28 / 36
28.浮気疑惑
しおりを挟む
かわいいミハエルが誕生して数ヶ月。皆、彼に夢中になっていて迂闊なことにラルフの実家の母カタリナの監視が最近おざなりになっていた。カタリナは来月王宮で開催される夜会に参加すると言ってえらくご機嫌でゴットフリートが怪しいと思っていたところ、有名オートクチュールメゾンからノスティツ子爵家に目の玉が飛び出るような額の請求書が届いた。このオートクチュールメゾンは、カタリナがラルフの結婚式の時に着たドレスを注文した最高級店だったが、それ以前に注文したことがなかったので、注文を受け付けないでほしいとラルフ頼んだ店のリストから迂闊なことに漏れていた。
ラルフの持参金やタウンハウスの売却金の残りから、ゴットフリートが今回のドレス代を支払うことはできた。でもまだラルフもその資金を共同管理していたので、ラルフも知るところとなった。もちろん、ラルフ達はこれ以降、注文を受け付けないでくれと店に頼み、カタリナはこってり絞られた。もっとも打たれ強い彼女に効いたかどうかは微妙であるが。
それからまた数ヶ月過ぎて、ゾフィーが出産してから既に1年近く経った。ミハエルはハイハイするようになり、日々成長していた。
その日、ゾフィーはミハエルを乳母に任せて、貴族街の商業地区に侍女のマイカと護衛とともに久しぶりに買い物に行こうとしていた。屋敷に商人を呼ぶこともできたが、ミハエルのもうすぐ1歳のお祝いにかわいい服を買おうと気分転換に外出したのだった。
馬車が商業地区に差し掛かった時、路上にラルフがいるのが見えた。ゾフィーが声をかけようと馬車を停めさせようとしたその時、彼の隣に同年代ぐらいの貴族らしき女性もいるのを見つけた。一瞬声をかけるか躊躇した間に2人はすぐそばのカフェに入って行ってしまった。ゾフィーは妻なのだから、堂々と声をかけてもいいはずなのに、妙に動揺してしまって結局馬車を停めずに通り過ぎてしまった。
でも彼女が動揺してしまったのも無理はない。ラルフは結婚前、職場と家の往復だけで女っ気は全くなく、それどころか女性の友人もいないと話していた。なのにその女性とラルフがゾフィーの目には親し気に見えたのだ。ゾフィーは買い物を楽しみにしていた気分が吹っ飛んでもやもやした気分だったが、この気持ちが何なのか自分で説明がつかなかった。
「マイカ、あれはラルフだったわよね?あの隣にいた女性は誰かしら?」
「確かにあれは若旦那様でしたが、隣の女性は知らない方でした。でもただの知り合いかせいぜい昔の友人みたいな感じにお見受けしました」
マイカの目にはラルフと隣にいた女性がそれほど親しいように見えなかったのか、それとも女主人の不安を感じ取って忖度してそう言ったのか、ゾフィーには判断がつかなかった。
「今日は貴族街で何か会合があるって言ってなかったかしら?」
「はい、親しくしている他家の後継ぎの方々と昼食をご一緒になるというご予定があったと伺っております」
昼食の時間はとっくに過ぎていて、長話していなければもう会合は終わっていそうな時間だった。その日、ゾフィーは結局気もそぞろで何も買わずに帰宅した。
ラルフの持参金やタウンハウスの売却金の残りから、ゴットフリートが今回のドレス代を支払うことはできた。でもまだラルフもその資金を共同管理していたので、ラルフも知るところとなった。もちろん、ラルフ達はこれ以降、注文を受け付けないでくれと店に頼み、カタリナはこってり絞られた。もっとも打たれ強い彼女に効いたかどうかは微妙であるが。
それからまた数ヶ月過ぎて、ゾフィーが出産してから既に1年近く経った。ミハエルはハイハイするようになり、日々成長していた。
その日、ゾフィーはミハエルを乳母に任せて、貴族街の商業地区に侍女のマイカと護衛とともに久しぶりに買い物に行こうとしていた。屋敷に商人を呼ぶこともできたが、ミハエルのもうすぐ1歳のお祝いにかわいい服を買おうと気分転換に外出したのだった。
馬車が商業地区に差し掛かった時、路上にラルフがいるのが見えた。ゾフィーが声をかけようと馬車を停めさせようとしたその時、彼の隣に同年代ぐらいの貴族らしき女性もいるのを見つけた。一瞬声をかけるか躊躇した間に2人はすぐそばのカフェに入って行ってしまった。ゾフィーは妻なのだから、堂々と声をかけてもいいはずなのに、妙に動揺してしまって結局馬車を停めずに通り過ぎてしまった。
でも彼女が動揺してしまったのも無理はない。ラルフは結婚前、職場と家の往復だけで女っ気は全くなく、それどころか女性の友人もいないと話していた。なのにその女性とラルフがゾフィーの目には親し気に見えたのだ。ゾフィーは買い物を楽しみにしていた気分が吹っ飛んでもやもやした気分だったが、この気持ちが何なのか自分で説明がつかなかった。
「マイカ、あれはラルフだったわよね?あの隣にいた女性は誰かしら?」
「確かにあれは若旦那様でしたが、隣の女性は知らない方でした。でもただの知り合いかせいぜい昔の友人みたいな感じにお見受けしました」
マイカの目にはラルフと隣にいた女性がそれほど親しいように見えなかったのか、それとも女主人の不安を感じ取って忖度してそう言ったのか、ゾフィーには判断がつかなかった。
「今日は貴族街で何か会合があるって言ってなかったかしら?」
「はい、親しくしている他家の後継ぎの方々と昼食をご一緒になるというご予定があったと伺っております」
昼食の時間はとっくに過ぎていて、長話していなければもう会合は終わっていそうな時間だった。その日、ゾフィーは結局気もそぞろで何も買わずに帰宅した。
0
スピンオフ『年下執事が崇める女神~虐げられている男爵夫人を救いたい~』(R18)連載中(本編は完結、番外編を更新中)。
別のスピンオフ『転生令嬢は前世の心中相手に囚われたくない!』も掲載しています(完結済)。
別のスピンオフ『転生令嬢は前世の心中相手に囚われたくない!』も掲載しています(完結済)。
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
婚約解消から5年、再び巡り会いました。
能登原あめ
恋愛
* R18、シリアスなお話です。センシティブな内容が含まれますので、苦手な方はご注意下さい。
私達は結婚するはずだった。
結婚を控えたあの夏、天災により領民が冬を越すのも難しくて――。
婚約を解消して、別々の相手と結婚することになった私達だけど、5年の月日を経て再び巡り合った。
* 話の都合上、お互いに別の人と結婚します。白い結婚ではないので苦手な方はご注意下さい(別の相手との詳細なRシーンはありません)
* 全11話予定
* Rシーンには※つけます。終盤です。
* コメント欄のネタバレ配慮しておりませんのでお気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
ローラ救済のパラレルのお話。↓
『愛する人がいる人と結婚した私は、もう一度やり直す機会が与えられたようです』

腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる