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本編
19.記憶
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ルチアに首を絞められた翌日、マリオンは意識を取り戻した。すぐに布団の上に乗っている何か重いものに気付く。金色の絹糸のようなサラサラした髪――クラウスだ。クラウスは寝台の横に座ったまま、布団の上に突っ伏して眠り込んでいた。
「ちょっと、クラウス!なんで人の布団の上で居眠りしてるのよ!」
「え……あ?!マリオン!目覚めたのか!気分はどうだ?首は痛くないか?」
「首?!どうして?」
布団から顔を上げたクラウスの顔には涙の痕が残っており、鼻の先は赤くなって目の下は隈で黒く、いつもの美しい貴公子も形無しの様相だ。
短気なクラウスはたたき起こされれば、いつもなら怒り心頭で文句を言うはずなのに、今の彼の口からはマリオンを心配する言葉しか出ない。目覚めたばかりのマリオンは、まだ頭がぼんやりしていてそれに気付かなかった。
マリオンが不思議そうに自分の首を触ると、クラウスは慌ててナイトテーブルの引き出しからビロードの細長い箱を出した。
「ああ、お前のペンダントだったら、ここに入れておいた。首を絞められたから、診察の時に外しただけだ。取り上げたりしないから安心してくれ」
そう言ってクラウスは箱を開けて息を呑んだ。
「あっ?!お、俺がやったんじゃない!箱に入れた時は割れてなかったんだ!」
ペンダントの青い魔石は真っ二つに割れていた。
「そのペンダントがどうしたの?どうして割れてるのを後生大事にケースに入れてるの?」
「い、いや、何でもない…」
マリオンがペンダントを大事にしていたことを知っていたので、とっさにうまく言えなかったクラウスは誤魔化すことにした。
「ふーん?!とにかく私、そんなペンダント知らないわよ。それより何か穏やかじゃないこと言ってたわね。私、首を絞められたの?」
「お前はルチアに首を絞められたんだ。覚えてないか?」
「えっ?!どうしてルチアが私にそんなことしなきゃいけないの?!」
マリオンはルチアがどうしたのか問い詰めたが、クラウスはマリオンの記憶が錯乱しているようだと感じてそれ以上話すことを止め、医師の判断を待つことにした。でもマリオンはいったい何が起きたのかわからず、クラウスを何度も問い詰めた。
「ねえ、ルチアはどこにいるの?」
「先生を呼んだから待ってくれ」
「さっきからそればっかり…」
マリオンが頬を膨らませて不満をブツブツ言っていると、両親と公爵家の主治医が部屋へ入って来た。
「あ!お父様、お母様!クラウスがさっきから変な事ばかり言うのよ。ルチアはどこにいるの?」
「ああ、マリオン!目覚めてよかった!安心して、ルチアはもう…」
「あ、義母上!それについてちょっとお話があります。少し外に出ていただけませんか」
クラウスはルチアのことを話そうとしたマリオンの母の言葉を遮り、3人を部屋の外へ招いた。扉が閉まると、マリオンの父はクラウスを問い詰めた。
「クラウス君、いったいどうしたんだ?」
「マリオンはルチアに首を絞められたことを覚えていません。カールにペンダントをもらったこともです。多分、カールが公爵家を辞めたことも覚えていないと思います。行きがかり上、ルチアが彼女の首を絞めたことは話してしまいましたが、どこまで話していいのかわからなかったので、詳しいことは話していません。ペンダントのこともカールのこともです」
「先生、どうしたものだろうか?もしマリオンの記憶が本当に錯綜しているのなら、ルチアのことはこれ以上話さないほうがいいかもしれないな…」
両親とクラウスは主治医と話して当分ルチアやカールのこともペンダントのこともマリオンに知らせないことにしたが、マリオンは折に触れて何度も聞いてきたので、3人は誤魔化すのに苦労した。
「ちょっと、クラウス!なんで人の布団の上で居眠りしてるのよ!」
「え……あ?!マリオン!目覚めたのか!気分はどうだ?首は痛くないか?」
「首?!どうして?」
布団から顔を上げたクラウスの顔には涙の痕が残っており、鼻の先は赤くなって目の下は隈で黒く、いつもの美しい貴公子も形無しの様相だ。
短気なクラウスはたたき起こされれば、いつもなら怒り心頭で文句を言うはずなのに、今の彼の口からはマリオンを心配する言葉しか出ない。目覚めたばかりのマリオンは、まだ頭がぼんやりしていてそれに気付かなかった。
マリオンが不思議そうに自分の首を触ると、クラウスは慌ててナイトテーブルの引き出しからビロードの細長い箱を出した。
「ああ、お前のペンダントだったら、ここに入れておいた。首を絞められたから、診察の時に外しただけだ。取り上げたりしないから安心してくれ」
そう言ってクラウスは箱を開けて息を呑んだ。
「あっ?!お、俺がやったんじゃない!箱に入れた時は割れてなかったんだ!」
ペンダントの青い魔石は真っ二つに割れていた。
「そのペンダントがどうしたの?どうして割れてるのを後生大事にケースに入れてるの?」
「い、いや、何でもない…」
マリオンがペンダントを大事にしていたことを知っていたので、とっさにうまく言えなかったクラウスは誤魔化すことにした。
「ふーん?!とにかく私、そんなペンダント知らないわよ。それより何か穏やかじゃないこと言ってたわね。私、首を絞められたの?」
「お前はルチアに首を絞められたんだ。覚えてないか?」
「えっ?!どうしてルチアが私にそんなことしなきゃいけないの?!」
マリオンはルチアがどうしたのか問い詰めたが、クラウスはマリオンの記憶が錯乱しているようだと感じてそれ以上話すことを止め、医師の判断を待つことにした。でもマリオンはいったい何が起きたのかわからず、クラウスを何度も問い詰めた。
「ねえ、ルチアはどこにいるの?」
「先生を呼んだから待ってくれ」
「さっきからそればっかり…」
マリオンが頬を膨らませて不満をブツブツ言っていると、両親と公爵家の主治医が部屋へ入って来た。
「あ!お父様、お母様!クラウスがさっきから変な事ばかり言うのよ。ルチアはどこにいるの?」
「ああ、マリオン!目覚めてよかった!安心して、ルチアはもう…」
「あ、義母上!それについてちょっとお話があります。少し外に出ていただけませんか」
クラウスはルチアのことを話そうとしたマリオンの母の言葉を遮り、3人を部屋の外へ招いた。扉が閉まると、マリオンの父はクラウスを問い詰めた。
「クラウス君、いったいどうしたんだ?」
「マリオンはルチアに首を絞められたことを覚えていません。カールにペンダントをもらったこともです。多分、カールが公爵家を辞めたことも覚えていないと思います。行きがかり上、ルチアが彼女の首を絞めたことは話してしまいましたが、どこまで話していいのかわからなかったので、詳しいことは話していません。ペンダントのこともカールのこともです」
「先生、どうしたものだろうか?もしマリオンの記憶が本当に錯綜しているのなら、ルチアのことはこれ以上話さないほうがいいかもしれないな…」
両親とクラウスは主治医と話して当分ルチアやカールのこともペンダントのこともマリオンに知らせないことにしたが、マリオンは折に触れて何度も聞いてきたので、3人は誤魔化すのに苦労した。
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