25 / 36
25.穏やかな日常
しおりを挟む
ラルフは結婚式後の1ヶ月で兄ゴットフリートに王宮の仕事を完全に引き継ぎ、退職した。ゴットフリートはずっと家に引きこもっていたから、引継ぎを始めた当初は大変だったが、彼はかつて優秀な学生だったこともあって飲み込みが思ったよりも早く、1ヶ月でほぼ独り立ちで仕事できるようになった。
ラルフは両親の無駄遣いに相変わらず頭を悩ませていたが、ゴットフリートが目を光らせるようになったので、まだましになった。
ノスティツ子爵家のタウンハウスは売却先が決まり、新居も貴族街の端で見つけた。今までのタウンハウスと違って王宮には遠かったので、ラルフ達の両親は文句を言っていたが、文句を言うなら住まわせないとゴットフリートが強気に出て、自己資金を持たない両親は従うしかなく、まだ油断はできないものの、取り敢えずおとなしくなったようだった。
ゾフィーとラルフの間も、まだ壁はあるように思えるものの、少しずつ距離を縮めており、少なくとも敬語で話さなくてもよいようになった。
結婚して3ヶ月が過ぎたある日、ゾフィーは初めて胎動を感じた。
「あっ!」
「ゾフィー、どうした!医者を呼ぼうか?」
「違うの、今、赤ちゃんがお腹を蹴ったのよ!」
「もうそんなことがわかるのか?・・・あの、その、触ってもいいかな?」
「え?どこを?」
「その・・・お腹・・・ごめん、だ、だめだよね?・・・」
しゅんとなったラルフにゾフィーがどうぞと言うと、ラルフは途端にぱぁっと顔を輝かせた。ラルフは手を恐る恐るゾフィーのお腹に近づけると、耳まで真っ赤にしてお腹の上にそっと震える手を乗せた。
「あっ!本当だ!」
「こんなに元気にお腹の中で動き回るなら、男の子かもしれないわね」
それを聞いてラルフはぎくっとした。生まれる子が男の子だったら、ゾフィーが望めば白い結婚でもいいとはラルフは結婚する時に約束した。でも今となってラルフは彼女の身も心も欲しくなってきてしまった。だが、そんなことを思う自分は欲望の塊だとか、色々悩んで悶々とするラルフであった。
ラルフは両親の無駄遣いに相変わらず頭を悩ませていたが、ゴットフリートが目を光らせるようになったので、まだましになった。
ノスティツ子爵家のタウンハウスは売却先が決まり、新居も貴族街の端で見つけた。今までのタウンハウスと違って王宮には遠かったので、ラルフ達の両親は文句を言っていたが、文句を言うなら住まわせないとゴットフリートが強気に出て、自己資金を持たない両親は従うしかなく、まだ油断はできないものの、取り敢えずおとなしくなったようだった。
ゾフィーとラルフの間も、まだ壁はあるように思えるものの、少しずつ距離を縮めており、少なくとも敬語で話さなくてもよいようになった。
結婚して3ヶ月が過ぎたある日、ゾフィーは初めて胎動を感じた。
「あっ!」
「ゾフィー、どうした!医者を呼ぼうか?」
「違うの、今、赤ちゃんがお腹を蹴ったのよ!」
「もうそんなことがわかるのか?・・・あの、その、触ってもいいかな?」
「え?どこを?」
「その・・・お腹・・・ごめん、だ、だめだよね?・・・」
しゅんとなったラルフにゾフィーがどうぞと言うと、ラルフは途端にぱぁっと顔を輝かせた。ラルフは手を恐る恐るゾフィーのお腹に近づけると、耳まで真っ赤にしてお腹の上にそっと震える手を乗せた。
「あっ!本当だ!」
「こんなに元気にお腹の中で動き回るなら、男の子かもしれないわね」
それを聞いてラルフはぎくっとした。生まれる子が男の子だったら、ゾフィーが望めば白い結婚でもいいとはラルフは結婚する時に約束した。でも今となってラルフは彼女の身も心も欲しくなってきてしまった。だが、そんなことを思う自分は欲望の塊だとか、色々悩んで悶々とするラルフであった。
0
スピンオフ『年下執事が崇める女神~虐げられている男爵夫人を救いたい~』(R18)連載中(本編は完結、番外編を更新中)。
別のスピンオフ『転生令嬢は前世の心中相手に囚われたくない!』も掲載しています(完結済)。
別のスピンオフ『転生令嬢は前世の心中相手に囚われたくない!』も掲載しています(完結済)。
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
婚約解消から5年、再び巡り会いました。
能登原あめ
恋愛
* R18、シリアスなお話です。センシティブな内容が含まれますので、苦手な方はご注意下さい。
私達は結婚するはずだった。
結婚を控えたあの夏、天災により領民が冬を越すのも難しくて――。
婚約を解消して、別々の相手と結婚することになった私達だけど、5年の月日を経て再び巡り合った。
* 話の都合上、お互いに別の人と結婚します。白い結婚ではないので苦手な方はご注意下さい(別の相手との詳細なRシーンはありません)
* 全11話予定
* Rシーンには※つけます。終盤です。
* コメント欄のネタバレ配慮しておりませんのでお気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
ローラ救済のパラレルのお話。↓
『愛する人がいる人と結婚した私は、もう一度やり直す機会が与えられたようです』
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。


さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……

【完結】夢見たものは…
伽羅
恋愛
公爵令嬢であるリリアーナは王太子アロイスが好きだったが、彼は恋愛関係にあった伯爵令嬢ルイーズを選んだ。
アロイスを諦めきれないまま、家の為に何処かに嫁がされるのを覚悟していたが、何故か父親はそれをしなかった。
そんな父親を訝しく思っていたが、アロイスの結婚から三年後、父親がある行動に出た。
「みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る」で出てきたガヴェニャック王国の国王の側妃リリアーナの話を掘り下げてみました。
ハッピーエンドではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる