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26.和解の試み
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レオポルティーナは、最近のヨハンの意地悪な態度が気になり、フェルディナントのいない時に理由を聞こうと思ったが、2人きりになるのは中々難しい。未婚の令嬢が男性と2人きりになるのは婚約者であってもはしたないと一般的に考えられているからだ。ましてやヨハンは婚約者の従者だ。起きている時はフェルディナントに付きっきりと言ってもよく、レオポルティーナがフェルディナントに会う時はヨハンも必ず付き従っている。
レオポルティーナは言い考えを思いついた。大陸のはるか東から輸入される貴重な緑茶を入手し、毎日飲むようになった。飲み始めた時はすぐにトイレに行きたくなったが、慣れると3杯ぐらい飲んでもすぐにもよおさなくなった。
それからしばらくしてフェルディナントがヨハンとともに久しぶりに伯爵家を訪れた。
「フェル兄様、今日は珍しいお茶があるの。遠い東の国から輸入された緑茶をどう?」
「いいね。飲んでみたいな」
フェルディナントは、少し苦いそのお茶が気に入り、あっという間に飲んでしまった。お代わりを飲み終わってフェルディナントは少しそわそわしだした。
「ティーナ、お手洗いをちょっと借りるよ」
フェルディナントはもう何度も伯爵家を訪問しているので、トイレの場所は知っており、レオポルティーナの侍女ベッティーナもいるので、ヨハンは応接室に残った。レオポルティーナはベッティーナのことを口が堅いと信頼しているので、ヨハンに聞くのは今と思った。
「ヨハン、最近、貴方、私に対してちょっときついわよね? どうして?」
「そんなことはございませんが…」
「私の他はベッティーナがいるだけだから、子供の頃のようにくだけて率直に話して」
「そうは言っても……」
ヨハンは眉間にしわを寄せているベッティーナをちらりと見た。
「ベッティーナのことは気にしないで。彼女の口は堅いのーーベッティーナ、ヨハンを睨まないで」
「お嬢様、睨んではいません! ですが、この者はお嬢様に対していつも失礼な真似をしています!ですから目に入るとつい……」
「それが睨んでいるって言うのよ。兄様が帰ってくる前に急いで話したいから後ろを向いてくれる?」
ベッティーナはしぶしぶレオポルティーナの背後で後ろ向きになった。
「ねえ、ヨハン、子供の頃のように3人仲良しでいられない? 私が兄様と結婚しても貴方は兄様の従者で私達2人の幼馴染でしょう?」
「大人になったら立場が違うことを自覚して相応しい振舞いをしなければなりません。それに…」
ヨハンは言いよどんだ。
「いいわよ、怒らないから正直に言って」
「それに、子供の頃から元々、私達3人の立場は対等ではありませんでした。子供でも私はフェルディナント様の従者見習いでしたし、お嬢様は婚約者候補でした。遊びにもその立場は反映されていました」
「それはもちろんそうよ。でも3人、今はベッティーナも入れて4人だけど、私達だけの時は友人として、幼馴染としてもうちょっと本音でくだけて話せない?」
「……これだけ立場が違えば無理かと……」
「そう…私達3人は元から対等な絆を築いていなかったって言うのね。それならどうして私の提案を否定したりするのかしら? 従者の立場で失礼じゃないの?」
レオポルティーナは怒らないと約束したのに、本音を言わないヨハンに少し腹を立ててしまった。口に出してからしまったと思ったが、同時に悲しく思った。
ヨハンは拳をきつく握って低い声でゆっくり話し始めた。
「私は……私は……坊ちゃまとお嬢様を子供の頃から知る者として、従者ではありますが、おふたりが貴族令息・令嬢の道から外れないようにと……」
「なんだか矛盾してるわよ……もういいわ」
失望したレオポルティーナがヨハンの言葉を遮るのとほぼ同時に扉がノックされ、フェルディナントが戻ってきた。
レオポルティーナはヨハンと分かり合うのはもはや無理そうだと感じて悲しくなった。
レオポルティーナは言い考えを思いついた。大陸のはるか東から輸入される貴重な緑茶を入手し、毎日飲むようになった。飲み始めた時はすぐにトイレに行きたくなったが、慣れると3杯ぐらい飲んでもすぐにもよおさなくなった。
それからしばらくしてフェルディナントがヨハンとともに久しぶりに伯爵家を訪れた。
「フェル兄様、今日は珍しいお茶があるの。遠い東の国から輸入された緑茶をどう?」
「いいね。飲んでみたいな」
フェルディナントは、少し苦いそのお茶が気に入り、あっという間に飲んでしまった。お代わりを飲み終わってフェルディナントは少しそわそわしだした。
「ティーナ、お手洗いをちょっと借りるよ」
フェルディナントはもう何度も伯爵家を訪問しているので、トイレの場所は知っており、レオポルティーナの侍女ベッティーナもいるので、ヨハンは応接室に残った。レオポルティーナはベッティーナのことを口が堅いと信頼しているので、ヨハンに聞くのは今と思った。
「ヨハン、最近、貴方、私に対してちょっときついわよね? どうして?」
「そんなことはございませんが…」
「私の他はベッティーナがいるだけだから、子供の頃のようにくだけて率直に話して」
「そうは言っても……」
ヨハンは眉間にしわを寄せているベッティーナをちらりと見た。
「ベッティーナのことは気にしないで。彼女の口は堅いのーーベッティーナ、ヨハンを睨まないで」
「お嬢様、睨んではいません! ですが、この者はお嬢様に対していつも失礼な真似をしています!ですから目に入るとつい……」
「それが睨んでいるって言うのよ。兄様が帰ってくる前に急いで話したいから後ろを向いてくれる?」
ベッティーナはしぶしぶレオポルティーナの背後で後ろ向きになった。
「ねえ、ヨハン、子供の頃のように3人仲良しでいられない? 私が兄様と結婚しても貴方は兄様の従者で私達2人の幼馴染でしょう?」
「大人になったら立場が違うことを自覚して相応しい振舞いをしなければなりません。それに…」
ヨハンは言いよどんだ。
「いいわよ、怒らないから正直に言って」
「それに、子供の頃から元々、私達3人の立場は対等ではありませんでした。子供でも私はフェルディナント様の従者見習いでしたし、お嬢様は婚約者候補でした。遊びにもその立場は反映されていました」
「それはもちろんそうよ。でも3人、今はベッティーナも入れて4人だけど、私達だけの時は友人として、幼馴染としてもうちょっと本音でくだけて話せない?」
「……これだけ立場が違えば無理かと……」
「そう…私達3人は元から対等な絆を築いていなかったって言うのね。それならどうして私の提案を否定したりするのかしら? 従者の立場で失礼じゃないの?」
レオポルティーナは怒らないと約束したのに、本音を言わないヨハンに少し腹を立ててしまった。口に出してからしまったと思ったが、同時に悲しく思った。
ヨハンは拳をきつく握って低い声でゆっくり話し始めた。
「私は……私は……坊ちゃまとお嬢様を子供の頃から知る者として、従者ではありますが、おふたりが貴族令息・令嬢の道から外れないようにと……」
「なんだか矛盾してるわよ……もういいわ」
失望したレオポルティーナがヨハンの言葉を遮るのとほぼ同時に扉がノックされ、フェルディナントが戻ってきた。
レオポルティーナはヨハンと分かり合うのはもはや無理そうだと感じて悲しくなった。
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