42 / 44
41.人工授精(*)(★)
しおりを挟む
自慰が話題の中心となります。
------
フェルディナントとレオポルティーナは、ロプコヴィッツ侯爵家の侍医ドミニクの次の定期健診の時、精液をレオポルティーナの膣に人工的に注入する相談をした。この計画は義父にはもちろん内緒で、ドミニクも秘密を守ってくれる。
2人がお互いの見ていない所で精液の採取と注入をすることを希望したので、ドミニクが配慮して共通の注意事項以外は各自単独でドミニクに相談することになった。
最初にドミニクと2人きりで話したのは、フェルディナントだ。
「フェルディナント様はマスターベーションをされたことがありますよね」
「へっ?!ゴホゴホッ!」
ドミニクにいきなり自慰のことを持ち出されてフェルディナントは焦ってむせってしまった。
「恥ずかしがることはありませんよ。教会はマスターベーションを快楽だけを求めるものだと言って悪とみなしていますけど、性欲は生理現象なんです。相手がいない時にムラムラくれば、自分で処理する。合理的ではないですか」
「た、確かに…」
「それはともかく、閨の前は最低2日間、最大5日、性交もマスターベーションも禁止です。そのぐらい大丈夫ですね?」
「も、もちろんです」
「精液を採取する前、できれば陰茎と手を洗って清潔な状態で自慰を始めて下さい。射精しそうになったら、この容器に亀頭を入れて射精して下さい」
そう言ってドミニクが見せたのはガラス製の小さな漏斗であった。その漏斗を針の外した注射器に差し込んだまま、射精して精液を注射器に移す。別のガラス容器に射精して精液を漏斗で注射器に移してもいいのだが、ロスが多くなりそうなので、漏斗に直接精液を注ぐ。
「できれば注射器と漏斗を使用直前に熱湯で殺菌して人肌以下の温度に冷めるまで待つといいのですが、閣下に内緒な以上、難しいかと思います。とりあえず清潔にさえしておけば大丈夫です」
色々聞いたフェルディナントは、いざその時に勃起して射精できるのか自信がなくなった。フェルディナントは応接室から出て次の間で待っていたレオポルティーナを呼んだが、彼女に自分の不安を必死に見せないようにした。
レオポルティーナがドミニクの待つ応接室に入ると、ドミニクはフェルディナントと同じ質問から始めた。
「ご自分で注射器を膣に入れるとおっしゃっていますが…自慰されたことはおありですか?」
「『じい』?」
「ああ、教会公認の閨の授業では自慰はタブーのテーマでしたね。自らの性器を愛撫して気持ちよくすることです」
「そ、そんなことある訳!」
『そうですよね』と言ってドミニクが出してきたのは、レオポルティーナも見たことのある閨の教本だった。
「この本は奥様もご覧になられたことはあるはずです。この絵のここに注射器を入れます。でもその前に入浴して手と局部を清潔にしていただきます」
ドミニクはそう言って女陰を描いた図の膣の部分を指さし、実際の注射器を見せた。レオポルティーナは、こんな物が自分の中に入るのかと思うと怖気づいてしまった。
「この注射器は大抵の男性の勃起した性器よりも小さいです。かと言っていきなり膣に入れたら痛いはずです」
ドミニクの記憶では、フェルディナントの陰茎は勃起していても注射器よりも短いが、ドミニクは敢えてそんな真実は伝えなかった。
「性交する時は事前に愛撫して膣が自然に潤ってから陰茎を挿入します。そうでなければ、この香油を塗って人工的に滑りをよくしてから挿入します。お二人の場合は…レオポルティーナ様がご自分で注射器を挿入することになっていますので、ご自分で愛撫するか、香油を中に塗っていただくことになります。愛撫するとしたら、この図のここを指の腹で優しく気持ちよくなるまでマッサージして下さい」
「あ、愛撫?!そんなはしたないこと、できません!」
「はしたなくなどありませんよ。性欲は悪ではありません。女性にだって性欲があっていいんです。でも教会が自慰を堕落と考えているから、女性は自慰を恥ずかしいことと考えてしまいます。でもムラムラしたら内緒でここを愛撫して気持ちよくする方もいらっしゃるんですよ」
教本の図のクリトリスを描いた部分にドミニクは指を置いて動かして見せた。でもレオポルティーナは、普通の貴族令嬢と同じように閨の授業で絵を見せられて後は『旦那様にお任せ』としか習っておらず、性体験もないので、女性も自分で性器を愛撫することがあるのかと驚いた。それに一般的な保守的な宗教教育を受けている身としては、自慰は快楽だけを追求する、とんでもなく背徳的な悪い事のように感じてしまう。
「それでは、ご自分で膣の中にこの香油を塗っていただくしかありませんね」
レオポルティーナは、香油の瓶を受け取ってじっと見ているだけでドミニクに返事しなかった。
「本当だったら私が香油を塗って注入して差し上げてもいいのですが、閣下に内密な以上、閨の夜にご夫婦の寝室に入る訳に参りません。この注射器と香油を練習用に余分にお渡ししておきます。香油を塗って注射器を挿入する練習をなさっておいて下さい」
そう言われて無言で頷いたレオポルティーナだったが、眺めるだけで怖気づいてしまって結局次の閨の日まで挿入の練習はできなかった。
次の閨でフェルディナントは、自室で自慰をして出した精液を注射器に入れてレオポルティーナに渡した。
「ごめんね、ティーナ…情けない思いさせて…」
「今更謝らないで」
「わかった…終わったら内扉をノックして」
義父の手前、レオポルティーナとフェルディナントは精液の注入が終わったら朝まで夫婦の寝室で一緒に眠ることにしている。
フェルディナントが内扉の向こうに消えた後、レオポルティーナは白い液体の入った注射器を手に取ってじっと見つめた。
(これを自分の中に入れるの…?!怖いわ)
未だ処女のレオポルティーナにとって異物を膣の中に入れるのは怖い。かと言って自分で愛撫したり、中に指を入れて香油を塗ったりするのも抵抗がある。
レオポルティーナは、ドミニクの忠告を無視して注射器をエイヤと自分の膣の中に差し込もうとした。
「い、痛っ!」
レオポルティーナは、フーフーと息を吸って吐いて痛みをやり過ごした。その後、恐る恐る注射器を膣の中へ沈めていこうとしたが、三分の一程入れた所でそれ以上入れるのが怖くなってしまった。仕方なく、それで注射器を押して精液を注入したが、浅い所に入った精液は実らなかった。
その上、注射器で膣壁を傷つけてしまったようで、閨の後の数日間、局所の痛みで寝込む羽目になってしまった。
------
この人工授精の方法は、もちろん現代の医療知識からすれば非論理的で非効率も甚だしいものですが、この世界のこの時代の医療知識での精一杯の方法という設定です。
------
フェルディナントとレオポルティーナは、ロプコヴィッツ侯爵家の侍医ドミニクの次の定期健診の時、精液をレオポルティーナの膣に人工的に注入する相談をした。この計画は義父にはもちろん内緒で、ドミニクも秘密を守ってくれる。
2人がお互いの見ていない所で精液の採取と注入をすることを希望したので、ドミニクが配慮して共通の注意事項以外は各自単独でドミニクに相談することになった。
最初にドミニクと2人きりで話したのは、フェルディナントだ。
「フェルディナント様はマスターベーションをされたことがありますよね」
「へっ?!ゴホゴホッ!」
ドミニクにいきなり自慰のことを持ち出されてフェルディナントは焦ってむせってしまった。
「恥ずかしがることはありませんよ。教会はマスターベーションを快楽だけを求めるものだと言って悪とみなしていますけど、性欲は生理現象なんです。相手がいない時にムラムラくれば、自分で処理する。合理的ではないですか」
「た、確かに…」
「それはともかく、閨の前は最低2日間、最大5日、性交もマスターベーションも禁止です。そのぐらい大丈夫ですね?」
「も、もちろんです」
「精液を採取する前、できれば陰茎と手を洗って清潔な状態で自慰を始めて下さい。射精しそうになったら、この容器に亀頭を入れて射精して下さい」
そう言ってドミニクが見せたのはガラス製の小さな漏斗であった。その漏斗を針の外した注射器に差し込んだまま、射精して精液を注射器に移す。別のガラス容器に射精して精液を漏斗で注射器に移してもいいのだが、ロスが多くなりそうなので、漏斗に直接精液を注ぐ。
「できれば注射器と漏斗を使用直前に熱湯で殺菌して人肌以下の温度に冷めるまで待つといいのですが、閣下に内緒な以上、難しいかと思います。とりあえず清潔にさえしておけば大丈夫です」
色々聞いたフェルディナントは、いざその時に勃起して射精できるのか自信がなくなった。フェルディナントは応接室から出て次の間で待っていたレオポルティーナを呼んだが、彼女に自分の不安を必死に見せないようにした。
レオポルティーナがドミニクの待つ応接室に入ると、ドミニクはフェルディナントと同じ質問から始めた。
「ご自分で注射器を膣に入れるとおっしゃっていますが…自慰されたことはおありですか?」
「『じい』?」
「ああ、教会公認の閨の授業では自慰はタブーのテーマでしたね。自らの性器を愛撫して気持ちよくすることです」
「そ、そんなことある訳!」
『そうですよね』と言ってドミニクが出してきたのは、レオポルティーナも見たことのある閨の教本だった。
「この本は奥様もご覧になられたことはあるはずです。この絵のここに注射器を入れます。でもその前に入浴して手と局部を清潔にしていただきます」
ドミニクはそう言って女陰を描いた図の膣の部分を指さし、実際の注射器を見せた。レオポルティーナは、こんな物が自分の中に入るのかと思うと怖気づいてしまった。
「この注射器は大抵の男性の勃起した性器よりも小さいです。かと言っていきなり膣に入れたら痛いはずです」
ドミニクの記憶では、フェルディナントの陰茎は勃起していても注射器よりも短いが、ドミニクは敢えてそんな真実は伝えなかった。
「性交する時は事前に愛撫して膣が自然に潤ってから陰茎を挿入します。そうでなければ、この香油を塗って人工的に滑りをよくしてから挿入します。お二人の場合は…レオポルティーナ様がご自分で注射器を挿入することになっていますので、ご自分で愛撫するか、香油を中に塗っていただくことになります。愛撫するとしたら、この図のここを指の腹で優しく気持ちよくなるまでマッサージして下さい」
「あ、愛撫?!そんなはしたないこと、できません!」
「はしたなくなどありませんよ。性欲は悪ではありません。女性にだって性欲があっていいんです。でも教会が自慰を堕落と考えているから、女性は自慰を恥ずかしいことと考えてしまいます。でもムラムラしたら内緒でここを愛撫して気持ちよくする方もいらっしゃるんですよ」
教本の図のクリトリスを描いた部分にドミニクは指を置いて動かして見せた。でもレオポルティーナは、普通の貴族令嬢と同じように閨の授業で絵を見せられて後は『旦那様にお任せ』としか習っておらず、性体験もないので、女性も自分で性器を愛撫することがあるのかと驚いた。それに一般的な保守的な宗教教育を受けている身としては、自慰は快楽だけを追求する、とんでもなく背徳的な悪い事のように感じてしまう。
「それでは、ご自分で膣の中にこの香油を塗っていただくしかありませんね」
レオポルティーナは、香油の瓶を受け取ってじっと見ているだけでドミニクに返事しなかった。
「本当だったら私が香油を塗って注入して差し上げてもいいのですが、閣下に内密な以上、閨の夜にご夫婦の寝室に入る訳に参りません。この注射器と香油を練習用に余分にお渡ししておきます。香油を塗って注射器を挿入する練習をなさっておいて下さい」
そう言われて無言で頷いたレオポルティーナだったが、眺めるだけで怖気づいてしまって結局次の閨の日まで挿入の練習はできなかった。
次の閨でフェルディナントは、自室で自慰をして出した精液を注射器に入れてレオポルティーナに渡した。
「ごめんね、ティーナ…情けない思いさせて…」
「今更謝らないで」
「わかった…終わったら内扉をノックして」
義父の手前、レオポルティーナとフェルディナントは精液の注入が終わったら朝まで夫婦の寝室で一緒に眠ることにしている。
フェルディナントが内扉の向こうに消えた後、レオポルティーナは白い液体の入った注射器を手に取ってじっと見つめた。
(これを自分の中に入れるの…?!怖いわ)
未だ処女のレオポルティーナにとって異物を膣の中に入れるのは怖い。かと言って自分で愛撫したり、中に指を入れて香油を塗ったりするのも抵抗がある。
レオポルティーナは、ドミニクの忠告を無視して注射器をエイヤと自分の膣の中に差し込もうとした。
「い、痛っ!」
レオポルティーナは、フーフーと息を吸って吐いて痛みをやり過ごした。その後、恐る恐る注射器を膣の中へ沈めていこうとしたが、三分の一程入れた所でそれ以上入れるのが怖くなってしまった。仕方なく、それで注射器を押して精液を注入したが、浅い所に入った精液は実らなかった。
その上、注射器で膣壁を傷つけてしまったようで、閨の後の数日間、局所の痛みで寝込む羽目になってしまった。
------
この人工授精の方法は、もちろん現代の医療知識からすれば非論理的で非効率も甚だしいものですが、この世界のこの時代の医療知識での精一杯の方法という設定です。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
45
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる