上 下
19 / 44

19

しおりを挟む
それから三日間の内容は省略させてもらう
二人で村を回りイチゴ狩りやぶどう狩りをして、野菜の収穫を手伝ったりしていただけだから

ただ一つだけ重大発表がある
それは……御堂が髪を切ったのだ

その影響は凄まじく、すれ違った人は立ち止まって御堂に見惚れている人までいる
しかも、この村には未婚の女性が少なく結婚できていない男性が多かったためどこにいっても必ずプロポーズされている
そのプロポーズを断る口実として俺が暫定彼氏になった。断る度に俺が怨ませていて、この村の男性をかなり敵にしてしまったのは言うまでもない

さて、そろそろ約束の時間だから祠の近くにまで行っておく
ずっと腕を腕を組んで歩いていたのですっかり慣れてしまった

「おお、来たか。二人とも。待っておったぞ」
祠の近くにはウルイがもういた。お座りの体制でずっといたので犬みたいな印象を受けた
「すまなかったな、待たせたか?」
「いや、我も今来たばかりだ」
「そうか、なら良かった」
「けんちゃんけんちゃん」クイクイ
「なんだ?」
「今の会話カップルみたいだったよ。すっかり仲良くなったんだね」
こーの子はこんなに頭が悪かったか?
カップルみた?馬鹿馬鹿しい、誰がこんなミニライオンなんかと
仲良く?ずっと御堂と一緒にいたんだから会ってるわけないだろ

「分かってるよ、言ってみただけ。それにカップルは否定して良いけど……してくれないと困るけど!!
仲良しは良いんじゃないの?仲の良い人がいるのは良いことだよ?」
「オカンか!!」
「違うよ?」
冷静に否定するな!
まったく、こっちの世界に来てから……いや、御堂と普通に話はじめてからツッコミキャラになりかけてるな。ツッコミどころが多すぎてキャラを変えられつつあるとは

「よいのか?」
移動用の魔方陣を出したまま放置していたらしく、ジト~とした目でこちらを見ている
「お待たせ、行こっか」
「すまん、行くか」
前回同様魔方陣に触れて移動する



「やっと来ましたか。ウルイ殿」
「これはこれはオッグ老師、出迎え感謝します
選定ではこの者が戦うでしよう。今のうちに負けたときの言い訳を考えておくのをおすすめしますぞ」
出会って早々いがみ合ってるな、老人と小さなライオンの間で火花が出てるのはなかなかに面白いな

「ほっほっほっ、面白いことを言いますな。参加する私の部下は戦闘において絶対的な力を発揮するのだぞ?
こやつらのような若造に倒されるような奴ではないわ!」
「それはどうですかな。この者も相当な強者
ここは一つ賭けでもしませんかな?オッグ老師」
何か企んでいるかのような悪い顔で相手を挑発する
「賭けですと、随分大きく出たのもじゃな。儂の弟子と戦って勝てるわけ無いんじゃから賭けにもならんよ」

俺も随分低く見られたものだな。ちょっとイライラするし、やっぱり遠慮はいらないな
「はははは、それならば我は秘宝の一つでも賭けますか」
「本気ですかな?秘宝は永遠の力
その価値を知らんわけでもあるまいでしょう?」
表情は見えないが驚いていることは声から推測できる
「もちろん分かっておりますよ。それだけその者たちに期待していると言うことですな」
ウルイはこっちを見ながら期待していると言う

ライオンに期待されても嬉しくないけど
「期待されてるなら応えないとね!」
隣にいる人はやる気みたいだ
俺とは違うやる気だな。俺は低く見られないためにやろうとしてるけど、こいつは期待に応えるためにやるのか
「すごいな」ボソッ
彼の呟きは誰にも聞こえることはなく

「ならば、この賭けにお互いの秘宝を賭けましょうか。負けた方はかなり弱くなりますしリスクはなかなか高く面白い賭けになりましょう」
オッグ老師は自分が負けるとは微塵も考えていないのか自信満々な表情を浮かべている
「賭け成立ですな、貴方の負けたときの顔を見るのは楽しみですな」
「ふふふ、儂は負けんよ」



選定も時間が近くなり参加者は集まってくれ、と司会者らしき人が言ってるのでウルイの案内のもと、俺は戦闘部門に行き、御堂はウルイと一緒に魔法部門に向かう
部門事に違うステージが用意されてるんだな

「頑張ってね!地位とかはどうでも良いけど、負けるなんて許さないよ?」
首をかしげながら上目遣いで言ってくる
目でもおかしくなったかな?今までと違うように見える
「負けようなんて思ってねーよ!そっちも頑張れよ!」
「うん!」
フワッとした笑顔を浮かべて微笑む
うん。やっぱり俺の目がおかしくなったんだろうな

それぞれの会場に行き司会者の指示にしたがう
「この戦闘部門では武器や防具、魔法、アイテムなんかも使用自由です。ただし!回復系のアイテムは禁止とします。それ以外は許可します。強化系、移動系のアイテムなんかを使って構いません。魔法の直接攻撃も禁止です、間接的に使うのであれば構いません」
てのひらサイズの小さな妖精が司会をしている。あんな小さくて何ができるんだろ?
「あっ!ちなみにルール違反があれば私が力ずくで止めますので気を付けてくださいね」にこっ

ゾワッッッ

今まで味わったことの無い絶対に逆らってはいけない雰囲気を感じて戦闘部門にいた全員が息をのむ
ヤバイ!、あの妖精。明らかにただ者じゃない!

「さてさて皆様、簡単なルール説明をさせていただきますね!すべてのステージには生存の魔法が掛かっているのでステージ上で死んでも命は無事ですから気軽に殺しあってくださいね♪」
コワー、この子コワー。なんだこの子。殺しあいって気軽にするもんだったっけ?いや、違うよな!違うはずだ!俺は間違ってない。こっちの常識を知らないとはいえ気軽に殺しあいをするのは絶対に常識ではないはずだ

回りいる人は馴れているのか冷静に見ている
「では皆さんに抽選をしてもらいます。今回の参加者は五十二人なので三つのグループに別れて予選をしてもらいます。各グループ生き残った二人が決勝トーナメントに出られます。つまり、決勝トーナメントは六名で行われます」

「それだけか」「一気にそこまで絞られるとは」「予選の相手によっては決勝に出れるかもな」ザワザワ

「お静かにお願いします」
シーーーン
ざわつき始めた会場が一言で静まった
「それでは一人ずつ抽選をして下さい。遅い人は強制的に失格にするのでお気をつけください」

一人ずつ抽選をして、結果は一グループ十八人、ニグループ七人、三グループ二十七人になった
随分偏ったが編成は運なので仕方がない
ちなみに俺はニグループになった。ニグループは全員が化物クラスの実力者ばかりなので相当キツイと誰かが話してるのを聞いた
その中にオッグ老師の仲間もいるらしい

「それでは一グループから始めますので用意をお願いします」
一グループはステージの上にそれ以外は回りで観戦する

さてと、情報収集をしとくか
会場にいる全員を解析し、戦闘方法を考えておく

解析して気づいたのは、選手より司会の妖精の子が桁外れに強いことだった。ニグループの選手を見ても強いのは三人で、全員が妖精よりも少し弱いぐらいだった。相性にもよりそうだが
スキルレベルは妖精が一番高い

「それでは第一試合スタート」
妖精の掛け声で試合が始まった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...