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取り立て(ランザス視点)3
しおりを挟む「や、やあ、ニルド卿……」
「挨拶はけっこう! 金を返していただこう。何度も延滞を重ねていたが、今日という今日は絶対に取り立てさせてもらう」
俺たちロージア家はニルド家に借金をしていた。
先日のパーティーを開く資金や王都での暮らしで金を使いまくり、足りなくなったから、親交のある貴族に金を借りていたのだ。
「ま、待ってくれ」
「なぜだ? 徴税のタイミングまで待てば金は入ると言っていただろう。それを信用して今まで待っていたのだぞ!」
「し、しかし雨で作物が育たなかった。金が入らなかったんだ」
フン、とニルド卿は鼻を鳴らした。
「なら金目のものを持っていくまでだ。やれ、お前ら!」
「「「はっ!」」」
ニルド卿の護衛らしきいつかい連中が執務室やら他の部屋に飛び込んでいき、勝手に家のものを漁り始める。
なんだよこいつら!
強盗みたいな真似をしやがって!
「待ってくれ! 話し合おう!」
「黙れ。貴殿はたびかさなる借金に加え、それをろくに返そうともしない。ほとほと愛想が尽きた!」
父の懇願にも耳を貸さないニルド卿。
護衛の一人が壁にかかった剣を手に取った。
俺は慌ててそいつに掴みかかる。
「なにしてんだよ! そいつは俺が買った名刀だぞ! 俺の宝物なんだ!」
「離せ!」
「うわっ!?」
ぶんっ、と腕を振り回されて俺は吹っ飛ばされた。
「なにをするんだ! 俺は腕をすりむいたぞ! これは事件だ。慰謝料を請求させてもらうからな」
そう言ってやった。
これでこいつらから金をふんだくれるはずだ。
ニルド卿は呆れたように言った。
「……さすがは有名なドラ息子。言っていることがめちゃくちゃだ」
「なんだと!? いいから慰謝料を寄越せ! ああ、代わりに借金をチャラにしてやるのでいいぞ。それならお互い納得だろう?」
「これがロージア領を継ぐかと思うと残念だ。おい、作業を続けろ」
「「「はっ!」」」
ニルド卿の連れてきた兵士たちはそのまま強奪行為を続けた。
「おい! ふざけるな! やめろ! おいっ!」
「うるさいぞ! 大人しくしろ!」
俺は暴れるものの、兵士に押さえつけられてなにもできない。
父はうなだれており、なにも言おうとしない。
「……こんなものか。では撤収するぞ」
「「「はい!」」」
「ロージア卿。今後は反省することだな」
ニルド卿はそう言い捨てると去っていった。
何で俺たちがこんな目に遭わなくちゃいけないんだ……!?
こんな世の中は間違っている!
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