吸血秘書と探偵事務所

かみこっぷ

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決着のビーチバレーとありきたりな水着シーン

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「はぁー…………くっそー負けたかぁ」

「結構惜しかったと思うんだけどねー」

「わたしがもっと…………頑張れれば…………」

チーム負け組が顔を突き合わせ肩を落としているその横では、所長秘書チームの二人はハイタッチなんかを交わしている。

「やりましたね所長! 所長の作戦のおかげです!」

そう言ってはしゃぐ璃亜は歳相応(見た目だけで言えば)の姿に見える。

「作戦なんて大したもんじゃねぇよ。ただ…………」

チラと氷柱の方を見やる相一。ツインテールの雪女がムスっとした表情を返してくるが、そちらには渾身のドヤ顔向けて

「前半、できるだけ氷柱の体力を消耗させるために守備に重点を置いて一ゲームを長引かせて、攻撃の要の氷柱を無力化した後は――――」

「探偵さんって勝つためなら割りとえげつない手段も気にしない質ですよね」

詩織の言に当然だと言わんばかりにキリリとした表情を作る大人げない相一。

「当たり前だろ。勝負というからには全力を尽くして勝ちにいく、それが俺の生きざ――――あッびャァアアアアアアア!?」

キリリとした表情(自分ではそのつもり)は二秒と保たなかった。

理由は単純で。

水着ということで普段より圧倒的に露出の多い雪女が、同じく海パン一丁で防御力など皆無の彼の背中に飛びついたからで。

とは言え別に水着姿の少女に抱きつかれたから、という理由で取り乱す程女性に対して免疫が無いというわけでもなくて。

まあ一言で言えば海パン一丁の奴の背中に氷みたいに冷たいモノ押し当てたらそりゃあビックリするわけで。

「バっおまッ、冷て! 寒い冷たいいい加減降りろォォォおおお!」 

その光景を一歩引いて眺めていた他の三人はというと

「氷柱ちゃんも所長さんも…………仲良しです…………」

「何だかんだ探偵さんと一番イチャコラしてるの氷柱ちゃんだと思うんですけど、放っといていいんですか? …………秘書さん的には」

「同じ事務所のお二人が仲睦まじいのは良いことじゃないですか?」

詩織の質問の意図を理解してかしないでか璃亜の反応はいつも通り落ち着いたものだった。

「――――これが正妻の余裕というやつかッ!!」

「んブフッ!?」

そろそろクール系美女の看板を下ろすことを考えなければいけないかもしれない、そんな分かりやすい反応を見せてくれる。

「な、何の話ですか何のっ!? まったくもうあなたといい安曇野さんといい、どうして私と所長を…………そ、そういう関係にしたがるんですか」

「えーだって年頃の若い二人がですよ? 毎日同じ屋根の下で生活していて何にも無いわけ無いじゃないですかッ!!」

両手をグーにして力説する女子高生。友達は少なくてもこういう話に目を輝かせるのはやはり女子高生という種族の特徴なのか。


「同じ屋根の下とは言いますが、別にふたりきりというわけでもないですし…………」

「ほほう、それはふたりきりならば何か――――いやいや、ナニかしてしまいたいと考えているという事ですか!?」

「もう…………揚げ足とるような事言わないでください」

「すいませーん。秘書さんの反応が面白くてつい」

そんな所でその話題は終わったわけだが詩織の顔に、今日はこの辺にしといてやるけど続きはまた今度な!! という笑いが張り付いていたのを璃亜は見逃さなかった。

そんなこんなで昼下がり。泳ぎはもちろんの事スイカ割りからビーチフラッグまでおよそ海水浴場でできうる遊びを端から遊び倒した事務所の一同は、一休みも兼ねて海の家で昼食を取る事にした。

その海の家こそ安曇野の言っていた観光協会の人が経営している店であり、元々連絡しておいたこの時間までみんなではしゃいで時間を潰していたという訳だ。

「こんにちはー、天柳探偵事務所でーす」

海辺に面した建てられたその店は、良く言えば王道悪く言えばありきたり、そんな評価がしっくり来る見た目をしていた。

テーブル席と座敷、どちらも相当な数が用意されているが今いる客は事務所の面々を合わせても四グループ程だ。

「これはどうも、わざわざ遠い所から…………、警察の方から話は聞いています。私が断波観光協会会長、前橋です。どうぞよろしくお願いします」

前橋さんはねじり鉢巻を頭に巻いたいかにも海の家の親父といった風体をしていた。

ただその声には張りが無い。ここ最近の事故続きで海水浴場への客足が遠のいているのが原因か。

「じゃあ早速詳しい話を…………と言いたいところなんだけど、――――――――先に昼飯食わしてもらっていいですか?」
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