51 / 85
51.久しぶりの兄妹の邂逅
しおりを挟む
エドワードは晩餐会の後、ルイに挨拶をしてユージェニーをねぎらい、新国王夫妻はそれぞれ自室に、ルイはあてがわれた客室へ戻って行った。
ユージェニーが自室に戻ると、ミッシェルとジャンが憤った様子で待っていた。
「姫様、あの浮気男ったら、元婚約者を見てましたね!あんな大事な式典中に!」
「あらあら、『浮気男』だなんて不敬ですよ。それにエドワード様はまだ不貞してないわ。それに彼にとってこの愛はそんな汚らわしい不貞ではなくて『真実の愛』なのよ、フフフ・・・」
「それでは姫様はあの方にとって何なのですか!」
「仕事上のパートナーよ。人生のパートナーでは決してないわ」
「姫様、それでよいのですか?」
「よいも何も、王侯貴族の結婚なんてそんなものでしょう?愛を期待するのは高望みなのよ」
ミッシェルとジャンは、敬愛するユージェニーの諦めきった言葉を聞いて心底悲しそうだった。
「それにしてもステファニー様の旦那様がかわいそうね。2人の間にお子さんも生まれたばかりなのに、エドワード様は2人をかき乱して本当に罪作りな方。ステファニー様の旦那様は今にも殺しそうな目でエドワード様を見返していたわ」
「私が夫でも睨み返したと思います」
「あらジャン、寡黙かと思ったら、意外と情熱的なのね」
「そういう問題では・・・」
「そうそう、これからお兄様に会うから侍女の服を用意して頂戴」
それを聞いてミッシェルとジャンは一瞬驚いたが、すぐに目的を理解した。ジャンが室外に出た後、ミッシェルはユージェニーの着替えを手伝った。ユージェニーがルイと会ってもルクス王国の利益に反することを話すわけではなかったが、エドワードだけでなく、彼の臣下にもユージェニーはこの会合を秘密にしたかった。
侍女に変装したユージェニーは、ミッシェルと共にルイの客室を訪れた。ミッシェルは客室を出て外で控え、その他の使用人達も人払いして兄妹は2人だけで話をすることができた。
「ユージェニー、あの男は式典中に元婚約者を見ていたな」
「あら、お兄様も気づきましたの?ミッシェルとジャンも気付いて随分憤ってましたわ」
「そなたは冷静なのだな。構わないのか?」
「ええ、人の気持ちはどうしようもありません。でもエドワード様は実際に不貞をしているわけではありません。彼が私に誠実である以上、私は仕事上のパートナーとしてエドワード様に寄り添うだけです」
「その『仕事』には、後継ぎ作りも入っているぞ。辛くないか?」
「王侯貴族の結婚など、そのようなものでしょう?」
「でも私は妃を愛しているぞ」
「お兄様の結婚が幸福だったのです」
「そなたの結婚生活が幸福でなさそうなのは兄として辛い。もしどうしても我慢できなくなったら、私がなんとかするから必ず言うのだぞ」
「大丈夫です。心配しないで、お兄様」
ユージェニーは、流石に兄にも閨の生々しい不満を言う気にはなれなかったし、エドワードが側妃を娶ることになるようにこっそり避妊していることも話すつもりはなかった。
ユージェニーが自室に戻ると、ミッシェルとジャンが憤った様子で待っていた。
「姫様、あの浮気男ったら、元婚約者を見てましたね!あんな大事な式典中に!」
「あらあら、『浮気男』だなんて不敬ですよ。それにエドワード様はまだ不貞してないわ。それに彼にとってこの愛はそんな汚らわしい不貞ではなくて『真実の愛』なのよ、フフフ・・・」
「それでは姫様はあの方にとって何なのですか!」
「仕事上のパートナーよ。人生のパートナーでは決してないわ」
「姫様、それでよいのですか?」
「よいも何も、王侯貴族の結婚なんてそんなものでしょう?愛を期待するのは高望みなのよ」
ミッシェルとジャンは、敬愛するユージェニーの諦めきった言葉を聞いて心底悲しそうだった。
「それにしてもステファニー様の旦那様がかわいそうね。2人の間にお子さんも生まれたばかりなのに、エドワード様は2人をかき乱して本当に罪作りな方。ステファニー様の旦那様は今にも殺しそうな目でエドワード様を見返していたわ」
「私が夫でも睨み返したと思います」
「あらジャン、寡黙かと思ったら、意外と情熱的なのね」
「そういう問題では・・・」
「そうそう、これからお兄様に会うから侍女の服を用意して頂戴」
それを聞いてミッシェルとジャンは一瞬驚いたが、すぐに目的を理解した。ジャンが室外に出た後、ミッシェルはユージェニーの着替えを手伝った。ユージェニーがルイと会ってもルクス王国の利益に反することを話すわけではなかったが、エドワードだけでなく、彼の臣下にもユージェニーはこの会合を秘密にしたかった。
侍女に変装したユージェニーは、ミッシェルと共にルイの客室を訪れた。ミッシェルは客室を出て外で控え、その他の使用人達も人払いして兄妹は2人だけで話をすることができた。
「ユージェニー、あの男は式典中に元婚約者を見ていたな」
「あら、お兄様も気づきましたの?ミッシェルとジャンも気付いて随分憤ってましたわ」
「そなたは冷静なのだな。構わないのか?」
「ええ、人の気持ちはどうしようもありません。でもエドワード様は実際に不貞をしているわけではありません。彼が私に誠実である以上、私は仕事上のパートナーとしてエドワード様に寄り添うだけです」
「その『仕事』には、後継ぎ作りも入っているぞ。辛くないか?」
「王侯貴族の結婚など、そのようなものでしょう?」
「でも私は妃を愛しているぞ」
「お兄様の結婚が幸福だったのです」
「そなたの結婚生活が幸福でなさそうなのは兄として辛い。もしどうしても我慢できなくなったら、私がなんとかするから必ず言うのだぞ」
「大丈夫です。心配しないで、お兄様」
ユージェニーは、流石に兄にも閨の生々しい不満を言う気にはなれなかったし、エドワードが側妃を娶ることになるようにこっそり避妊していることも話すつもりはなかった。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。


お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる