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#120 終戦編 母親

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『終戦編 母親』
――建物カルデアから少し離れた森奥

藍菜「…!!」
鬼姫「アザゼル…今なんて」
涼亡 「ずっと考えてたんだ…このまま何もしないままなんて駄目だ」
ググッ
藍菜「ですが」
ディアブロ「なになに?君天使に戻ったらめっちゃ強いとかそういう感じかな?」
涼亡「……」
カウ「アザゼル…」
涼亡「大丈夫。いつまでも過去に怯えてたら前に進めないんだ…私は天使として戦わなきゃいけない。皆のために。世界のために」
藍菜「…わかりました」
スッ
藍菜「授けます…全てを明らかに―戻りなさい」
パァァァァ
藍菜「現れよ。天使アザゼル」
涼亡「……」
バサッ
アザゼル「…はは」
ーーーーーー
――平野の荒地
ジョーカー「ッ!?」
ガクッ
キノコ「ジョーカー…どうしたの…!?」
ポイズン「…?」
四神「どうした?具合でも悪いか?」
ジョーカー「なん…でだ……懐かしくて力が入らねぇ…ッ?」
アンデッド(さっきの光と何か関係が?)
ジョーカー「分かんない…でも分かる……なんだこれ…」
グラッ
ガシッ
ケイパン「しっかりしろジョーカー!」
紅姫「…!!」
ジョーカー「なん…だよ…この気持ち…!!」
ーーーーーー
――精神世界
鬼姫「藍菜!しっかりせい!!」
藍菜「あ、あぁ…す…まない…!!」
グラッ
藍菜「う…ッ!?」
ホワイト「大丈夫…!?」
カウ「急にどうして…」
黒龍「そういうことか」
ブラッド「何かわかるのか!?」
黒龍「…今しがた元の姿を取り戻したあの天使アザゼル…もとい涼亡は昔の我の友だった」
カウ「君の…?」
黒龍「あぁ」
鬼姫「ではどうして藍菜が―」
黒龍「覚えているはずだ。藍菜とジョーカーは…天使と人間のハーフだ」
全員「ッ!!」

ーーー
ジョーカー「…なぁ」
オーディン「?」
ジョーカー「オーディンさんってアタシらのママ?」
ーーー

ブラッド「じゃあ…まさか…!!」
黒龍「…耐えろ藍菜。その痛みは受け入れるべき過去だ」
藍菜「…っはぁ……はぁ……!!!!」
ーーーーーー
藍菜「…アザゼル?」
アザゼル「うん」
スッ
アザゼル「ありがとうオーディンさん」
ディアブロ(驚いたな…ただの一介の天使だと思ったのに。四大天使と大差ないほどの実力じゃないか)
アザゼル「少しだけ行ってくるね」
藍菜「!」
アザゼル「…贖罪の時間だから」
フッ―
カウ「アザゼル……!!!!」
ーーーーーー
――白日の世界
藍菜「!」
パチッ
藍菜「ここ……は」
ジョーカー「姉ちゃん!」
タッタッタッ
藍菜「!?」
ジョーカー「良かった…居ると思ったんだ!」
藍菜「ジョーカー…どうしてここに…?」
ジョーカー「分かんねぇ…目が覚めたらここに」
藍菜「…!!」
藍菜(私と同じか…さっきまでしてた頭痛も病んだ……じゃあここは)
藍菜「ジョーカー…お前はさっき―」
ザッザッザッ
ジョーカー「!!」
藍菜「!!」
バサッ
藍菜「天……使…違う……ッ」
ジョーカー「…っは…っは」
ドクンドクンドクン
アザゼル「…何から話すべきかな。屑な女の話」

ーーー
藍菜「…私には天使の力がある。母の因子だ」
バサッ
霞「天使…!?」
ーーー
涼亡「アレを知ってて私に戦いを降りろって提案を?」
【涼亡…まだ混乱してるけど今は話を―】
涼亡「鬼組の皆が消されたんだ…それにあの場にはあの子もいた」
ーーー
藍菜「あ、あの!」
涼亡「…?」
藍菜「私達…どこかで会ったり…してませんか?」
无名「アンタも!?」
涼亡「…気のせいだと思うよ」
藍菜「そう…ですか」
ーーー
黒龍「…貴様は」
涼亡「うん。私は天使だ」
黒龍「…!!」
涼亡「元々は天界に居たんだけどね…こっちに降りてきた」
黒龍「…なぜ」
涼亡「んだ」
ーーー
藍菜「…ッ」
ディアブロ「じゃあ―ね」
涼亡「やめろ!!!」
ドンッ
ディアブロ「?」
涼亡「その子に手を出したら…私が殺す…!!」
藍菜「貴方…は……」
ーーー

藍菜「…!!」
ジョーカー「ママ…なのか…?」
アザゼル「…うん」
ジョーカー「嘘…だろ」
ガクッ
藍菜「母さん…どうして私達は貴方のことを…」
アザゼル「私が記憶を封印したんだ」
ジョーカー「!」
アザゼル「…天使でありながら人に恋をした。自分の意思で天界を降りた。彼との間に初めて藍菜が生まれた時……世界が明るくなったんだ」
藍菜「!」
アザゼル「奇跡は起こるって胸が躍ったんだ…自分が奇跡を与える天使だっていうのにさ。後に続いてジョーカー。君も生まれてきてくれたんだ」
ジョーカー「……」
アザゼル「嬉しかった。禁忌を犯した罪深い私でもこの子達のお母さんになる事が出来るんだって。笑って暮らせていいんだって…思えたんだ。奴が神を消すまで」
ジョーカー「!!」
アザゼル「世界の情勢が変わった…咲良…もといディアブロが現世の神を消したことで世界のバランスが変わったんだ。あのまま行けば四神が世界を掌の上で転がすなんて造作もなかった」
藍菜「…」
アザゼル「人と家族になっても私は天使だ…四神の悪行を見過ごすことができなかった。いや、それも単なる言い訳になっちゃうかな…私は」
ググッ
アザゼル「君達の母親で居ることが怖くなったんだ……ッ!!」
ジョーカー「…ッ」

ーーー
「待って…君が行くのは構わない…だけど記憶を封印なんて…!!」
涼亡「このまま奴との戦いに出向いて私が帰らなかった時…この子達には君との記憶だけあればいい」
「どうして!」
涼亡「勝手だってわかってる。だけど…血みどろな戦争に君を、子供達を巻き込みたくない……わがままでごめん」
「だとしても君はこの子達の母親だ!僕と君とこの子達の4人で家族だ!その記憶を――」
パチンッ
「――!!」
ドサッ
涼亡「…ごめん」
ダッダッダッ
ーーー

アザゼル「愚かだ。どうしようも無いクズでゴミだ。自己満で私は君達と彼の大切な家族の絆を封じてしまった」
ペコ
アザゼル「どれだけ頭を下げたって…言葉を並べたって君達の心に届かない事は分かってる。本当に―!!」
ググッ
ジョーカー「…」
藍菜「…頭を上げてください」
アザゼル「!」
藍菜「黒龍が言ってくれました…これは受け入れるべき過去だって」
アザゼル「…!!」
藍菜「私は…貴方の顔も…声も…仕草も…何も思い出せませんでした。今聞いて分かりました…それは貴方が記憶を封じたから」
アザゼル「……」
藍菜「…」
スッ
ガシッ
アザゼル「!」
藍菜「でも母親がいた事実を忘れたことはありません…誰かから深い愛情を注いでもらったこともずっと頭から忘れていません」
アザゼル「…!!」
藍菜「もし天使と人のハーフで…混ざった力が私とジョーカーの能力になったんだとしたら…記憶の封印に幼いながらも私は拒絶したんだと思います」
パチンッ
藍菜「大切な家族の絆を忘れないように――」
ギュッ
アザゼル「藍菜……!!」
ジョーカー「姉ちゃんの能力は…確率操作だもんな」
藍菜「…あぁ」
ジョーカー「私は妹だし…後に生まれたし…何も覚えてなかった」
藍菜「……」
ジョーカー「ママの事なんて覚えてるわけない。当たり前だろ…それどころか自分が天使と人の子だってことすら忘れちまってたんだ…!!」
ググッ
アザゼル「…!!」
ジョーカー「……でも!!!」
アザゼル「…ッ」
ジョーカー「さっき向こうでママがその姿になった時…懐かしくなった」
ポロッ
藍菜「!」
ジョーカー「何も思い出せないくせに…誰かに会いたくなったんだ…!!」
ガクッ
ジョーカー「記憶が封じられてても!ずっと昔にバラバラになっても!アタシ達4人は家族なんだ!!ママはたった1人のママなんだよ!!」
グスッ
ジョーカー「う…っ……ずっと…アタシを守ってくれた姉ちゃんも…遠い昔に死んじまったパパも…見守ってくれてたママも!!」
アザゼル「~~~!!」
ジョーカー「アタシは…ッ大好きなんだよ!!!!」
アザゼル「ジョーカー…!!」
ジョーカー「だから…だがら……ッ」
ポロポロッ
ジョーカー「また会えて……嬉しいんだ…!!」
藍菜「……ッ!!」
アザゼル「あぁ…ぁぁあぁ…!!」
ダダッ
ギュッ
ジョーカー「ああぁぁあああぁ……あぁぁあああ――――!!!」
藍菜「……!!!」
アザゼル「ごめん…ごめんね……ずっと…ずっと……!!!!」



たった1人で妹のために戦い続けてた彼女は
冷静に振る舞うもまだ子供
全てを忘れ新たな仲間と歩き出した彼女は
気丈に振る舞うもまだ子供

過去を恐れ踏み出すことを躊躇った母は
贖罪と共に過去の扉を開く

待っていたのは…幻滅や失望―否。断ち切れる絆―否。
何とも儚く…1人1人が彼女達のために戦い続けた暖かな絆。
まるで神が魅せたような包み込む様な光。



ジョーカー「っはーー…柄にもなく泣いた」
ドテッ
アザゼル「…少し泣き疲れちゃったね」
藍菜「…ジョーカー。母さん。」
アザゼル「うん、ありがとう藍菜」
藍菜「!」
アザゼル「やっぱりしっかり者だね。ありがとう」
ジョーカー「…だな!」
藍菜「…」
ニコッ
ジョーカー「…よっ」
スタッ
ジョーカー「…皆で全部にケリつけねぇとな」
ーーーーーー
藍菜「…」
パチッ
鬼姫「藍菜!」
カウ「良かった…目が覚めた」
ホワイト「大丈夫?まだ痛む…?」
ブラッド「藍菜…無理はするなよ」
藍菜「ありがとう皆。大丈夫だ」
黒龍「…」
藍菜「なぁ黒龍」
黒龍「…ん?」
藍菜「過去は良いよ」
黒龍「…ふっ」
グシャグシャ
藍菜「!」
黒龍「当然だろう」
ニコッ
ーーーーーー
ババッ
ビュンッ
四神「――!?」
ジョーカー「っおおぉぉぉおおおお!!」
ドムッッッ―
四神「が…っは…!!」
ッドォォォォォォォォオン
ケイパン「ジョーカー!」
アンデッド「…もう大丈夫か?」
ジョーカー「っしし…少し皆に心配かけちまったな」
パラパラ
四神「…餓鬼が」
ジョーカー「溜まってたモン全部吐き出した…くっそ泣いたし」
パキッパキッ
ジョーカー「…さっきのアタシの100倍強ぇぞ」
ニカッ
ーーーーーー
ザサュッ
ディアブロ「!」
藍菜「アザゼル…!!」
アザゼル「…」
ザッザッザッ
ディアブロ「不意打ちとはいえ少し食らっちゃったか…多少やるね」
ホワイト「アザゼルは強いのだ!」
アザゼル「まぁね」
カウ「踏ん切りはつけられた?」
アザゼル「大丈夫」
ブラッド「また一緒に戦えるなんてな」
アザゼル「っはは」
鬼姫「…万全だな?」
アザゼル「うん」
藍菜「…お帰りなさい。アザゼル」
アザゼル「……」
バサッ
パァァァァ
アザゼル「…ただいま」
ディアブロ「…」
アザゼル(受け入れてくれた。あの子達の母で居ることを)
アザゼル「…お前を屠る」
ディアブロ「面白いね…!!」

終戦編 母親 ~完~
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