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第2章 前世を思い出す前

7.愛のキューピッド

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 ザンドラもディートリヒシュタイン家の奨学金をもらいながら孤児院からモニカとウルフと同じ商業学校に通っていた。

 ザンドラはアニカと仲良くしていてアニカとウルフの仲が進展するように応援していた。だからウルフが嫌がってもべたべたするモニカを苦々しく思っていた。それでモニカがウルフにくっついて登下校するときは、ザンドラもなるべく2人に付いていくことにしていたが、1学年上のザンドラは下校時2人と会えないことも多かった。

 ある日、孤児院でモニカがウルフの腕に無理矢理抱き着いて色々しゃべっていたのをザンドラは見てしまった。

 「モニカ、いい加減ウルフを解放してあげれば?ウルフだって宿題やりたいと思ってるでしょう?」
 (うわー!まただ!ウルフもウルフだよね。どうしてきっぱり振り切らないんだろう?)

 「宿題だったら、同じクラスの私と一緒にやればいいから、いいの!邪魔しないでくれる?ねえ、お嬢様のために邪魔するの?それとも嫉妬してるの?」
 (何それ?!ブスお嬢アニカの腰巾着、ウザい!それともザンドラもウルフを好きなの?!)

 「嫉妬なんかのわけないでしょ。嫌なのにはっきり言えないナヨナヨ男なんて私の好みじゃない。ただ、迷惑に押しつぶされそうになってるかわいそうな下級生を放っておけなかっただけ」
 (はぁー・・・ちょっと顔がいいからって、こんなウジウジ男が好きってアニカもモニカもおかしいよね)

 「なっ、ナヨナヨ男?!」
 (なっ・・・!ナヨナヨ男ってなんだよ!完全にとばっちりだ!)

 「なっ!な、何を言うの!ウルフはナヨナヨ男じゃないわよっ!」
 (ゆ、許せないっ!ウルフのことをそんな風に言うなんてっ!)

 「ウルフ、何か自分で言うことないの?」
 (あー、めんどクサイ。元はと言えば、この男が元凶なのに何も言わないってどういうこと?ほんとにウジウジしてるわね!)

 「放っておいてくれ」
 (はぁー、モニカもザンドラもいい加減にしてくれないかな)

 ウルフはモニカの腕を振りほどいてその場を去ってしまった。後に残されたのは、呆然としたモニカと少し達成感を持ったザンドラだけだった。

 ザンドラは、どうしようもないじれじれカップルをちょっと助けてやるかと重い腰を上げた。何しろ、あの2人、このままだとおじいさん、おばあさんになるまで進展しなそうだから!

 「ウルフ、ちょっといい?さっきのことだけど・・・」

 「何?お節介はいらないよ」

 「なんでそのぐらいはっきりモニカを拒絶できないの?」

 「なんだかかわいそうで・・・」

 「気持ちがないのに同情で親切にされるほうが残酷だよ」

 「・・・確かにそうかもな・・・」

 「アニカだって誤解してるよ。早く誤解解いて付き合いなさい!お見合いの話がいくつも来てるらしいよ。恋人がいないなら、あのぐらいの家の子なら今時でも政略結婚ありじゃない?」

 「えっ・・・?!いくらなんでもアニカはまだ13歳だよ。お見合いなんて早いんじゃない?!」

 「いいとこのお嬢さんは、今時でも婚約・結婚早いよ」

 「えっ・・・」

 ウルフは明らかにショックを受けた顔をしていた。でも実はお見合いの話は嘘。そのぐらい言ってやらないと、あのウジウジ男は行動を起こさない。

 アニカにお見合いの話は来てないけど、アニカのお父さんは恋人がいないなら、独身でずっと家にいてもいいし、結婚したいなら見合い相手を見繕ってもいいって言っているらしい。

 アニカは13歳になった今でも、孤児院に時々来てザンドラとおしゃべりしたり、子供達の宿題を見たり、バザーの準備を手伝ったりしていた。

 「ザンドラ!会いたかった~!!」

 アニカは孤児院に来てザンドラを見るなり抱き着いた。

 「アニカ、そんな抱き着いたりしてお嬢様らしくないよ~!そう言えば、モニカが今日もまたウルフにべったりくっついてたけど、ウルフは放っておいてくれってモニカを突き放したよ」

 「本当に?やるときはやるのね」

 「うん、まぁ、私が発破かけたからね。ねえ、アニカ、あなたもやるときはやらないと、泥棒猫に宝物を取られちゃうよ」

 「えっ?!」

 アニカは赤くなったり青くなったりと忙しかった。
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