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ロージア領2

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「そうだ、レイナちゃん! 雨のせいで川が増水して、橋が壊れちゃったのよ。なんとかならないかしら?」

 農民の女性の一人がそんな悩みを口にする。

「橋というのは北のほうにある大きめのものですか?」
「そうなのよ。馬車も通れる立派な橋だったから、直そうと思ったら大変で。領主様に書状を出したんだけど、もう何か月も無視されてるの」
「ええ……」

 義父やランジスはなにをしているのか。馬車が通れないような事態になれば、せっかくの農作物が輸送できない。

 鮮度が落ちれば値段だって下がってしまう。
 そうなれば領地にとっては大損だ。

 本当なら、すぐにでも対処しなくちゃいけないはずなのに……

「すぐに木工職人を派遣します。数日かかると思いますが、それまでは船を運ばせますのでそれでなんとか凌いでください。積み荷を船で、馬や荷台は南の端を使って川を越えればなんとかなると思いますので」
「船!? 橋が直るまでの間に船を使うなんて、そこまでしなくても……」
「そこまでするべきです。それに、皆さんが一生懸命作ったものを運びもせずに腐らせるなんてありえませんよ」

 私は故郷の領地で農民たちの暮らしを間近に見てきた。

 立場こそ違えど、毎日欠かせず作物の世話をする彼らのことを私は尊敬している。
 領地のためでもあるけれど、それ以上に彼らの努力を無駄にしたくない。

「「「……」」」
「な、なんですか?」

 私の言葉に急に無言になる農民のみなさん。

 なにかまずいことを言ったかと不安に思っていると――彼らはいきなりぼろぼろと泣き出した。

「な、なんで泣くんですか!?」
「ぐすっ……領主様たちは俺たちの悩みなんて今まで聞いてくれたことはないんだ」
「そうだ。いつも王都で遊んでばっかりで、金がなくなったら俺たちの税金を増やしてくる!」
「ああ……! 本当にレイナの嬢ちゃんが来てくれてよかった!」

 ドローズさんたちがおいおいと泣くのを聞きながら、私はおろおろすることしかできなかった。

 戸惑ってしまったけれど……それでも、こんなふうに思ってもらえるなら仕事にもやり甲斐があるな。

 私は少しだけ温かい気持ちになれるのだった。
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