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23.断罪
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事件後、マクシミリアン付きの護衛騎士1人が行方不明になり、3週間後、王都郊外を流れる川で遺体となって見つかった。彼の脇腹には銃創らしき傷があったが、遺体の損傷が激しいせいか、体内から弾丸は見つからなかった。
近くの川岸を捜査したところ、騎士団から彼に支給された剣と銃、皮袋に入った封筒が見つかった。封筒に入っていた手紙は少し濡れていて判読がところどころ難しかったが、王妃の侍女をしている恋人に宛てた遺書と彼の主人に宛てた謝罪だった。
恋人には、先立つことを詫びて幸せを祈ること、せめてものお詫びに金貨を贈ると書いてあったが、金貨は遺体のそばでは見つからなかった。
主人宛の手紙には受取人の名前が書かれていなかったが、マクシミリアン付きの護衛騎士の主はマクシミリアンに決まっている。『敬愛する我が主』には『作戦』の失敗を詫び、王太子になることを祈っていると書いてあった。
ヴィルヘルムをかばって怪我を負った護衛騎士の体内から取り出された銃弾は、施条痕によって遺体で見つかったマクシミリアンの護衛騎士の銃から発射されたものと判明した。
その護衛騎士の恋人である王妃の侍女は王宮敷地内の使用人棟に私室を持っており、そこから同日の捜査でかなりの額の金貨が見つかった。その量は、一介の侍女が持つにはあまりにも多かった。
マクシミリアンの護衛騎士の遺体が見つかった翌日、ディアナはフリードリヒの執務室に呼び出されたが、てっきりルードヴィヒの養子縁組の話だと思って執務室に向かった。
「王妃よ。余はそなたに落胆した。いくらヴィルヘルムがそなたの実子ではないとは言え、殺そうとするとまでは思わなかった」
「いったい何のことでしょうか?!」
「調べはついている。そなたは、あの怪しいフェアラート男爵令嬢アナと二度も密会していた。そなたが余に持ち掛けた養子縁組の話も男爵令嬢からもたらされたものだな?」
「…っ!ご存知だったのですか!」
「そなたは、ルードヴィヒを養子縁組するとフェアラート男爵令嬢と約束し、その交換条件として彼女にヴィルヘルムを亡き者にさせる計画をもちかけた」
「そんなことはしておりません!」
「そなたの侍女の部屋から大量の金貨が見つかった。実行犯の報酬を預かっていたらしい」
「彼女がそんなことをするはずはありません!彼女は王家に忠実です」
その侍女は前日に私室から金貨が見つかって以来、拘束されていたが、ディアナは執務室に来るまでそのことはおろか、自らも疑われていることを知らなかった。
「そなたがヴィルヘルム殺害計画でマクシミリアンと共謀した証拠も出てきた。マクシミリアンの護衛騎士が罪を認める遺書を残して死んでいるのが見つかった。金貨を持っていたそなたの侍女は彼の恋人だった」
「そ、そんなはずがありません!マクシミリアンがそんな陰謀を実行できるような精神状態でないことは陛下もご存知でしょう?!私だって、いくら生さぬ仲の親子でもヴィルヘルムを殺そうだなんてしておりません!」
ディアナは悲痛な面持ちで訴えた。
王族暗殺は未遂に終わったとしても、直接手を下していない黒幕まで極刑になる。たとえその人物が王族でも処刑されることになる。それを思い出したディアナは真っ青になった。
裁判が開かれて判決が出るまでディアナとマクシミリアンは北の塔に、ディアナの侍女は重罪人の入る牢に監禁されることになった。ディアナとユリアはマクシミリアンの禁断症状が悪化するのではないかと心配したが、今度は監禁中も阿片中毒の治療をマクシミリアンは受けられることになった。
近くの川岸を捜査したところ、騎士団から彼に支給された剣と銃、皮袋に入った封筒が見つかった。封筒に入っていた手紙は少し濡れていて判読がところどころ難しかったが、王妃の侍女をしている恋人に宛てた遺書と彼の主人に宛てた謝罪だった。
恋人には、先立つことを詫びて幸せを祈ること、せめてものお詫びに金貨を贈ると書いてあったが、金貨は遺体のそばでは見つからなかった。
主人宛の手紙には受取人の名前が書かれていなかったが、マクシミリアン付きの護衛騎士の主はマクシミリアンに決まっている。『敬愛する我が主』には『作戦』の失敗を詫び、王太子になることを祈っていると書いてあった。
ヴィルヘルムをかばって怪我を負った護衛騎士の体内から取り出された銃弾は、施条痕によって遺体で見つかったマクシミリアンの護衛騎士の銃から発射されたものと判明した。
その護衛騎士の恋人である王妃の侍女は王宮敷地内の使用人棟に私室を持っており、そこから同日の捜査でかなりの額の金貨が見つかった。その量は、一介の侍女が持つにはあまりにも多かった。
マクシミリアンの護衛騎士の遺体が見つかった翌日、ディアナはフリードリヒの執務室に呼び出されたが、てっきりルードヴィヒの養子縁組の話だと思って執務室に向かった。
「王妃よ。余はそなたに落胆した。いくらヴィルヘルムがそなたの実子ではないとは言え、殺そうとするとまでは思わなかった」
「いったい何のことでしょうか?!」
「調べはついている。そなたは、あの怪しいフェアラート男爵令嬢アナと二度も密会していた。そなたが余に持ち掛けた養子縁組の話も男爵令嬢からもたらされたものだな?」
「…っ!ご存知だったのですか!」
「そなたは、ルードヴィヒを養子縁組するとフェアラート男爵令嬢と約束し、その交換条件として彼女にヴィルヘルムを亡き者にさせる計画をもちかけた」
「そんなことはしておりません!」
「そなたの侍女の部屋から大量の金貨が見つかった。実行犯の報酬を預かっていたらしい」
「彼女がそんなことをするはずはありません!彼女は王家に忠実です」
その侍女は前日に私室から金貨が見つかって以来、拘束されていたが、ディアナは執務室に来るまでそのことはおろか、自らも疑われていることを知らなかった。
「そなたがヴィルヘルム殺害計画でマクシミリアンと共謀した証拠も出てきた。マクシミリアンの護衛騎士が罪を認める遺書を残して死んでいるのが見つかった。金貨を持っていたそなたの侍女は彼の恋人だった」
「そ、そんなはずがありません!マクシミリアンがそんな陰謀を実行できるような精神状態でないことは陛下もご存知でしょう?!私だって、いくら生さぬ仲の親子でもヴィルヘルムを殺そうだなんてしておりません!」
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王族暗殺は未遂に終わったとしても、直接手を下していない黒幕まで極刑になる。たとえその人物が王族でも処刑されることになる。それを思い出したディアナは真っ青になった。
裁判が開かれて判決が出るまでディアナとマクシミリアンは北の塔に、ディアナの侍女は重罪人の入る牢に監禁されることになった。ディアナとユリアはマクシミリアンの禁断症状が悪化するのではないかと心配したが、今度は監禁中も阿片中毒の治療をマクシミリアンは受けられることになった。
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