2 / 85
2.幸せなひと時
しおりを挟む
ルクス王国の唯一の王位継承権保有者かつ王太子エドワードとエスタス公爵令嬢ステファニーは、それぞれ10歳と8歳の時に政略上の理由で婚約した。それでも2人はすぐに打ち解け、愛を育んだ。ともに見目麗しい容貌で相思相愛の2人はお似合いのカップルと評判だった。
ステファニーは週に3回、王宮で未来の王妃のための教育を受け、その後エドワードの都合がつけば王宮内で会っていた。その日も王妃教育の後、エドワードの私室で逢瀬を重ねていた。最も、ルクス王国では婚前の貞淑が重要視されており、2人が婚姻前である以上、最大限の配慮がなされていた。部屋の扉はいつも開いていて、そのすぐ脇には王宮と公爵家の侍女と護衛騎士が控え、室外の扉の横でも複数の近衛騎士が2人を守っていた。
「ステフィー、いよいよ来年だね。待ちきれないよ」
「私もです」
ステファニーは蕩けるような笑顔でエドワードを見つめた。
「婚約10年でやっと結婚できるよ。本当はステファニーが社交界デビューしてすぐに結婚したかったのに」
「今はよほどのことがない限り、15歳で結婚することはありませんから、仕方ありませんわ」
ステファニーが15歳になった2年前、エドワードは結婚を強行しようとしたが、国王と一部の重臣に猛反対され、ステファニーが今の成人年齢である18歳になってから成婚ということになった。エドワードはその反対意見にエスタス公爵家と対立する貴族の政治的陰謀を感じなくもなかった。だが、社交界デビューさえすれば結婚が可能だった昔と違って、今はよほどの例外がない限り男女とも成人年齢の18歳以降に結婚するものだし、陰謀の証拠は見つからなかった。そのよほどの例外をエドワードは認めさせられなかったのだ。
ステファニーがふと窓の外を見ると、日が傾いて空が茜色になりつつあった。
「いけない、もうこんな時間だわ。帰らないと」
「はぁー・・・ステフィーと過ごす時間はあっという間だよ」
「エド、それも来年までの辛抱ですわ」
「うん、ステフィー。愛してるよ」
「私も愛してます、エド」
エドワードは公爵家の馬車が待つ場所までステファニーをエスコートして行き、彼女の額にちゅっとキスをした。2人は名残惜しそうに見つめ合って別れた。まさかそれが婚約者としての最後の逢瀬だとは思わずに・・・
ステファニーは週に3回、王宮で未来の王妃のための教育を受け、その後エドワードの都合がつけば王宮内で会っていた。その日も王妃教育の後、エドワードの私室で逢瀬を重ねていた。最も、ルクス王国では婚前の貞淑が重要視されており、2人が婚姻前である以上、最大限の配慮がなされていた。部屋の扉はいつも開いていて、そのすぐ脇には王宮と公爵家の侍女と護衛騎士が控え、室外の扉の横でも複数の近衛騎士が2人を守っていた。
「ステフィー、いよいよ来年だね。待ちきれないよ」
「私もです」
ステファニーは蕩けるような笑顔でエドワードを見つめた。
「婚約10年でやっと結婚できるよ。本当はステファニーが社交界デビューしてすぐに結婚したかったのに」
「今はよほどのことがない限り、15歳で結婚することはありませんから、仕方ありませんわ」
ステファニーが15歳になった2年前、エドワードは結婚を強行しようとしたが、国王と一部の重臣に猛反対され、ステファニーが今の成人年齢である18歳になってから成婚ということになった。エドワードはその反対意見にエスタス公爵家と対立する貴族の政治的陰謀を感じなくもなかった。だが、社交界デビューさえすれば結婚が可能だった昔と違って、今はよほどの例外がない限り男女とも成人年齢の18歳以降に結婚するものだし、陰謀の証拠は見つからなかった。そのよほどの例外をエドワードは認めさせられなかったのだ。
ステファニーがふと窓の外を見ると、日が傾いて空が茜色になりつつあった。
「いけない、もうこんな時間だわ。帰らないと」
「はぁー・・・ステフィーと過ごす時間はあっという間だよ」
「エド、それも来年までの辛抱ですわ」
「うん、ステフィー。愛してるよ」
「私も愛してます、エド」
エドワードは公爵家の馬車が待つ場所までステファニーをエスコートして行き、彼女の額にちゅっとキスをした。2人は名残惜しそうに見つめ合って別れた。まさかそれが婚約者としての最後の逢瀬だとは思わずに・・・
1
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。


番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる