咎の伝記

ANDEAD

文字の大きさ
上 下
46 / 106
第5章 誰が為の善意

#44 【人の約束と兵器の使命】

しおりを挟む
『人の約束と兵器の使命』



《ステリア地方【南】》

佳奈「うううう…こ、怖い……」
ギュッ
ケイパン「動きづらいよお…」
ギュッ
タナカ「それで僕も掴んだら僕も動けないよ」
ギュッ
ポン「うん、私もね?」
ギュッ
カルラ(…可愛らしい)
カルラ「皆様進みますよ。大丈夫ですか?」
ケイパン「はい先生ー!」
ザッザッザッ
ケイパン「えっと…この辺りだったよな」
タナカ「そうだね。丁度あの辺りだ」
ポン「!」
ケイパン「…ゴーレムは動いてないのかな?」
カルラ「そのようですね」
佳奈「……」
佳奈(どうしてだろう…やっぱりここは落ち着く)
ズズズ
佳奈「!?」
ゴーレム「――――」
ポン「大丈夫です佳奈さん。この子に敵意は無いですから」
佳奈「は、はい……」
ガタガタ
ゴーレム「ココ……マモッタ」
佳奈「…?」
ケイパン「うーん…守ったのは分かったけど何を守ってたんだ?」
ゴーレム「――――」
ケイパン「まただんまりしちゃった」
タナカ「…でも動いたね」
ケイパン「だね!」
ポン(何がトリガーなんだろう?)
カルラ「…佳奈様」
佳奈「!」
カルラ「憶測で申し訳ございません…ですがやはりこの方と貴方は何かの関係があるのだと思います」
佳奈「私に…?」
カルラ「1人の時もこの方は姿を現した…それが何よりの証拠かと」
佳奈「…でも」
タナカ「もし良かったら佳奈さんから色々聞いてみて欲しい。僕達に答えが返ってこなくても君なら可能性があるから」
佳奈「…わ、分かりました」
ザッザッザッ
ケイパン(…頑張れ!佳奈!)
佳奈「えっ…と…ゴーレム…さん?」
ゴーレム「――――」
佳奈「私は…その、貴方と知り合いなんですか…?」
ゴーレム「ココ…ムカシノバショ」
佳奈「昔の場所…」
ゴーレム「ズット…イタ。マモッタ…ゴメンネ」
佳奈「…???」
ケイパン(…会話は成立してる?)
タナカ(言葉は返ってきてる。佳奈さんが忘れてるだけなのかな)
佳奈「あ、あの!」
ゴーレム「――――」
佳奈「…ごめんなさい。私には何が言いたいのかさっぱり」
ゴーレム「ワルイ…オレ。ヤクソク……ヤブッタ」
佳奈「約束…?」
カルラ「…少しよろしいでしょうか」
佳奈「!」
カルラ「佳奈様は…ここに来ると落ち着くと申されていました。その理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」
佳奈「それは…」
ケイパン「?」
佳奈「本当にごめんなさい。私もなんでなのか分からないんです」
ポン「え…?」
佳奈「昔にここで何かあった思い出も無いですし…本当に謎というか」
ケイパン「うーん…何かわかるかと思ったけど余計こんがらがった」
佳奈「ご、ごめんなさい!力になれなくって」
ポン「そんなそんな…佳奈さんのせいじゃないですよ」
ザッザッザッ
美嘉「ン…こんなとこで何してんだお前ら」
ケイパン「!」
佳奈「美嘉さん!?」
美嘉「佳奈…お前の挙動不審にあんま他の奴を巻き込むなよ」
佳奈「そんなこと違います!!」
ケイパン「そ、そうそう!これは俺達が自分で引き受けた仕事なんだ」
美嘉「?」
――
美嘉「なるほど。それで当の本人連れてこの場に来てどうにかしようと」
佳奈「…結果は惨敗です……ははは」
美嘉「…ネガってんな」
コンコンッ
美嘉(…年季も入ってる。昔の産物ってのは間違いねぇのか)
佳奈「そ、そんな叩いたら!爆発しますよ!!」
美嘉「しねーよ」
ゴーレム「――――」
美嘉「…よし、一旦城戻るぞお前ら」
ケイパン「え」
美嘉「ここにこのまま居ても何も変わんねぇだろ?」
佳奈「お城に行ったら何か分かるんですか!?」
美嘉「…あつい」
グイッ
美嘉「断言は出来ねぇが昔のモンって話なら私達の王が何か知ってるかもしれねぇだろ?」
カルラ「…?」
カルラ(昔に…詳しい?)

《ステリア地方【南】――ステリア王国》

“ステリア城”

<3階――王の間>
ワスプ「…動くゴーレムね」
牌那「怪我はなかったのかい?」
美嘉「あぁ。人は襲わねぇタイプだ」
佳奈「な、何か知りませんか!」
ワスプ「…世界坊達にも分かるよう話すのはめんどくせぇな」
ケイパン「ご、ごめんなさい」
ワスプ「まぁいいか。そのゴーレムはお前らが見た通り人を襲わない昔の生き残り。五十嵐の残した平和のための産物だ。そして…あの生き残りと深く関わった奴はもう今この世界にはいねぇ」
ポン「!!」
タナカ「それ…って」
ワスプ「名はカリエ。先代の宮廷魔術師だ」
カルラ「先代の…宮廷魔術師」
美嘉「それって」
佳奈「私の……お母さん…!?」
ワスプ「…お前が産まれてすぐ逝ったんだ。顔も声も知らねぇよな」
佳奈「は、はい……名前しか」
ワスプ「アイツも生まれつき身体が弱かったからな…餓鬼の頃からワタシがこの城で面倒を見てた。どこでどう出会ったのは馴れ初めは知らねぇがアイツの口からゴーレムの話は何度か聞いてたよ。心優しい子がいるの。鈍感さんだけど素敵な子なの。可愛らしいのってな」
佳奈「…………」
ワスプ「…ずっと笑ってたよ。身体が弱ぇくせにアイツはろくに言うことも聞かねぇまま外をほっつき歩いてゴーレムに会いに行ってた。その時は既に腹ん中に餓鬼が居たってのにな」
佳奈「……!!!」

ーーー
?①「そぉっと…そぉっと」
ガッ
?①「うっ……」
ワスプ「…どーこ行くんだお前は」



カリエ「……ゆ、許してくれませんか…?」
☆30歳:女性
:ステリア城の宮廷魔術師。
 生まれつき身体が弱かったが
 魔術師としての力は誰もが認めるほど。



ワスプ「お前自分の身体そろそろ労わってやれよ。娘に会えねぇぞ」
カリエ「いいえ、会います!この子は私と会うために産まれるんです」
ナデナデ
ワスプ「だったら尚更だろーが」
カリエ「で、でもっ!!」
ワスプ「例のゴーレムんとこか」
カリエ「…はい」
ワスプ「そんなに会いたきゃここに連れてくりゃいいだろう。人襲わねぇ安心安全な奴なんだろ」
カリエ「それが…」
――
ワスプ「はぁ?約束したァ!?」
カリエ「だ、だって知らなかったんですもん!!あの子にとって…そんな約束が重いものだったなんて」
ワスプ「…アイツらにとっちゃ約束なんて自分に課せられた使命との違いがねぇんだよ。縛りとも言える」
カリエ「う、うぅ…」
ワスプ「それで?どんな約束したんだ」
カリエ「そ、それは……」
ワスプ「もじもじしてねぇで早く言え」
カリエ「――――――――――」
ワスプ「…………無邪気かよ」
カリエ「し、知らなかったんですもん!!!」
ワスプ「…はぁ」
グシャグシャ
カリエ「知らなくて…本当に知らなかったし……」
ブツブツ
ワスプ「うだる暇あったら早く準備しろ」
カリエ「え…?」
ワスプ「病弱を1人で行かせるわけねぇだろ。ワタシも行くよ」
カリエ「ワスプさん……!!!」
ダッダッダッ
ギュッ
カリエ「ワスプさん~~!!!」
ワスプ「走ってくんな!!赤ん坊居んだろうがお前は!!!」
ーーー

ワスプ「……」
ケイパン「約束…!!」
佳奈「お母さんが…あのゴーレムさんと……」
ワスプ「…天真爛漫な餓鬼のまんまだったな。教えるよ佳奈」
佳奈「!」
ワスプ「カリエの約束は…花だ」
佳奈「お花…?」
カルラ「!!」
カルラ(だから…あの方の足元の地面が…!!)
ワスプ「よっ」
スタッ
ワスプ「例のゴーレムは鈍感さん。使命と約束に違いは無い」
佳奈「…!!」
ワスプ「さて、当の本人も居ねぇんだ。この約束は引き継がれるよな」
ザッザッザッ
ワスプ「仕事として受け取った冒険者も」
ケイパン「!」
ワスプ「実際に約束を耳にしたワタシとその部下達も」
美嘉「……」
牌那「……」
ワスプ「…実の娘も居てもらう」
佳奈「……はいっ」
ワスプ「カッハハ!随分大所帯になっちまったな」

ーーー
カリエ「あの子…とっても心優しいんです」
ーーー

ワスプ「……想いを紡ぎに行こう」

#44『人の約束と兵器の使命』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

処理中です...