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ヌマド・ブルドン3
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「……な、な、な」
私は言葉が浮かばなかった。
ロージア領を立て直す? なんで私が?
「それはあなたの仕事でしょう、ヌマド様! もともと領地の管理をするのはあなたがすべきことなんですよ!? 確かにロージア家にいた時は私も関わりましたが、それはただの手伝いだったはずです!」
だいたいこの人がうちの領地まで来ている間もロージア領の人々は苦しんでいるのだ。
うちの領地になんて来る暇があったら死ぬ気で領民のために働くべきなのに!
まったくこの人の行動が理解できない。
イライラしたようにヌマド様が言う。
「まったく、どうしてわからないんですか?」
「なにがですか!?」
「あなたはランジス様の婚約者でしょう? だからロージア領のために尽くすのが当然です。あなたの仕事ですよ、これは」
「違いますよ! 私はもう婚約者なんかじゃありません!」
「仮にそうだとしても、あなたは一度旦那様に仕事を任されたんです。そうなったら最後まで務めを果たすのが普通じゃないですか。まったく、子どもじゃないんですから」
「……!」
やれやれ、とむしろ私がおかしいみたいに肩をすくめるヌマド。
言葉が通じない。
なんだこの人は。
だんだん頭が痛くなってきた。
「それでも嫌だとワガママを言うのなら仕方ありませんね」
なんだろう。諦めて帰ってくれるんだろうか?
ぜひともすぐに帰ってほしい。
「それでは賠償金を払ってください。額は……そうですね。ロージア領は赤字が出ていますから、その補填をミドルダム家からしてもらうということで」
あまりの言葉に私は絶句した。
私だけでなく、両親もぽかんとしている。
当たり前だ。こんなバカげた話は聞いたことがない。
い、一応確認しよう。
「それは……今年の雨で得られなかった、本来なら収穫できていたであろう農作物の収入を私たちに代わりに支払えという意味ですか?」
「他に何があるんですか? この程度のこともわからないなんて、所詮は田舎の男爵令嬢ですか。それが嫌ならあなたが戻ってきてロージア領のことをなんとかしてください」
勝ち誇ったように言うヌマド。
ああ……
この人は本気で言っているのだ。
本気で自分の仕事を全部、よその令嬢である私に丸投げしようとしている。
そういえばこの人はずっとこんな感じだった。
かつて私はランジスの父にロージア領での仕事を命じられた際、最初はこの人に仕事を教えてもらっていた。
しかしこの人は真面目に働いておらず、部下に押し付けてばかり。
『は? そんなことくらい自分で考えてやってくださいよ!』
『なんで勝手にやるんですか? 私の指示を聞くのが普通でしょう』
『それはあなたのミスです。私は指示なんてしていません』
……こんな発言を繰り返し、責任逃ればかりしていた。
そのうえこちらがきちんと成果を出すと、その功績だけは自分のものにするのだ。
はっきり言って最悪である。
私がいなくなってからもその性格は相変わらずのようだ。
まあたかが一か月と少しくらいの話なので当たり前だけど。
私は言葉が浮かばなかった。
ロージア領を立て直す? なんで私が?
「それはあなたの仕事でしょう、ヌマド様! もともと領地の管理をするのはあなたがすべきことなんですよ!? 確かにロージア家にいた時は私も関わりましたが、それはただの手伝いだったはずです!」
だいたいこの人がうちの領地まで来ている間もロージア領の人々は苦しんでいるのだ。
うちの領地になんて来る暇があったら死ぬ気で領民のために働くべきなのに!
まったくこの人の行動が理解できない。
イライラしたようにヌマド様が言う。
「まったく、どうしてわからないんですか?」
「なにがですか!?」
「あなたはランジス様の婚約者でしょう? だからロージア領のために尽くすのが当然です。あなたの仕事ですよ、これは」
「違いますよ! 私はもう婚約者なんかじゃありません!」
「仮にそうだとしても、あなたは一度旦那様に仕事を任されたんです。そうなったら最後まで務めを果たすのが普通じゃないですか。まったく、子どもじゃないんですから」
「……!」
やれやれ、とむしろ私がおかしいみたいに肩をすくめるヌマド。
言葉が通じない。
なんだこの人は。
だんだん頭が痛くなってきた。
「それでも嫌だとワガママを言うのなら仕方ありませんね」
なんだろう。諦めて帰ってくれるんだろうか?
ぜひともすぐに帰ってほしい。
「それでは賠償金を払ってください。額は……そうですね。ロージア領は赤字が出ていますから、その補填をミドルダム家からしてもらうということで」
あまりの言葉に私は絶句した。
私だけでなく、両親もぽかんとしている。
当たり前だ。こんなバカげた話は聞いたことがない。
い、一応確認しよう。
「それは……今年の雨で得られなかった、本来なら収穫できていたであろう農作物の収入を私たちに代わりに支払えという意味ですか?」
「他に何があるんですか? この程度のこともわからないなんて、所詮は田舎の男爵令嬢ですか。それが嫌ならあなたが戻ってきてロージア領のことをなんとかしてください」
勝ち誇ったように言うヌマド。
ああ……
この人は本気で言っているのだ。
本気で自分の仕事を全部、よその令嬢である私に丸投げしようとしている。
そういえばこの人はずっとこんな感じだった。
かつて私はランジスの父にロージア領での仕事を命じられた際、最初はこの人に仕事を教えてもらっていた。
しかしこの人は真面目に働いておらず、部下に押し付けてばかり。
『は? そんなことくらい自分で考えてやってくださいよ!』
『なんで勝手にやるんですか? 私の指示を聞くのが普通でしょう』
『それはあなたのミスです。私は指示なんてしていません』
……こんな発言を繰り返し、責任逃ればかりしていた。
そのうえこちらがきちんと成果を出すと、その功績だけは自分のものにするのだ。
はっきり言って最悪である。
私がいなくなってからもその性格は相変わらずのようだ。
まあたかが一か月と少しくらいの話なので当たり前だけど。
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