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23.愛人の来襲
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アンヌス伯爵家では、ステファニーはお腹が大きくなって望まない子の存在を大きく感じるようになり、ますます気分が晴れない日々が続いていた。しかも噂好きの侍女達のコソコソ話がしょっちゅう聞こえてきてしまう上に、嫉妬に狂ったエイダンの愛人エスターがエイダンのいない隙に別邸から来襲してステファニーをいびるのだ。
「ねえ、奥様のお腹がもうあんなに大きいのっておかしくない?奥様って旦那様と結婚される前に王太子様と婚約破棄になったのよね?それって純潔を失ったから?」
「私の親戚が王宮で働いているんだけど、奥様は誘拐されて・・・多分強姦されたんだと思うわ。それで純潔を失ったみたい」
「えっ!じゃあ、奥様の子って強姦犯の子なの?!」
「それはないんじゃないの?さすがに旦那様も強姦犯の子を妊娠している女性と結婚するわけないでしょ?」
「じゃあ、旦那様が結婚前に奥様に手を出したの?!婚約破棄の原因だったりして?!」
「もしそうなら、エスター様が嫉妬で狂ってるのも無理はないわね」
わいわい噂話に興じる侍女達の前に機嫌の悪そうなエスターが突然現れた。エスターは噂話の内容もともかく、長年自分がエイダンの事実上の『奥様』だったのにその立場が奪われたのにも頭にきていた。
「誰が嫉妬で狂ってるって?」
「あっ!エスター様!も、申し訳ありません!」
「無駄口叩いてさぼっていたのは見逃してやるから、あの女を連れてきてちょうだい。部屋にいなかったのよ」
「「「はい、かしこまりました!」」」
自室でのんびり座って読書していたステファニーは、半ば無理矢理侍女達に引きずられるようにしてエスターのところに連れて来られた。
「知らないでいるって本当に幸せなのね!」
「何のことでしょう?」
「貴女の元婚約者の王太子様がソヌス王国の王妹ユージェニー様と婚約されたのは知ってた?もう婚約式も終わってあと1年もしないうちに結婚されるそうよ。フフフ、どんな気持ち?」
領地に籠っていると王都の情報はなかなか入ってこない。いや、ステファニーはこんなことを予感してわざと耳を塞いでいたのかもしれない。ステファニーは聞きたくなかった話を無理矢理聞かされてしまって胸が痛くなったが、涙はエスターの前ではこぼせない。
「おめでたいことです」
「強がらなくてもいいのよ?王太子様が結婚したら、貴女は離婚してちょうだい。そうすれば王太子様の愛人になれるでしょ?」
「教会は愛人などどなたにも許しておりません。離婚もめったなことでは許されません」
もちろんそれは建前であって王侯貴族が愛人を秘密裡に囲うことがあった。事実、結婚できなかったエイダンとエスターは内縁の妻と言えば聞こえはいいが、どちらかと言えばエスターの出自から愛人とみなされていた。ただ、王や王太子が愛人を公然と囲うのは教会と対立しかねないし、後継ぎの問題で内乱になったこともあるので、教会との妥協で正妃と結婚後5年以内に子ができない場合の側妃制度ができたのだ。
「それって私への皮肉のつもり?!」
エスターはかっとなってステファニーの頬を叩いた。その衝撃でステファニーは倒れてしまった。そこにエスターとエイダンの息子ブライアンが現れた。
「母上!何をしているのですか!ステファニー様は妊娠中なんですよ!父上に言いつけますよ!」
「ブライアン!貴方までぽっと出のこの女の肩を持つの?!私達がどんなに肩身の狭い思いをしてきたか忘れたの?!」
「だからこそですよ、母上。嫉妬に駆られて冷静でなくなった者は味方を失います」
「・・・なっ!」
ブライアンはてきぱきと侍女達に指示を出して医師を手配し、ステファニーを休ませた。
「ねえ、奥様のお腹がもうあんなに大きいのっておかしくない?奥様って旦那様と結婚される前に王太子様と婚約破棄になったのよね?それって純潔を失ったから?」
「私の親戚が王宮で働いているんだけど、奥様は誘拐されて・・・多分強姦されたんだと思うわ。それで純潔を失ったみたい」
「えっ!じゃあ、奥様の子って強姦犯の子なの?!」
「それはないんじゃないの?さすがに旦那様も強姦犯の子を妊娠している女性と結婚するわけないでしょ?」
「じゃあ、旦那様が結婚前に奥様に手を出したの?!婚約破棄の原因だったりして?!」
「もしそうなら、エスター様が嫉妬で狂ってるのも無理はないわね」
わいわい噂話に興じる侍女達の前に機嫌の悪そうなエスターが突然現れた。エスターは噂話の内容もともかく、長年自分がエイダンの事実上の『奥様』だったのにその立場が奪われたのにも頭にきていた。
「誰が嫉妬で狂ってるって?」
「あっ!エスター様!も、申し訳ありません!」
「無駄口叩いてさぼっていたのは見逃してやるから、あの女を連れてきてちょうだい。部屋にいなかったのよ」
「「「はい、かしこまりました!」」」
自室でのんびり座って読書していたステファニーは、半ば無理矢理侍女達に引きずられるようにしてエスターのところに連れて来られた。
「知らないでいるって本当に幸せなのね!」
「何のことでしょう?」
「貴女の元婚約者の王太子様がソヌス王国の王妹ユージェニー様と婚約されたのは知ってた?もう婚約式も終わってあと1年もしないうちに結婚されるそうよ。フフフ、どんな気持ち?」
領地に籠っていると王都の情報はなかなか入ってこない。いや、ステファニーはこんなことを予感してわざと耳を塞いでいたのかもしれない。ステファニーは聞きたくなかった話を無理矢理聞かされてしまって胸が痛くなったが、涙はエスターの前ではこぼせない。
「おめでたいことです」
「強がらなくてもいいのよ?王太子様が結婚したら、貴女は離婚してちょうだい。そうすれば王太子様の愛人になれるでしょ?」
「教会は愛人などどなたにも許しておりません。離婚もめったなことでは許されません」
もちろんそれは建前であって王侯貴族が愛人を秘密裡に囲うことがあった。事実、結婚できなかったエイダンとエスターは内縁の妻と言えば聞こえはいいが、どちらかと言えばエスターの出自から愛人とみなされていた。ただ、王や王太子が愛人を公然と囲うのは教会と対立しかねないし、後継ぎの問題で内乱になったこともあるので、教会との妥協で正妃と結婚後5年以内に子ができない場合の側妃制度ができたのだ。
「それって私への皮肉のつもり?!」
エスターはかっとなってステファニーの頬を叩いた。その衝撃でステファニーは倒れてしまった。そこにエスターとエイダンの息子ブライアンが現れた。
「母上!何をしているのですか!ステファニー様は妊娠中なんですよ!父上に言いつけますよ!」
「ブライアン!貴方までぽっと出のこの女の肩を持つの?!私達がどんなに肩身の狭い思いをしてきたか忘れたの?!」
「だからこそですよ、母上。嫉妬に駆られて冷静でなくなった者は味方を失います」
「・・・なっ!」
ブライアンはてきぱきと侍女達に指示を出して医師を手配し、ステファニーを休ませた。
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