基礎講座

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昨日晴れて冒険者になったジュンタ。今日はその足で「新人基礎講座」の会場へ赴いた時、シーヤの姿が見えたのでその流れで雑談していた。しかし、そのタイミングで第三者に絡まれるというテンプレが発生した。因みに、ジュンタはファンタジーに関する予備知識はほぼゼロであるが、持ち前の対応力で何とかやり過ごした。そしてこれから、今回の「新人基礎講座」の講師、ラルスによる講義が始まる。 

ラルス「それでは今から『新人基礎講座』を開始致します。」 

ラルス「起立、礼。」 

講師が挨拶をする。それに合わせて参加者も挨拶する。前世の学校に似たようなものを感じる。 

参加者一同「お願いします。」 

ラルス「それでは講習を始めます。まずは冒険者の活動と冒険者ギルドの仕組みについてです。もしかしたら聞いたことがあるよという人がいるかもしれませんが、ここで改めて説明します。」 

最初の項目は、昨日受付で聞いた話だった。だが、真面目なジュンタにとっては例え似たような内容であってももう一度聞けるのは有難かった。それに先程繰り返したように、ジュンタの異世界の予備知識はゼロである。
1回聞いたからといって全部覚えられる訳がない。 

ラルス「冒険者の活動は、一言で言えば雑食です。クエストの受注から遂行、大自然のフィールド探索やダンジョンの攻略等を各地を旅しながら行う。そうやって世界中の冒険者は過ごしているんです。」 

冒険者の活動を簡単に板書して、ラルスは次の説明に移る。 

ラルス「そして、冒険者ギルドの仕事については、皆はクエストの手続きをするというイメージが強いでしょう。しかし、ギルドのやるべき事は決してそれだけではありません。例えば、ギルド内の図書室にモンスターの生態記録のファイルがありますよね?それは定期的にギルドが更新しているんです。その他にも、冒険者登録を済ませた新人にギルドカードを発行したり、魔物の素材を売買したり、お金の貸付や預金をしたり、冒険者ランク昇格試験の監督をしたり、冒険者基本法の立案及び吟味、そして犯罪の予防と取り締まり、緊急事態の対応など今ざっと挙げただけでもこんなにたくさん業務があります。」 

ジュンタ(昨日も思ったけど、冒険者ギルドって、なんだか行政機関みたいな組織だよな。それこそ、市役所とかに近い感じだ。それにしても、冒険者基本法?これはある程度頭に入れておかないといけないだろうな。ここに来てから今までの時間なんて生後1ヶ月の赤ちゃんより短い。もっとこの世界のことを知らないと後々苦労しそうだな。) 

やはり異世界にもルールはあるようだ。知性ある生き物が統治する国や都市は、規則が付き物である。 

そして、説明に区切りをつけ、ラルスが皆に呼びかける。 

ラルス「皆さん、ここまでメモはきちんと取りましたか?何か分からないことがあったら遠慮せずに聞いてください。」 

ジュンタ「はい。」 

質問をするべくジュンタが挙手する。 

ラルス「お、ジュンタ君。質問かな?」 

ジュンタ「はい。冒険者基本法とは何でしょう?」 

ラルス「それか。この法律は、各国共通で制定された国の法律の一部なんだけど、それは冒険者の義務や権利、違反時の罰則などを明記したものなんだ。詳しい内容は図書室に『法書』があるからそれで確認できるよ。また、決まりについて問い合せたい事があればギルドに相談するといいよ。」 

ジュンタ「分かりました。ありがとうございます。」 

ラルス「他に質問とかある人はいますか?」 

ジュンタが質問したのをキッカケに、参加者たちがそれぞれの疑問をラルスにぶつけた。 

ラルス「では、冒険者の根本的なお話はここまでです。そろそろお昼ですので1時間休憩を取りましょう。1時間後にまた着席してください。」 

やがて昼時になり、講師が昼休憩の時間を設けた。 

ジュンタ「シーヤさん、一緒に定食屋に行きませんか?」 

昼食のために、シーヤを誘った。もちろん知り合いが彼女しかいないからである。 

シーヤ「それなんですけど…お弁当作ってきました。」 

ジュンタ「え、2人前ですか!?」 

シーヤ「はい。」 

ジュンタ「ありがとうございます。でも、どうして?」 

シーヤ「お昼はどうしても定食屋は混みますし…それに、ジュンタさんに少しでも恩返しできたら…なんて。」 

ジュンタ「そんな、杖は俺が申し出たことですから…でも、せっかく作ってくれたんですし、その厚意ごといただきます。」 

2人は自分たちの席でシーヤが作った弁当を広げる。大きな1箱にまとめられ、大量のサンドイッチが入っていた。野菜、果物をジャムにしたものや肉と野菜を炒めて具にしたものがある。 

ジュンタ「おお!美味しそう!」 

シーヤ「召し上がってください。」 

ジュンタ「いただきます!」 

早速ジュンタはサンドイッチを1口頬張る。 

ジュンタ「美味い!」 

シーヤ「よかったです。」 

ジュンタ「シーヤさんも料理できるんですね。」 

シーヤ「はい。小さい頃おばあちゃんと2人で暮らしていて、そのおばあちゃんから料理を教わったんです。まあ、簡単なものしかできませんけど。」 

ジュンタ「そうなんですね。でも、簡単なものだからこそ丁寧さが伝わってくる美味しさです。人の手で作った温かさを感じられます。」 

シーヤ「褒めすぎですよ。でも、ありがとうございます。」 

弁当を食べ、サンドイッチの感想を述べた後も、座ったまま2人で時間がくるまで雑談した。途中他の参加者にちょっとだけ視線を向けられたこともあったが、何事もなく講義の続きが始まる。 

ラルス「皆さん集まりましたでしょうか?…それでは、続きを始めます。」 

講習の午後の部が始まり、ラルスが再び板書する。 

ラルス「先程まで冒険者活動とギルドの説明をしました。次は、『冒険者ランク』について説明します。」 

ラルス「これも聞いたことがある人はいると思いますが、冒険者ランクは信用と実績に基づく己の実力の証であり、冒険者としての実力の目安です。」 

定義を確認し、さらに続ける。 

ラルス「そんな冒険者ランクには、全部で8段階あります。下からE、D、C、B、A、A+、S、SSの順でどんどん高くなっていきます。ランクが高ければ高いほど難易度がより高く、より多くの仕事できます。例えば、講師の仕事はAランク以上でないと回ってきません。因みに私はAランクです。危険な仕事が多く、殉職率も高いですが富も名声も多く手に入ります。」 

ここまでメモを取りましたか?と確認をし、さらに続ける。 

ラルス「ランクを上げるにはギルドが行うランク昇格試験に合格する必要があります。筆記試験と実技試験があり、それぞれ50点ずつの配点があります。知識と技能、両方あってこそですからね。当然ランクが高いほど合格点も高いです。簡単になられて、後で死者が続出しても困りますから。合格点は次の通りです。試験を受ける時のためにメモして下さい。」 

合格点は以下の通りである。 

Dランク~Cランク・・・70点
Bランク・・・75点
Aランク・・・80点
A+ランク・・・85点
Sランク・・・90点
SSランク・・・95点 

ラルス「冒険者ランクの説明は以上です。それでは、次の項目で最後になります。」 

前の説明を消して、新しく文字を書く。 

ラルス「いいですか?ここが今日の内容で1番大事だといっても過言ではありません。それはズバリ、『冒険者のマナー』です。」 

ジュンタ(マナーか…やっぱ異世界でもマナーは大事にすべきだと思われてるんだな。) 

ラルス「今日は時間の都合で長々と解説できませんが、マナーの中でも1番大事な『クエストの手続きにおけるマナー』を解説します。まあ、説明の中にルールが混じってることもあります。面倒だと思う人もいるかもしれませんが、これを早いうちから身につけないと、最悪『仕事がもらえない』なんてこともありますからね。」 

ラルス「すいません、時間が押してしまっているので板書を写して下さい。」 

そして、ラルスがいうクエストにおける主なマナーは次の通りである。 

・依頼主やギルド職員にしっかり挨拶をする。
・依頼達成期日を指定された場合、それを必ず守る。また、守れない場合は依頼主や受付に相談する。
・クエストの受注を辞退する場合はすぐに申し出る。
・トラブルやミスがあった場合、すぐに報告又は謝罪をする。
・クエストをクリアし、報酬を貰ったらお礼を一言言う。 

など 

ラルス「以上で『新人基礎講座』を終わります。何か分からないことがあれば、後で個人的に私に質問するか、後日受付で聞いてください。」 

参加者一同「ありがとうございました。」 

一日に渡る「新人基礎講座」が終わり、ジュンタとシーヤは帰路に着いていた。 

ジュンタ「今日はためになりましたね。」 

シーヤ「そうですね。あれを聞くのと聞かないのとで全然違いますよね。」 

ジュンタ「明日から本格的に依頼を受けまくるぞ!」 

シーヤ「頑張ってください。」 

ジュンタ「はい。お互い頑張りましょう!」 

シーヤ「ええ。」 

冒険者とは何たるかを教わり、希望を胸に家に帰るジュンタ。今日もまたしっかり体を休め、明日から冒険者としての活動が幕を開ける。 

To be continued
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