年下執事が崇める女神~虐げられている男爵夫人を救いたい~

田鶴

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番外編 私はもう貴方を離さない

1.強制労働

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アドルフ、フェリクス、クリストフの父子3人がコーブルク公爵家に断罪されてから3年が経った。彼らが送られた鉱山では一般の鉱山労働者も働いているが、3人は強制労働者だけが働く坑道で働いていた。坑道の入口には見張りが何人も立っていて一般の坑道に繋がる敷地とは鉄条網で仕切られていた。強制労働者用の住宅と食堂もその仕切り内にあったから、一般労働者と交流も敷地外への外出もできなかった。だが、見張りや食堂職員の噂話から世情は多少耳に入ってきていた。

まだまだ若いフェリクスとクリストフでさえ、断罪前はしたことのない重労働でくたくたに疲れていたから、この重労働がどんなにアドルフの身体を蝕んでいたかは疑問の余地はない。アドルフが男爵だった時は、中年になっても美男子だった面影が残っていたが、今や見る影もなくやつれ、髪の毛はほとんど真っ白になっていた。

そもそも一般の鉱山労働者は、アドルフが強制労働に送られた50歳前後で重労働ゆえにたいてい引退している。ノルマを達成できないアドルフはしょっちゅう監督に鞭打ちを受け、その傷が治らないうちにまた鞭打ちされて、ここの所、熱が出て仕事を休むことが多くなった。そうすると、アドルフのノルマがフェリクスとクリストフに課せられるから、元々仲がよいわけでなかった父子の仲はますます険悪になった。

「おい、親父!今日こそは出てもらうぞ!昨日、俺達はお前のノルマのせいで鞭打ち受けたんだ!今日も鞭打ちされたんじゃたまらない」

アドルフはまだ熱があったが、息子達にそう言われて仕方なくノロノロと立ち上がって仕事に向かった。だが、案の定、ノルマは達成できず、また罰として鞭打ち10回を背中に受け、古傷が癒えてない背中の皮膚が裂けて出血した。それからアドルフは熱が出て立ち上がれず、寝込んでしまった。

息子達が散々罵倒して仕事に行った後、息子達ともう1人の強制労働者と共に寝起きする4人部屋でアドルフは休んでいた。すると、突然誰かが窓をコンコンとノックした。アドルフは起き上がるのが辛かったが、なんとかベッドから立ち上がって窓を開けた。

「・・・君は?!」

窓の外には強制労働者の服を着た人物が立っていた。それはアドルフにとって思いもかけない人だった。
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