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ヘルメス服飾店4

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 部屋から出て、こっそり店の前の様子をうかがう私たち。

「困ります、お客様。当店は紹介状をお持ちの方のご依頼しか受けられませんので」
「だったら紹介状を寄越しなさいよ!」
「そういうものではございませんので……どうかお引き取りいただけますか?」
「嫌よ! あたしはロージア家の娘なのよ!? そんな生意気な口を利いていいと思っているの!?」

 うわあああ……

 間違いなくマリーだ。

 従者を二人連れて、店の前で店主に食って掛かっている。

 その様子はまさに絵に描いたようなクレーマーだ。

「……なんだ、あの娘?」
「ロージア家というと……ああ、例の家か」
「ひどい噂も流れていたが、あの様子だと納得だな」

 他の店員や客から冷ややかな視線を向けられているのにマリーは気付いていないようだ。

「とにかくドレスを作りなさい! ヘルメスのドレスを用意するって約束しちゃったんだから! あたしと『あの方』のぶんで二着よ!」
「ですから、紹介状のない方からの依頼は受けられないと何度も」
「は? じゃああたしが約束を破って恥をかいてもいいっていうの!?」
「そういうことを言っているのでは」
「それなら慰謝料を請求するわよ! 精神的苦痛を与えられたんだから、法律院に訴えてやるわ! それでもいいの!?」

 どんどんヒートアップしていくマリー。

 これはひどい……

 クレーマーとはいえマリーは子爵令嬢なので、店主も強く出られず困り果てている。

「なんというか、色々と納得したわ……レイナを放り出すなんてどんな連中かと思ったら、ああいう感じなわけね……」

 ミリネア様が嫌そうにその光景を見ている。

 品格ある公爵令嬢のミリネア様には、マリーの醜態は見るに堪えないようだ。

 そして、ぽん、とミリネア様がなにかを思いついたように手を打った。

「あ、いいこと思いついた」
「はい?」
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