年下執事が崇める女神～虐げられている男爵夫人を救いたい～

番外編 私はもう貴方を離さない

2．消えた父親

父アドルフのノルマが課される日は、フェリクスとクリストフ兄弟はたいてい鞭打ちされてズタボロになって部屋に帰ってきたが、今日はそれほどではなかった。アドルフが休んだにもかかわらず、ノルマが課されなかったからだ。2人とも不思議に思いながらも、ラッキーだったと思いながら部屋に帰ってきた。

アドルフのベッドは空だった。兄弟は、はなから父親の心配などしていなかったが、今日はラッキーだったとしても、いつ毎日父親のノルマが課されるかわからなくて不安で翌日、監督官にこっそり聞いてみた。

「ああ、お前らの父親か？それなら敷地外に捨・て・て・おいたよ。ろくに働けない奴を置いておくのはもったいないからな。お前らもそうなりたくなかったら、精進して働け」

強制労働は基本的に死ぬまで課される。だが、死ぬのは労働者住居のベッドの上とは限らない。この鉱山の周りに民家はなく、近くの森には危険な狼や熊もいる。死にそうなぐらいに体力を消耗した者が放置されたら、行く末は火を見るよりも明らかだった。

そう言えば、以前、フェリクス達と同室で寝起きしていた者は忽然と消え、今の同居者が入ってきたのだった。そう思い出した兄弟は、ぞっとし、それ以上詮索するのを止めた。

－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

今回は短くなりました。すみません。