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第1章 出会いと経験

第1話 修行半ば

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『心眼流』それは初代師範、山出種道やまでたねみちが編み出した臨機応変をモットーにした武術であった。水の様に形なきもの。現世に存在する様々な戦い方を織り交ぜた究極の技術体系。修行は難解且つ困難であり、弟子はたった1人しかおらず、自ずと一子相伝のような形となった。そんなたった1人の弟子、柿之惇太かきのじゅんたは師がもつ強さを求め、ひたむきに修行に励んでいる。 

   組手中 

惇太「セヤアアアアアーー!」 

種道「ホッ、ヨッ、」 

   種道バックステップ、惇太間合いを詰める 

惇太「シュッ!」 

惇太「セッ!」 

惇太「ヘッ!」 

惇太「ハアアアアーー!」 

   惇太、拳打と蹴打の嵐を放つ。しかし、ことごとく捌かれる。 

種道「ホイッ。」 

惇太「!?」 

  惇太は隙をつかれた。その刹那天井が視界に入った。投げられたのだ。そして、気付かぬうちに師範の手刀が首の前で寸止めされていた。 

惇太「ぐおっ!………っ!?」 

種道「ホッホッホ。ここまでじゃ。」 

   惇太立ち上がる。 

惇太「ありがとうございました。」 

種道「ホッホッホ。最近よくやるのう。惇太 。」 

惇太「山出師範にはまだまだ、手も足も出ませんよ。これからも、精進いたします! 

種道「そうかそうか。ワシは健気で良い弟子を持ったものじゃ。」 

   インターホンが鳴る。 

近所の
おじさん「山さん。野菜のお裾分けだよ。 


種道「ほいよ。丁度客来たんで、休憩しようや。」 

惇太「はい。」 

   惇太、休憩がてら水分補給。 

惇太(俺は師範の様な強さを求めている。だが…何かが足りない…あっ、そうだ!) 

種道「惇太、今日は近所で野菜パーティがあるでな。一緒に行くか?」 

惇太「いえ、今日はちょっと準備したいことがありまして。」 

種道「山篭りのことじゃろ?前から言っとった。」 

惇太「はい!半ばサバイバルの様なかたちで過酷な環境での修行をしたいです。」 

種道「ホッホッホ。ワシに任せい!」 

   翌日 

惇太「いよいよですね。しかし…」 

   惇太が自分のリュックとは別に背負っている荷物は何故かとても重い。 

惇太「かなり重いですね…何がはいってるんですか?」 

種道「それ?もちろん重りじゃよ。1つ5kg
」 

惇太「5kg!?いくつ入ってるんですか?
」 

種道「4つじゃ。な~に、重りよりも辛いことは山ほどあるわい。山だけにのう。ホッホッホッホッホ。」 

惇太(重くて寒い………) 

   それから、山でサバイバル兼武術の修行をした。サバイバルの肉体労働でヘトヘトの体を武術で更に追い込む、地獄の無限ループだった。無論、修行の時は持参した重りを付ける。 

惇太(疲労で…死ぬ…。まだ1週間くらいしか経ってないのに…正直サバイバルと武術のダブルパンチは想像以上に堪える…でもここで音をあげることはない!夏休みが終わるまでやり切ってみせる!) 

   惇太は何とか山篭りに耐え、夏休みの終盤に差し掛かった頃、山出師範と下山の準備をしていた。 

惇太「水が底をつくので川で汲んできます
。」

種道「おう。気をつけてのう。荷物番は任せい。」 

惇太「はい。行ってきます。」 

   川へあと少しの所で、悲鳴が聞こえてきた。惇太は直ぐに駆けつけた。声の主は少女で、足場が崩れた結果、落ちそうになって何とか崖をつかんだが、登れなくなったらしい。 

少女「助けてー!」 

惇太「今すぐ引き上げるからな!もう少しの辛抱だ!」 

   惇太は近くにあったツルをちぎって少女の頭上まで伸ばした。 

惇太「これに掴まるんだ!」 

    少女はツルを掴んで少しずつ登っていく
。このまま引っ張れば助けられる。 

惇太「頑張れ!もう少しだ!」 

少女「はい………」 

   プツン 

少女「あっ………!」 

   なんと、寸での所でツルが切れてしまった。万事休すか……… 

   ガシッ! 

   少女は落下せず、惇太が腕を掴んで踏ん張った。 

少女「む、無茶です………」 

惇太「いいや、絶対に助ける!」 

   とは言ったものの、全力で引っ張っても全く上がる気配はない。それどころか、修行終わりの体は悲鳴を上げて、徐々に体力を消耗し、逆に引きずられていく。 

惇太(くっ!腕が………水を汲みに行ってから結構経つ。きっと師範は異変に気がついて駆けつけてくれる。それまで時間稼ぎだ。) 

   その頃 

種道「あやつ、遅いのう………しょうがない。荷物持って迎えに行くとするかの。」 

種道(しかし、いくら何でも遅すぎる。ここは山の中。何かトラブルがあったに違いない。足早に向かわねば!) 

   惇太はまだ耐えていた。しかし、今にでも落下するほど、ギリギリだ。 

惇太(耐えろ!耐えろ!師範が来るまで持ちこたえるんだ!) 

少女「もう、離してください!このままじゃ2人とも落ちちゃいます!私の事はいいから!」 

惇太「ダメだ………助けが来るまで………この手を離さない!」 

種道「惇太ーーー!!」 

惇太(よし!師範が近くまで来た!) 

惇太「あと少しで………助かるぞ………」 

   そして、師範は近くまで来てはいたが、もう限界を迎えてしまう。 

惇太(ダメだ………もう………限………界………) 

種道「惇太…っ!?」 

   師範は惇太をようやく見つけたが時すでに遅し。目にしたのは、弟子が崖から真っ逆さまに落ちていく姿だった。 

惇太「うあああああああ!!」 

種道「惇太ーー!………くっ!………」 

   師範は弟子の死を悟って膝を着いた………。   
惇太(う………お………動けねえ………。俺はまだまだ未熟なのに、ここで終わるのか……
…せめて、あの女の子だけでも助かってくれ………すいません………師範………師より先に逝くなんて………弟子失格………です………ね…
……) 

   惇太の胸を弟子として、武術家としての在り方が定まっていない事への後悔と少女の無事を願う心が埋めつくした。そして、意識は視界が閉ざされる様に、闇へと消え去った……… 

~ 

惇太「う………うーん………」 

   あれからどれくらい時間が経っただろうか。惇太は目を覚ました。すると、そこには見知らぬ景色が広がっていた。青々とした緑に包まれた森である。 

惇太「ここは、どこだ?」 

   かくして、惇太は異世界に飛ばされた。これから彼は何に出会い、どのような経験をしていくのだろうか……… 

To be continued
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