愛ゆえに~幼馴染は三角関係に悩む~

田鶴

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28.結婚式

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レオポルティーナにとっては待ちに待った、フェルディナントとヨハンにとっては悪夢の結婚式の日がやってきた。

フェルディナントはレオポルティーナにヨハンとの関係を打ち明けなかったから、夫としての務めを果たさなければならない。特に大事なのは初夜だ。フェルディナントはそのことを考えると気が沈んだ。ヨハンは結婚式の間、嫉妬で正気を保てるかどうか分からないほどだった。

そんなこととは露知らず、レオポルティーナはフェルディナントと初めてキスできると夢見心地でバージンロードの入口に父親にエスコートされて立った。その姿を見たフェルディナントは、誓いのキスをどうやって躱せばいいのか冷や汗が出てきた。手袋も手汗でぐっしょり濡れてしまったが、今日から義理の父となったクレットガウ伯爵からレオポルティーナを託されてフェルディナントはなんとか祭壇の前に立った。

レオポルティーナは、結婚式の間、フェルディナントと手を繋ぐことはなく、彼の手袋が濡れていることに気付かなかった。しかし腕に手を添えた瞬間、フェルディナントがビクッとしたのには流石に気付いて驚いた。それを察したフェルディナントは慌てて言い訳をささやいた。

「ごめん……ちょっと緊張してる」
「私もですわ」

レオポルティーナは痩せ型なのを除けば平均的な身長だが、フェルディナントは男性としては身長が小さいので、レオポルティーナが低めのハイヒールを履いていても隣に立った花婿と同じぐらいの身長に見える。そのため、神官の前で誓いのキスをするためにベールを上げてもらう時もレオポルティーナはしゃがまずに済んだ。遠目にはわからなかったかもしれないが、フェルディナントのベールを持つ手はブルブルと震え、額には汗が浮かんでいた。

フェルディナントの秀麗な顔が近づいてきてレオポルティーナは頬を赤く染めたまま目を瞑った。フェルディナントはレオポルティーナの唇の横に紙一重で触れるか触れないか分からないないほどの距離まで唇を近づけてすぐに顔を離した。レオポルティーナから離れた直後、フェルディナントはヨハンの刺すような目線に気付き、胸が罪悪感でいっぱいになった。その一方、レオポルティーナは誓いのキスをきちんとしてもらえなかったことに一抹の不安を覚えていた。

結婚式の後の宴は真夜中まで続いたが、新婚夫婦は例によって中座した。
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