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26.盛大な結婚式
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エドワードとユージェニーの結婚式と祝宴の夜会には、伯爵家以上の貴族の当主とその配偶者が招待されていたが、エイダンとステファニーはもちろん参加しなかった。というよりもエイダンはステファニーに結婚式と夜会のことを伝えなかった。それでも大々的に祝われる王太子の結婚は領地の田舎でも秘密にはできない。ステファニーはまた精神的に不安定になった。
王都の大聖堂-1年前にステファニーとエイダンも結婚式を密やかに挙げた場所で、各国からの賓客やソヌス王国の王夫妻、ルクス王国の王族や高位貴族も勢ぞろいし、エドワードとユージェニーの結婚式が大々的に行われた。
祭壇の前で新婦を待つエドワードは、お祝い一色のその場の雰囲気とはまるで正反対で、ステファニーのことを思い出して落ち込んでいた。だが、大聖堂の扉が開いてユージェニーが兄王ルイと共に入場してくると、さっと笑顔の仮面に切り替えた。長いバージンロードの先にいたユージェニーと兄ルイはそれに気付かなかった。
ベールを上げて誓いのキスをする時は、エドワードは参列者にキスしたように見える角度でユージェニーの唇の横にさっと一瞬口づけただけだった。ユージェニーの胸の中で不安がもやもやとわいてきたが、『私はこんなに素敵な王太子様と結婚出来て幸せな花嫁なのよ』と考えることにして不安に蓋をした。だが、その後の結婚生活でも唇にキスをすることがないとはこの時にはユージェニーは露ほども思わなかった。
結婚式の後は、王都で市民に新婚の王太子夫妻を見せるパレードとなった。パレードではそれぞれ自分側の馬車の窓に張り付いてひたすらにこにことほほ笑んで歓声に応えなければならなかったので、夫婦の会話をする暇はなかった。それどころか、ユージェニーはパレードで初めての恐ろしい体験をすることになった。
民主化過激派が何か企んでいる恐れがあるとして、パレードに通常使う無蓋の馬車ではなく、王太子夫妻は窓の大きな有蓋馬車に乗った。通りでは大勢の人々が王国の旗や手を振って歓声を上げており、そんな心配は杞憂かと思われた。だが、ある一角にパレードが達した時、通り沿いの建物や群衆の中から石や罵声が王太子夫妻の馬車に向かって飛んできた。
「税金で贅沢な結婚式を挙げた王太子に天誅を!」
「飢えている民衆を搾取して王家は贅沢をしている!」
その場にいた騎士達が石を投げたり罵声をあげたりした人々を捕縛しようとしたが、全員は捕らえられず、集まった民衆に動揺を及ぼすのも完全には防げなかった。だが、エドワードはひびの入った窓から笑顔で手を振り続け、馬車を進めさせた。エドワードは窓の外に笑顔を向けながら観衆にわからないようにユージェニーに詫びた。
「不安にさせてすみません。民主化過激派については鋭意対策中です」
「大丈夫です。エドワード様を信じています」
そうは言ったものの、ソヌス王国では民主化運動はあっても王家のパレードに石を投げたり罵声を浴びせたりするほどの過激派はいないので、ユージェニーの不安はぬぐい切れなかった。
王都の大聖堂-1年前にステファニーとエイダンも結婚式を密やかに挙げた場所で、各国からの賓客やソヌス王国の王夫妻、ルクス王国の王族や高位貴族も勢ぞろいし、エドワードとユージェニーの結婚式が大々的に行われた。
祭壇の前で新婦を待つエドワードは、お祝い一色のその場の雰囲気とはまるで正反対で、ステファニーのことを思い出して落ち込んでいた。だが、大聖堂の扉が開いてユージェニーが兄王ルイと共に入場してくると、さっと笑顔の仮面に切り替えた。長いバージンロードの先にいたユージェニーと兄ルイはそれに気付かなかった。
ベールを上げて誓いのキスをする時は、エドワードは参列者にキスしたように見える角度でユージェニーの唇の横にさっと一瞬口づけただけだった。ユージェニーの胸の中で不安がもやもやとわいてきたが、『私はこんなに素敵な王太子様と結婚出来て幸せな花嫁なのよ』と考えることにして不安に蓋をした。だが、その後の結婚生活でも唇にキスをすることがないとはこの時にはユージェニーは露ほども思わなかった。
結婚式の後は、王都で市民に新婚の王太子夫妻を見せるパレードとなった。パレードではそれぞれ自分側の馬車の窓に張り付いてひたすらにこにことほほ笑んで歓声に応えなければならなかったので、夫婦の会話をする暇はなかった。それどころか、ユージェニーはパレードで初めての恐ろしい体験をすることになった。
民主化過激派が何か企んでいる恐れがあるとして、パレードに通常使う無蓋の馬車ではなく、王太子夫妻は窓の大きな有蓋馬車に乗った。通りでは大勢の人々が王国の旗や手を振って歓声を上げており、そんな心配は杞憂かと思われた。だが、ある一角にパレードが達した時、通り沿いの建物や群衆の中から石や罵声が王太子夫妻の馬車に向かって飛んできた。
「税金で贅沢な結婚式を挙げた王太子に天誅を!」
「飢えている民衆を搾取して王家は贅沢をしている!」
その場にいた騎士達が石を投げたり罵声をあげたりした人々を捕縛しようとしたが、全員は捕らえられず、集まった民衆に動揺を及ぼすのも完全には防げなかった。だが、エドワードはひびの入った窓から笑顔で手を振り続け、馬車を進めさせた。エドワードは窓の外に笑顔を向けながら観衆にわからないようにユージェニーに詫びた。
「不安にさせてすみません。民主化過激派については鋭意対策中です」
「大丈夫です。エドワード様を信じています」
そうは言ったものの、ソヌス王国では民主化運動はあっても王家のパレードに石を投げたり罵声を浴びせたりするほどの過激派はいないので、ユージェニーの不安はぬぐい切れなかった。
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