年下執事が崇める女神~虐げられている男爵夫人を救いたい~

田鶴

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本編 テレザとアドルフとステファン

31.親子3人の悪巧み

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ラムベルク男爵家の本家コーブルク公爵家の嫡男ルドルフが侍女と情死した。コーブルク家にはルドルフ以外に子供がいないので、よそから養子をもらうことになるが、シュタインベルク王国の王侯貴族の後継は血縁関係が重要視される。その点を考慮すると、後継になれるのは遠縁の分家ラムベルク男爵家の次男クリストフか、当代公爵アルベルトの妹の次男ラルフしかいない。

この頃、アドルフの首は借金で回らなくなり、領地売却寸前まで追い込まれていた。だからアドルフは自分の息子を大貴族の当主にして自分もおこぼれに預かれると舞い上がった。だが、そこに飛び込んできた知らせはアドルフにとって非情なものだった。アルベルトがラルフを後継者に選んだというのだ。

アドルフがそのことを知った翌日、珍しく父子3人-もちろんベルンハルトは入っていない-がアドルフの執務室に揃っていた。

「クリストフ、お前、公爵になりたくないか?」

「なれるもんならなりたいに決まってる」

「だが、ラルフ・フォン・ノスティツが邪魔だ。ついでにルドルフの子を腹に宿している女も邪魔だ」

「「ルドルフの子?!」」

「ああ、公式には妊娠はまだ発表されていない。だが元婚約者がコーブルク公爵家の夜会でルドルフと既成事実を作ったと聞いたことがある。その時の子だろう。アルベルトはその場にいた侍女に口止めしたそうだが、俺はそのうちの1人からベッドで聞いた。あの頭が固いラルフだったら、結婚前に手を出すはずがない。貞節の『て』の字も知らないあいつの両親とは大違いだな」

「ハハハ!父上こそ『貞節』なんて言葉を知ってたって、俺は知らなかったよ。もっとも俺も知らないけどね!」

「そんなことどうでもいい!俺が知りたいのは、俺がこの計画に参加して何か利益があるのかってことだよ!俺は男爵でクリストフが公爵なら、俺にとってこの計画は意味なしだ」

「フェリクス、もちろんお前にも利益があるに決まってる。公爵の実の兄だぞ。クリストフ、これでお前が公爵になれたら、ラムベルク男爵家に便宜を図るんだ。そうじゃなきゃ俺達は協力しない」

「わかったよ」

無駄なことになるとも知らずに、3人はラルフとゾフィーの襲撃計画を立て、公爵家乗っ取り後の捕らぬ狸の皮算用をぐふふと気味悪い笑みを浮かべながら始めた。

------

この話が本編『始まりはデキ婚から』の第20~22話に繋がります。

アドルフがヨナスばりに身体を張って情報収集しているのか、それとも只のヤリ〇ンなのかは、皆様のご判断にお任せします(笑)
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