17 / 33
17.真夜中の別れ
しおりを挟む
マクシミリアンが北の塔から解放されてから数ヶ月が経ち、ユリアが父から得た猶予期間が残り少なくなった。相変わらず面会謝絶は続いており、ユリアは公爵家の諜報員からマクシミリアンの状態について知らされていたが、会うことは叶っていない。
阿片中毒の症状はゆっくりながらも改善しつつあり、マクシミリアンはおむつをしなくても排泄に失敗することは少なくなった。でもまだ突然笑いだしたりして完全に正気とは言えず、残り僅かな期間で婚約続行の許しが得られそうな状態にはなりそうもない。
マクシミリアンは、調子がよい時は日中も寝台でウトウトしているので、夜も眠りが浅い。
「……ックス。マックス」
誰かが呼ぶ声が聞こえ、マクシミリアンは目が覚めた。
「……誰?」
「私、アナよ。よく聞いて。貴方の面会謝絶が解けても、私は多分もう貴方に会いに来れない」
マクシミリアンの寝台の脇には、男装姿のアナが立っていた。
「どうして?」
「私達の関係をよく思わない人達のせいよ」
「ヤダ!ヤダ!ヤダ!アナが来なくちゃ阿片を吸えない!早くちょうだい!ちょ………んぐぐぐ」
マクシミリアンはパニックになりかけた。アナは急いでマクシミリアンの口を塞いだ。
「シーッ!静かにして!誰か来たら私が捕まっちゃうわ」
アナは持ってきた布袋をマクシミリアンに渡した。中には吸引道具と阿片が入っていた。
「貴方が欲しがってたものよ。ちゃんとここに隠しておくのよ」
アナがナイトテーブルをずらして敷物をめくると、床下収納の扉が現れた。
「いっぺんにたくさん吸わないで。1日に吸う量は守ってね。吸うのは夜中だけにして。吸った後は窓を開けて換気すること。わかった?」
「うん…」
「そうしないとすぐに見つかって取り上げられるからね。注意するのよ」
アナはマクシミリアンの頭を抱えて唇を重ね、舌を割り入れて絡めた。
「んん…んん…はぁ……ねぇ、また一緒に寝よう?来て」
「だめよ。長居は危険なの。元気でね、さようなら」
アナにはマクシミリアンが今や性的に何もできないことはわかっていたが、それでもいい歳をしておむつをしなくてはいけないような男と同衾はゴメンだった。
阿片中毒の症状はゆっくりながらも改善しつつあり、マクシミリアンはおむつをしなくても排泄に失敗することは少なくなった。でもまだ突然笑いだしたりして完全に正気とは言えず、残り僅かな期間で婚約続行の許しが得られそうな状態にはなりそうもない。
マクシミリアンは、調子がよい時は日中も寝台でウトウトしているので、夜も眠りが浅い。
「……ックス。マックス」
誰かが呼ぶ声が聞こえ、マクシミリアンは目が覚めた。
「……誰?」
「私、アナよ。よく聞いて。貴方の面会謝絶が解けても、私は多分もう貴方に会いに来れない」
マクシミリアンの寝台の脇には、男装姿のアナが立っていた。
「どうして?」
「私達の関係をよく思わない人達のせいよ」
「ヤダ!ヤダ!ヤダ!アナが来なくちゃ阿片を吸えない!早くちょうだい!ちょ………んぐぐぐ」
マクシミリアンはパニックになりかけた。アナは急いでマクシミリアンの口を塞いだ。
「シーッ!静かにして!誰か来たら私が捕まっちゃうわ」
アナは持ってきた布袋をマクシミリアンに渡した。中には吸引道具と阿片が入っていた。
「貴方が欲しがってたものよ。ちゃんとここに隠しておくのよ」
アナがナイトテーブルをずらして敷物をめくると、床下収納の扉が現れた。
「いっぺんにたくさん吸わないで。1日に吸う量は守ってね。吸うのは夜中だけにして。吸った後は窓を開けて換気すること。わかった?」
「うん…」
「そうしないとすぐに見つかって取り上げられるからね。注意するのよ」
アナはマクシミリアンの頭を抱えて唇を重ね、舌を割り入れて絡めた。
「んん…んん…はぁ……ねぇ、また一緒に寝よう?来て」
「だめよ。長居は危険なの。元気でね、さようなら」
アナにはマクシミリアンが今や性的に何もできないことはわかっていたが、それでもいい歳をしておむつをしなくてはいけないような男と同衾はゴメンだった。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
転生令嬢は前世の心中相手に囚われたくない!
田鶴
恋愛
伯爵令嬢アニカには、約100年前のコーブルク公爵家の侍女アンネとしての前世の記憶がある。アンネは、当時の公爵家嫡男ルドルフと恋仲だったが、身分差のため結婚を反対され、ヤンデレ化したルドルフに毒で無理心中させられてしまったのだ。ヤンデレルドルフが転生していたら、やっぱりヤンデレだよね?今世では、そんな男に惚れないし、惚れられない!だから今世ではまともな男性と素敵な恋愛をするぞー!と思ったら、こんな身近にルドルフの転生者らしきヤツが!!ああ、めくるめく恋愛は今世でも成就しないのっ?!
アルファポリス、小説家になろう、ムーンライトノベルズ、カクヨムに掲載している『始まりは偽装デキ婚から』(完結済み)と同じ世界の約100年後の話です。
前作で不幸な死に方をしたアンネとルドルフ(特にアンネ!)を救ってあげたくて今世で幸せになる話を書きました。
前作を読んでいなくても本作品を楽しめるように書いていますが、前作も読んでいただけると本作品をもっと楽しめるかと思いますので、前作も読んでいただけるとうれしいです!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/768272089/741700187
作中の固有名詞は実在のものと無関係です。
*小説家になろうとカクヨムでも投稿しています。
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
断頭台のロクサーナ
さくたろう
恋愛
大陸の王国で巻き起こる、革命に至る物語。
ロクサーナことロキシーはある日突然、別の世界の自分を夢見た。自分が首を切られて死んだ女王だという夢を。
双子と信じていた妹のモニカこそが王家の血を引いているというのに、それに嫉妬し、彼女を憎み抜いて、出自を偽り女王となった。だが結局は愛する婚約者も王位も全て奪われ、呪いの言葉を吐きながら死んだ史上最低の悪女、ロクサーナこそが、自分なのだという忌まわしい記憶だ。
ロクサーナが死ぬのは17歳のはず。ロキシーは12歳。時間が戻ったとしか思えない。だが以前の世界と違うのは、ロキシーはすでに生まれた家を追い出されていて、厳しくも優しい養母と、慕ってくれる義理の弟がいることだ。
おまけに以前の世界では一方的に恋をして無理矢理婚約を結び、憎まれていたはずの婚約者は妙に優しい。
恋で人生狂ったかつての苦い思い出があるから、二度と恋なんてしたくないのに、怒涛の恋愛に巻き込まれていく。
※ 以前公開していた「今世こそ負けませんわ!」という物語の再投稿です。主人公二人の名前を変えていますが、内容は概ね同じになっています。
※小説家になろう様でも公開しています。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
始まりは偽装デキ婚から【R18】
田鶴
恋愛
シュタインベルク王国の三大公爵家に数えられるコーブルク家の嫡男ルドルフが結婚直前に侍女と心中してしまった。後に残されたのは身重の婚約者ゾフィー。実は彼女は婚約破棄も考えられるほど婚約者と仲が悪化していたのに父親の圧力に負けて婚約者に媚薬を盛って関係を持ったのだった。ゾフィーとルドルフの両親達は、悲しみにくれるゾフィーの意思はそっちのけで、彼女のお腹が大きくなる前に公爵家の新たな後継ぎと結婚させて子供の父親となってもらおうと奔走するが、その過程で様々な試練がゾフィーと新しい婚約者に降りかかる。
最初11話ぐらいまでは暗い展開ですが、途中から微甘な恋愛モードでハッピーエンドはお約束です。
架空の王国が舞台ですが、転生や魔法はありません。
R18シーンのある話のタイトルには*をつけていますが、最初と最後の方だけです。結構がっつり表現していますので、抵抗のある方は*がついている話を飛ばして読んで下さい。
作中の人名、地名等は実在のものと一致することがあっても無関係です。
初投稿作品ですので、色々不備な点があるかと思いますが、大きな目で見ていただけるとうれしいです。
同じ作品のR18版をムーンライトノベルズ、エブリスタ、R15版を小説家になろうとカクヨムに掲載しています。
他サイト転載の折にちょこちょこと訂正をしておりますが、大きな変更はありません。
新作で少し不都合が出てきてしまったので、ラルフとゴットフリート兄弟の父の名前をフリードリヒからフランツに変えます。(2023/11/11)
本作で心中してしまったルドルフとアンネの転生後の話『転生令嬢は前世の心中相手に囚われたくない!』も掲載しています:
https://www.alphapolis.co.jp/novel/768272089/685719048
本作第20~22話ぐらいに登場するラムベルク男爵アドルフ、妻テレザ、男爵家の執事ステファンを主人公にした番外編『年下執事が崇める女神~虐げられている男爵夫人を救いたい~』(R18です!)を掲載しています。
がっつりR18に抵抗のない方はぜひそちらも読んでいただけるとうれしいです:
https://www.alphapolis.co.jp/novel/768272089/171743580
【R18】水面に映る月影は――出戻り姫と銀の騎士
無憂
恋愛
和平のために、隣国の大公に嫁いでいた末姫が、未亡人になって帰国した。わずか十二歳の妹を四十も年上の大公に嫁がせ、国のために犠牲を強いたことに自責の念を抱く王太子は、今度こそ幸福な結婚をと、信頼する側近の騎士に降嫁させようと考える。だが、騎士にはすでに生涯を誓った相手がいた。
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる