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34.夫婦関係

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翌日、ステファニーはブライアンに頼まれたことをエイダンにお願いしようと執務室にやってきた。

「旦那様、お願いがあります。エスター様をここで旦那様と一緒に住まわせてあげて下さい」

「な、何を言っている?!エスターが君と一緒に住めるわけないだろう?両親もエスターと同じ家に住むのを嫌がっていてやっと別居できたんだ。」

「長年、夫婦同然に過ごしてきたエスター様にひどい言い草ではないですか?」

エイダンはぐっと唸っただけで何も言えなかったが、胸にちくりと痛みを感じていた。その感情が何なのか、エイダンは自分でもわからなかった。

「私は別邸に行きます」

「正妻の君を別邸に追いやるような真似を義父上が許すはずがない。誰にこんなことを言うように頼まれた?エスターか?!」

エイダンはステファニーの両肩を掴んで問い詰めた。その鬼気迫る様子にステファニーは怯えた。

「い、いえ、ブライアン様がエスター様を心配しているのです」

「ブライアンが?!それでもだめだ。君は私と本邸に住んでもらう。エスターは私と結婚できないことは理解していたし、君が嫁いでくることも了承して別邸に移ることも納得していた」

「本当に納得していたのでしょうか?エスター様は長年旦那様と夫婦同様に過ごしてきて後継ぎも産んだのですよ。なのに身分差で結婚できないから、別の女性と結婚すると今更言われてきっと不満に思っています。納得したと言っても、それは渋々納得するしかなかっただけではないですか?」

夫の愛人の肩を持つ妻が夫を愛していないことは明白だ。その事実にエイダンは無自覚にも動揺していた。

「君はそんなに私と同じ家に住むのが嫌なのか?!白い結婚でも君は私の妻だ!どうして?!」

エイダンはステファニーを抱きしめようと手を伸ばしたが、エイダンの剣幕にステファニーはすっかり怯えてしまっていた。ステファニーは雷に打たれたようにびくっとしてエイダンから離れた。

「嫌っ!触らないで!」

ステファニーは呆然としたエイダンを残して部屋から走り去った。だからエイダンがステファニーの背中に向かって呟いた謝罪の言葉は届かなかった。

ステファニーが涙を流して取り乱しながら父の執務室から出てきたところに、ブライアンが通りかかった。

「どうしたのですか?」

涙を流して取り乱しているステファニーは、ブライアンの庇護欲だけでなく、加虐欲もひどくそそった。

「エスター様の住む場所についてご希望は叶いそうもありません。すみません」

「はぁ・・・予想はついていました。それより何かあったのではないですか?」

「いえ、本当にそれだけです。でも勇気づけられたわ、ありがとう」

ブライアンは、去って行くステファニーの背中を複雑な心境で見つめていた。
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