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79.脱出準備
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予想外にエドワードはユージェニーの離宮行きを渋った。
「なぜ今この時期に離宮に行かねばならぬ?」
「陛下が臣下の妻を奪って愛人にした女性に子供までできたと王宮中で噂になっているのです。醜聞が耳に届かない静かな所に行きたいですわ」
「『奪った』んじゃない。ステファニーは元々私のものだ!」
「事実でしょう?こんな醜聞、冗談じゃありません。しばらく王宮を離れて傷心を癒してはいけませんか?」
「そなたは余を愛しているわけではない。側妃に子供を産んでもらえと散々言っていたではないか。それなら傷心なんてことはなかろう?」
「それでも侮られたり、同情されたり、そうでなくても聞きたくもない噂が耳に入ったり・・・こんなことでいい気分になれる人が一体いますか?もうたくさんです!それも陛下が臣下の妻を奪い取って子供を作ったからですよ!」
「奪い取ったなんて言い草は許さない!何度も言わせるんじゃない!」
「事実でしょう?生まれた子をなかったことにはできません。せめて私をこの不快な噂から離れた所に行かせて下さい」
「駄目だ。今、使える状態の離宮は南の離宮だけだが、10年近く使っていないから、本当に住める状態なのかわからない。それにここから馬車で片道1週間もかかる。道中の安全が確保できない」
王宮から一番近い王都郊外の離宮は、ウィリアムの葬儀の日の暴動で破壊されて以来、庭園の一部を慰霊公園にして建物の全壊部分を取り壊しただけで、住める状態ではなかった。
エドワードは何だかんだ言ってユージェニーが離宮に行くことを許さず、結局、ユージェニーは正攻法で王宮を脱出するのを諦めた。
「あぁ、もうちょっと冷静に交渉すればよかったわ。私もまだまだね」
ミッシェルもジャンもこれには同意できなかった。そもそもエドワードが悪いのだ。いくら政略結婚でもここまでこけにされて冷静になるほうが難しい。
「エドワードに相談しなければよかったわね。こんなに警備が強化されたら、こっそり王宮から脱出できないわ」
「姫様、近いうちに味方の騎士だけで護衛する時間を作ります。その時に脱出しましょう」
「そんなことできるの?」
「例え1人や2人くらい姫様の騎士でなくとも何とかできます」
「殺すのは駄目よ」
「姫様の騎士は強いのです。峰打ちだけにしておきます」
ユージェニーはほっとした。これからルクス王国で内乱か革命が起きることは避けられないだろう。ならば血が流れることは必須だが、わずかでも儚くなる命が少なくなるほうがいい。
通常、近衛騎士2人が同時に王妃の私室前で護衛しており、私室内ではジャンをはじめとしたソヌスの手の内にある騎士1人が控えている。だがユージェニーがエドワードに離宮行きを直談判して以降、護衛が増やされた。でもジャンがなんとか近衛騎士の勤務予定を細工してなるべくソヌスの手の内の者だけで護衛する時間を作ることになった。
「姫様、こんなに強硬に反対するなんて、あの男にもまだ少しは理性があったようですね」
「人質がルクスに必要なのよ」
「姫様を人質などと呼ばせません!」
「ありがとう。でももうすぐそれもお仕舞いよ」
ユージェニー達は他の者達に気取られぬよう、少しずつ脱出の準備をしていった。
「なぜ今この時期に離宮に行かねばならぬ?」
「陛下が臣下の妻を奪って愛人にした女性に子供までできたと王宮中で噂になっているのです。醜聞が耳に届かない静かな所に行きたいですわ」
「『奪った』んじゃない。ステファニーは元々私のものだ!」
「事実でしょう?こんな醜聞、冗談じゃありません。しばらく王宮を離れて傷心を癒してはいけませんか?」
「そなたは余を愛しているわけではない。側妃に子供を産んでもらえと散々言っていたではないか。それなら傷心なんてことはなかろう?」
「それでも侮られたり、同情されたり、そうでなくても聞きたくもない噂が耳に入ったり・・・こんなことでいい気分になれる人が一体いますか?もうたくさんです!それも陛下が臣下の妻を奪い取って子供を作ったからですよ!」
「奪い取ったなんて言い草は許さない!何度も言わせるんじゃない!」
「事実でしょう?生まれた子をなかったことにはできません。せめて私をこの不快な噂から離れた所に行かせて下さい」
「駄目だ。今、使える状態の離宮は南の離宮だけだが、10年近く使っていないから、本当に住める状態なのかわからない。それにここから馬車で片道1週間もかかる。道中の安全が確保できない」
王宮から一番近い王都郊外の離宮は、ウィリアムの葬儀の日の暴動で破壊されて以来、庭園の一部を慰霊公園にして建物の全壊部分を取り壊しただけで、住める状態ではなかった。
エドワードは何だかんだ言ってユージェニーが離宮に行くことを許さず、結局、ユージェニーは正攻法で王宮を脱出するのを諦めた。
「あぁ、もうちょっと冷静に交渉すればよかったわ。私もまだまだね」
ミッシェルもジャンもこれには同意できなかった。そもそもエドワードが悪いのだ。いくら政略結婚でもここまでこけにされて冷静になるほうが難しい。
「エドワードに相談しなければよかったわね。こんなに警備が強化されたら、こっそり王宮から脱出できないわ」
「姫様、近いうちに味方の騎士だけで護衛する時間を作ります。その時に脱出しましょう」
「そんなことできるの?」
「例え1人や2人くらい姫様の騎士でなくとも何とかできます」
「殺すのは駄目よ」
「姫様の騎士は強いのです。峰打ちだけにしておきます」
ユージェニーはほっとした。これからルクス王国で内乱か革命が起きることは避けられないだろう。ならば血が流れることは必須だが、わずかでも儚くなる命が少なくなるほうがいい。
通常、近衛騎士2人が同時に王妃の私室前で護衛しており、私室内ではジャンをはじめとしたソヌスの手の内にある騎士1人が控えている。だがユージェニーがエドワードに離宮行きを直談判して以降、護衛が増やされた。でもジャンがなんとか近衛騎士の勤務予定を細工してなるべくソヌスの手の内の者だけで護衛する時間を作ることになった。
「姫様、こんなに強硬に反対するなんて、あの男にもまだ少しは理性があったようですね」
「人質がルクスに必要なのよ」
「姫様を人質などと呼ばせません!」
「ありがとう。でももうすぐそれもお仕舞いよ」
ユージェニー達は他の者達に気取られぬよう、少しずつ脱出の準備をしていった。
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