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両親

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「領民からの陳情書の整理、終わったよ!」
「ああ、ありがとう、レイナ」
「それにパーティーへの招待状がいくつか届いていたから、うちにメリットがありそうな相手のものをリストアップしておいたわ」
「本当に助かるよ。いつも悪いな」

 にっこり笑う実の父の言葉に、私は「全然いいよ」と笑みを返した。

 現在私は実家であるミドルダム領のカントリーハウスに帰ってきている。

 ただ家にいるのも心苦しいので、領地の仕事を手伝いながらだ。

 ここに関してはロージア家での経験が生きていて、ミドルダム領主である父をきちんと助けられている実感がある。

 父が執務机で書類を整理しながら、口を開く。

「それにしても驚いたよ。まさかロージア家のパーティーに言ったらお前が参加していなくて、ランザス殿に聞いたら『体調不良』の一点張り。面会すらできない状況だと言われて」
「うん……」
「で、帰るときに馬車に乗り込もうとしたら健康なお前が忍び込んでいるんだから、もう何がなんだかわからなかった」
「あのときは驚かせてしまってすみませんでした……」

 父が話しているのは私がロージア家のカントリーハウスから脱出した経緯だ。

 ロージア領からミドルダム領までは徒歩で行ける距離ではない。
 かといってロージア家の馬を使えば私の脱走がランザスたちにバレてしまう。

 咄嗟に思いついたのが、両親がパーティーに来るため乗ってきた馬車に侵入することだ。

 そうすれば領地に戻る両親にこっそりついていけると考えたのだ。

 結果として大成功で、私はロージア家の人間に見つかることなく屋敷を脱出することができた。

 もしロージア家の人間に見つかっていたら、最悪引き留められていたかもしれない。

 そうなれば義両親たちからの『今日まで世話してやったのに』『この恩知らず』などなどの罵倒を浴びたうえ、監禁なんて可能性もあった。

 ……本当にうまくいってよかった。

 私は父に頭を下げた。

「すみません、出戻ってきたりして。せっかくの名家との縁談だったのに……」

 この結婚がうまくいけば、有力貴族であるロージア家とのパイプができて領地が豊かになるはずだった。
 それが私の出戻りのせいですべてご破算となってしまった。

「気にすることはないよ、レイナ。私はお前が幸せになってくれればなんでもいいんだ」
「お父様……」
「領地のことは私や妻がなんとかする。お前はまず、傷ついた心を癒すことからだ」

 にっこりと笑って告げる父。
 その温かい言葉に、涙腺が緩みそうになる。

「……ありがとう、お父様」
「いいさ。それにレイナがいてくれて助かっているからね。領地の仕事を手伝ってくれてお礼をいいたいくらいさ」

 せっかくの婚約を台無しにしてしまった私を責めず、ひたすら優しく接してくれる父。

 ありがたすぎて泣きそうになってしまう。

 戻ってきてよかった……
 ここにいると、ロージア家での私の扱いかどれだけ不当だったかがよくわかる。
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