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「オッグ老師!今のはなんですか!」
ついてきていたメープルがオッグ老師に詰め寄る
確かに我も気になるな、ムースがギミトラの肩をつかんだと思ったら跡形もなく粉砕されていたのだから
今は残っている片方の手で凌いでいる

「儂にも分からん、しかし、このままではギミトラが危ないのは事実じゃ!急いで加勢したいのだがどうだ?」

確かに全身を硬化しているとはいえ、ムースの攻撃を片手で受けるのはきついだろう

「仕方ありませんな。今はあいつを止めることを最優先に動きましょう。この後でたっぷり話を聞かせてもらいますからな」
オッグ老師を睨みながら言う
「ええ、儂に答えられることはなんでも答えましょう」





この子に何が起こったと言うのよ!
ギミトラは剣を凌ぎながら困惑していた。ムースはさっきまでずっと笑っていた、でも今は「殺す」、「死ね!」等と言いずっと怖い表情をしている
そのせいか、攻撃も一撃は重いが速度は落ちていて何とか凌げていた

「ギミトラ!」
声がしたのでムースから距離をとるように突き飛ばしながら後ろに下がる

巨大ななにかが物凄い速さで隣を通過した
「グレートフレイム!」
ムースの前についたそれは巨大な火柱を発生させる

「あれって」
呆気にとられながら呟くギミトラ
「下がっておれ、ここからは儂達が相手する。ご苦労だったな
メープルに直して貰うがよい」
ギミトラをちらりとも見ずに話すオッグ老師
「こっちに来て、ギミトラさん
二人が本気を出せなくなるから」
離れたところから、完全に回復しているメープルが呼んでいるので取り合えずそこまで行く

「あれってウルイちゃん?」
今ムースは人間の二倍以上はある大きな獅子と戦っていた
「そうよ、あれがウルイさんの本気
火の秘宝を使って火属性を極限まで強めて、さらに自分を強化した姿」

獅子は鬣が燃えており、爪や牙は火を纏っている
その火の付いた爪の一撃はそうとうに強いらしく、剣で受ける度に大きな音と衝撃がくる

「今のうちに聞いておきたいんだけどね、さっきの攻撃の時に肩は硬化していたのよね?」
回復魔法をかけながらメープルが質問する
「ええ、全身をしていたわよ。粉々に粉砕されたけどね」
自嘲気味に小さく笑いながら返事を返す
「どんな攻撃だったかわかる?」
「詳細は分からないけれど強い衝撃を掌から出していたみたいよ」
「そう....ちょっと手伝ってちょうだい
あなたに頼みたいことがあるわ」

突然飛び上がりどこかに飛んでいってしまうので急いで追う






「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
やみくもに、力任せに振る剣を避け続ける

「その程度か、もうよい!」
右足を振り上げ、火の色を青になるまで温度をあげてから頭を狙う

それはクリーンヒットし、ムースを地面に叩きつけた。そのままバウンドしたところを尻尾で思いっきり叩きつけ....ようとしたが出来なかった
尻尾が当たる寸前にムースから発生した衝撃波によってウルイは攻撃できなかった

今のは.....攻撃か?全方位に衝撃を放つなど無駄なことをするんだな

「ウルイ殿!一度メープル殿の所に行ってくれ!こいつの正体が分かった」
オッグ老師が隣まで来てそう言う
急いでメープル達のいる壁際まで来て説明を聞く

「鑑定の水晶で確認したんだけど、オッグ老師が知らないスキルが二つ増えていたんです!ウルイさんならわかるかもって」
ムースのスキルが表示されている水晶をこっちに向ける

融合 開放 影魔法Lv8 回復魔法Lv5 加速Lv5


「融合に開放か.....なるほど、そう言うことか」
いつもの小さな姿になりながら、納得したように、うんうんと頷く

「なにか分かったんですか?」
「融合というのは吸収の上位スキルだ、その効果は吸収の効果を残しながら、吸収したものを自分の一部として取り込み融合するって効果だ」
二人はピンと来ないのか良く分かっていない顔をしながら聞いている

「それと開放だがな、融合とは逆に放出の効果を持っておる。この二つを使えばあの衝撃波も説明がつくと言うものだ」
「え!?ウルイさんにはギミトラの肩を砕いた攻撃が分かったの!」
目の前まで飛んできた、かなり興奮状態になっているようだ
「まぁ落ち着け
吸収は魔法以外にも打撃によるダメージ、衝撃を吸収していたのだ
それを開放のスキルで外に向かって放出すれば溜めに溜めた衝撃波が一気に襲うことになる」

説明を聞いていた二人はムースのスキルがどれだけ凄いのかを理解したようだ
「え!そんなの勝ちようがないじゃない!」
「そうよ!魔法も物理もダメならどうやって倒すのよ!」

「落ち着かんか!バカたれが」
慌てている二人を落ち着かせる為に少しだけ大きな声を出す
「我とオッグ老師ならスキルの無効化が出来る。二人は避難してくれ」
背を向け、ムースの方を向くウルイ
「ちょっと待って....よ?」
ギミトラがウルイに話し掛けようとしたがメープルが顔の前まで来て口に指を当てて、しー、としているので黙る
「分かったわ、ウルイさんがそう言うなら避難しておく。でも必ずムースを止めてね
テレポート」
一言いったあとに二人はテレポートで避難した

「さてと、あの二つのスキルがあるならなりふり構ってられんな」
獅子の姿になり、全身に青い炎を纏いながらオッグ老師の隣にたつ

「あの二人は避難させたんじゃな」
オッグ老師もウルイ同様に秘宝を使い強化している。使っている秘宝をは風の宝玉でオッグ老師の得意な属性だ
秘宝を使ったオッグ老師は風を纏い、鎧のようにしている。そして一番すごい効果は、この姿の時は一定範囲の風を操れると言うことだ

「話は聞いていましたよ。さすがに博識ですなウルイ殿」
風を操りムースに攻撃をいれながら話しかける
「聞いていたならわかっているでしょう?その程度の攻撃では効きませんぞ。もっと強力で圧倒的な力が必要になるのですから」
実際に攻撃を受けているムースは普通に立っている

「ならば二人でやりますかのう。魔装を使えばよりやり易いでしょうしな」
「ええ、ではやりましょう」

「「魔装展開」」
二人が叫ぶと、ウルイは爪に白い光が灯った。オッグ老師には白い死神の鎌のような物が出現した、その鎌は少し特殊で、棒の両方に刃が付いていて、S字みたいに見える

先に動いたのはウルイだった、加速して速度を落とさずに爪を突き刺す
「うああああああぁぁぁ」
爪は左のふくらはぎに刺さった
そのときの表情、大泣きだった

「死ねぇぇぇぇ!」
剣をふって頭を狙ってくる
「そうはさせんよ」
ウルイに当たる寸前に風が壁になり剣を弾く
「まだ終わらんぞ!プロミネンス」
超高温の炎を左手につけ、胴体を突き刺す

ジュワアアアアア

肉が焼ける音と焦げ臭い匂いを発生させる
「カハッ」
ムースは大量の血を吐く
「ウルイ殿!」
オッグ老師の声を聞いた後に胴体に刺さっている方の腕から火炎放射をだし、ムースとの距離をとる

ムースを追いかけるオッグ老師
オッグ老師は空中に浮いているので天井付近にまで飛ばされたムースのところまで行けた

「すまんかったなムースよ
お前を正しく導くことができんかった。せめて儂が逝かせよう。こんな師匠で本当にすまんかったな我が愛弟子よ」
鎌を首目掛けて思いっきり振り下ろす

「師匠じゃ僕は殺せませんよ」
ムースから溢れた黒い霧が鎌を止め、オッグ老師を包む
「なんじゃ!これは!」
霧はどんどん濃くなり、ゆっくりと降りてきて、地面につく頃には真っ黒の固まりになっていた
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