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真実3
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「なっ……!? お、乙女の私物になんてことをしてくれるんですか!」
衝撃の事実に思わず声を上げる私。
「そればっかりは本当にすまない! マリアナの影響が部下にも及んでいて、他に手がなかったんだ!」
潔く頭を下げてくるレンバート殿下に、うっ、と言葉に詰まる。
確かにレンバート殿下のここまでの話が本当なら、助けを求めることは難しいだろう。
「今更なんですが、国外に助けを求める手はなかったんですか?」
「難しいね。ロドリオット、なんて存在が平然と受け入れられたからには、隣国もすでにマリアナに支配されている可能性が高い。そうでなければ隣国のほうがすぐ気づくだろう」
「……確かに」
聞けば聞くほどスケールの大きな話だ。
複数の国をまたにかけ、何万人もの人間を洗脳し、さらにそれを対外的には自然に見えるようにやってのけるなんて……もはや神話の領域だ。
話をまとめよう。
まず、黒幕はマリアナ・ローゼス。
彼女は我が国を支配するために、レンバート殿下の婚約者になろうとした。
そのうえで邪魔だった私を、両親やロドリオットという架空の存在まで使って排除しようとした。
私には女神様からの強い加護があり、私がいればマリアナの洗脳を解くことは可能。
もっとも、この国のほとんどの人間がマリアナの影響下にある以上、簡単にはいかないだろうけど。
……ここまで理解して、やっぱりどうしても聞きたいことが二つある。
「質問してもいいですか?」
「なんでも答えさせてもらうよ」
「どうしてレンバート殿下は聖女でもないのに、マリアナに支配されていないんですか?」
これはこれで重要な質問だ。私は女神様の加護があるから、マリアナの洗脳能力に耐性があるにしても……レンバート殿下はそういった特殊な防御はないはず。
「黙秘権を行使させてもらう」
「待ってください! なんでも答えると言ったではありませんか!」
まさか質問の一つ目から回答がもらえないとは想定外だった。
「こ、これは別件なんだ……誓って言うが、君に不利益を与える理由じゃない」
「そう言われても……」
「本当にすまないが、その点だけは聞かないでもらえると助かる……」
顔を赤くして、気まずそうに告げるレンバート殿下。
確かにこの様子からは隠し事が致命的であるとは感じ取れない。
というか、なんだか逆に問題ない気がしてきた。
仮にマリアナがレンバート殿下の精神をいじっているんだとすれば、逆にこんなに怪しい表情はさせないだろうし。
「……はあ、それではそのことは今はいいです」
「恩に着るよ」
「ですがこちらの質問には必ず答えてください。マリアナの正体はなんですか?」
レンバート殿下はこの質問には即答した。
「千年以上も前に封じられた『悪魔』。それが今マリアナという人間のフリをしている邪悪な存在の正体だ」
悪魔。
聖女が善なる女神様の使いだとするなら、悪魔は悪しき魔神の使いだ。
彼らはいにしえの召喚魔術によって呼び出され、膨大な生贄と引き換えに術者に力を与えるとされている。
「悪魔、ですか……王妃教育の際に伝承くらいは聞いていましたが、実在したんですね」
「僕も半信半疑ではあるけど、今の状況を考えると納得せざるを得ないね」
「……それもそうですね」
まあ、女神様の加護があるくらいなんだから、そういった超常の存在があってもおかしくないということだろう。
「僕の目的は、このマリアナを討ってこの国に平和取り戻すことだ。リオナ、君にも協力してほしい」
「わかりました」
なにしろ私は殺されかけたのだ。
さっきはたまたまレンバート殿下に助けてもらえたけれど、次はどうなるかわからない。
家族もマリアナに洗脳されているようだし、このまま静観するのは不可能だ。
というわけで、私は数日前に自分を婚約破棄した人とともに行動することになった。
衝撃の事実に思わず声を上げる私。
「そればっかりは本当にすまない! マリアナの影響が部下にも及んでいて、他に手がなかったんだ!」
潔く頭を下げてくるレンバート殿下に、うっ、と言葉に詰まる。
確かにレンバート殿下のここまでの話が本当なら、助けを求めることは難しいだろう。
「今更なんですが、国外に助けを求める手はなかったんですか?」
「難しいね。ロドリオット、なんて存在が平然と受け入れられたからには、隣国もすでにマリアナに支配されている可能性が高い。そうでなければ隣国のほうがすぐ気づくだろう」
「……確かに」
聞けば聞くほどスケールの大きな話だ。
複数の国をまたにかけ、何万人もの人間を洗脳し、さらにそれを対外的には自然に見えるようにやってのけるなんて……もはや神話の領域だ。
話をまとめよう。
まず、黒幕はマリアナ・ローゼス。
彼女は我が国を支配するために、レンバート殿下の婚約者になろうとした。
そのうえで邪魔だった私を、両親やロドリオットという架空の存在まで使って排除しようとした。
私には女神様からの強い加護があり、私がいればマリアナの洗脳を解くことは可能。
もっとも、この国のほとんどの人間がマリアナの影響下にある以上、簡単にはいかないだろうけど。
……ここまで理解して、やっぱりどうしても聞きたいことが二つある。
「質問してもいいですか?」
「なんでも答えさせてもらうよ」
「どうしてレンバート殿下は聖女でもないのに、マリアナに支配されていないんですか?」
これはこれで重要な質問だ。私は女神様の加護があるから、マリアナの洗脳能力に耐性があるにしても……レンバート殿下はそういった特殊な防御はないはず。
「黙秘権を行使させてもらう」
「待ってください! なんでも答えると言ったではありませんか!」
まさか質問の一つ目から回答がもらえないとは想定外だった。
「こ、これは別件なんだ……誓って言うが、君に不利益を与える理由じゃない」
「そう言われても……」
「本当にすまないが、その点だけは聞かないでもらえると助かる……」
顔を赤くして、気まずそうに告げるレンバート殿下。
確かにこの様子からは隠し事が致命的であるとは感じ取れない。
というか、なんだか逆に問題ない気がしてきた。
仮にマリアナがレンバート殿下の精神をいじっているんだとすれば、逆にこんなに怪しい表情はさせないだろうし。
「……はあ、それではそのことは今はいいです」
「恩に着るよ」
「ですがこちらの質問には必ず答えてください。マリアナの正体はなんですか?」
レンバート殿下はこの質問には即答した。
「千年以上も前に封じられた『悪魔』。それが今マリアナという人間のフリをしている邪悪な存在の正体だ」
悪魔。
聖女が善なる女神様の使いだとするなら、悪魔は悪しき魔神の使いだ。
彼らはいにしえの召喚魔術によって呼び出され、膨大な生贄と引き換えに術者に力を与えるとされている。
「悪魔、ですか……王妃教育の際に伝承くらいは聞いていましたが、実在したんですね」
「僕も半信半疑ではあるけど、今の状況を考えると納得せざるを得ないね」
「……それもそうですね」
まあ、女神様の加護があるくらいなんだから、そういった超常の存在があってもおかしくないということだろう。
「僕の目的は、このマリアナを討ってこの国に平和取り戻すことだ。リオナ、君にも協力してほしい」
「わかりました」
なにしろ私は殺されかけたのだ。
さっきはたまたまレンバート殿下に助けてもらえたけれど、次はどうなるかわからない。
家族もマリアナに洗脳されているようだし、このまま静観するのは不可能だ。
というわけで、私は数日前に自分を婚約破棄した人とともに行動することになった。
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