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#85 終戦編 憎みは死ない

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『終戦編 憎みは死ない』
――建物カルデア
草薙「…」
ドンッ
ズバァァァンッ
満桜「无名ちゃん!」
ガシッ
无名「ありがと!」
スタッ
无名「ったく…あっちらこっちら壊して」
草薙「周りに誰も居なくて良かったな」
无名「?」
草薙「お互い不用意に巻き込む心配がない」
无名「悪いケドそんなノロマはこっちには居ないのよ」
ベーーッ
无名「アンタら神格者とは違ってね!!」
草薙「ッ!!」
ブチッ
ドンッ
草薙「お前も―一員だったはずだ!!」
ズバァァァンッ
无名「っと…」
スタッ
无名「別に私は神格者だった頃から1ミリだって口だけジジイに忠誠を誓ったことなんか無いわ」
草薙「なんだと…!!」
満桜「私は確かに四神に拾って頂いた恩があります…だけど世界を壊すような真似を正しいとは思えませんし…看過もできません!!」
草薙「違う…俺達の綺麗事に意味は無い」
チャキッ
草薙「あの人は常に正しい。俺達神格者は彼に従うだけだ」
ザッザッザッ
グゥゥン
ズシィッ
草薙「それ以上も以下も必要ない!!!」
ズッダァァァン
ズザザ
无名「あんの脳筋…!!」
満桜「无名ちゃん!無事ですか!?」
无名「えぇ!大丈夫!」
満桜「仕掛けます!」
スッ
満桜『散式さんしき円克えんかつ』!!!
バラララララッ
草薙「!」
ドンッ
満桜「…ッ!!」
无名「いいえ充分!空中じゃ地上より制限が多い!!」
パチンッ
无名『バイブス』!!!
グォォォォォン
草薙「が…ッ!!」
ズズズ
ヨロッ
満桜『散式さんしきぜろ』!!!
ズドドッ
草薙「…!!」
ガキキキィン
スタッ
草薙『変化へんか氷結ひょうけつ
スッ
パキキキキイィィィン
无名「んなっ…とと…滑る!」
草薙「足場が氷になった時の対策もしてないのか?」
无名「誰がするのよそんなピンポイント対策!!」
草薙「戦いは常に万全の準備で挑むべきだ」
ドンッ
草薙「でなければ命を落とすだけだぞ」
スッ
无名「あーあー!一丁前に説教とかムカつく!!」
ググッ
无名『MK5えむけーふぁいぶ
バキィンッ
ババッ
无名「準備なんかなくたって土壇場でどうにかなんの!」
草薙「…自殺行為か?」
无名「今までそうやって生きてきたのよ!」
スッ
无名「それとアンタ私に気を取られすぎ」
ズズズ
草薙「!」
満桜『散式さんしき桜華雪月おうかせつげつ』ッ!!!
ズドドドドドドドドドッ
草薙「ちぃっ…!!」
トンッ
无名「崩れた瓦礫飛び乗って…猿か!」
无名『くさ』!!!
シュルルルッ
ビタァッ
草薙「!?」
无名「残念!足取った!」
満桜『散式さんしきぜろ』!
ズドドッ
草薙「がはっ…!!」
ドスゥゥゥン
パラパラ
草薙「…ッ!!」
无名「どーしたの?飛び乗った先の瓦礫に足を拘束されてダメージ負うっていうピンポイント対策してこなかったワケ?」
満桜「戦いは…万全の準備で挑むものですよ」
草薙「殺す…ッ!!」
シュンッ
ダダッ
満桜「!」
草薙『大切断だいせつだん』ッ!!!
グゥゥン
ズドォォォォォン
无名「…ッ!!」
ビリッ
満桜「无名ちゃん!?」
无名「私は大丈夫!」
ズザザ
无名「ったく…服破いてくれちゃって」
草薙「嫌なら止まっておけ…直ぐに殺してやる」
无名「断る!」
満桜「无名ちゃんっ!」
タッタッタッ
无名「!」
草薙「足元が留守だぞ満桜!!!」
ドンッ
无名「ちょっ…やめ―」
スッ
満桜『散式さんしき直佳ちょっか』!!!
ズドムッ
バララララララララッ
草薙「!?」
ババッ
満桜「草薙さん…足元がお留守ですよ」
无名「よかった…」
草薙(反応速度が上がってる…神格者にいた頃より成長してるか)
満桜「神格者にいた頃…数字が重荷でした。どうして私が3番を背負うのか分からなくて…その気持ちが自分の足を引きずって戦えなかった」
ザッザッザッ
満桜「私はもう決別したんです!臆病な自分と!!」
スッ
无名「満桜…!!」
ズズゥゥン
シュルル
満桜「能力―【八岐大蛇やまたのおろち】」
草薙「…!!」
満桜「この力は…私が仲間の皆さんを救うためのものです!!!」

ーーー
満桜「うっ…」
ガクッ
无名「ちょーいちょいちょいちょい…大丈夫?無茶しすぎよ」
満桜「すいません…」
ガタガタ
无名「満桜…」
満桜「あはは…駄目ですね私。あんなに啖呵切ったのに」
无名「…」
満桜「いざとなれば身体は震えてばかり…変われないんです」
无名「あのさあ…」
スッ
ムギュッ
満桜「ふみゅ!?」
无名「ムカつく!!!」
満桜「ふぇ…」
无名「弱音を吐くのは結構!でも種類があんでしょ!」
満桜「種類…?」
无名「自分で自分のこと卑下しないで。それだけは許さないわ」
満桜「で、でも…格好悪いですよ…格好悪すぎるじゃないですか…!!」
无名「…何が格好悪いの」
満桜「!」
无名「仲間のために強くなろうとして過去のトラウマ克服しようとして倒れそうになるまで休まないで特訓し続けて…」
ストンッ
无名「アンタ今世界で1番格好いいじゃんっ!」
満桜「…!!」
ドクンッ
无名「震えんのだって仕方ないわ。人は簡単に変われない…その通り。私だってアンタだけが好きなだけで神格者の中じゃ浮いてたわ」
スッ
无名「簡単には変われない!それだけ!1秒ずつでも1年ずつでも人は前に進む!アンタがどこ向いててもそれは同じ!」
トンッ
无名「完璧に使いこなせたくたっていいじゃない。不格好でもいいの。アンタが望んで手に入れるアンタ自身の力なんだから!」
満桜「无名ちゃん…うぇ…ひっく」
グスッ
无名「あーもう泣かないの」
ポンポンッ
无名「少しだけ休憩しましょ?倒れたら元も子もないわ」
満桜「…はい!」
ーーー

シュゥゥゥ
草薙「八岐大蛇…なぜ能力を2つも扱える…!!」
満桜「これが私の新しい力です!」
草薙「ふざけるのも―大概にしろ!!!」
ドンッ
ズバァァァァァッ
ゴトンッ
草薙「このまま削ぎ落としてやる」
グモモ
満桜「そのやり方じゃ私を殺せないですよ」
草薙「!」
満桜「この状態なら」
スッ
満桜『散式さんしき八方大蛇爆散はっぽうおろちばくさん』!!!
ズドドドドドドドドドドド
ババッ
草薙(明らかに崩れる範囲が増えている…!!)
无名「ひゅーぅ!満桜強い!」
草薙「…そうか」
満桜「!」
草薙『突出仙岳としゅつせんがく
ズドドドドドッ
満桜「うっ…!?」
ゴトンッゴトンッ
草薙「今ので2首。大方全ての首を同時に落とせばお前は死ぬんだろ」
満桜「…!!」
草薙「容易いな」
ゴゴゴゴ
満桜「本当に…そうですかね…!!」
ググッ
シュルンッ
草薙「人型…?」
満桜「大蛇!!」
ギュルンッ
无名「あれは…」

ーーー
ヘレン「やっぱり事細かな操作は人型のがやりやすい」
ーーー

ザクククククッ
草薙(手が大蛇のように伸びるのか…)
満桜「それだけじゃないです」
ビキビキッ
草薙「!?」
満桜「私の能力は触れた部分から瓦解させていく!!!」
満桜『散式さんしき桜華雪月おうかせつげつ』ッ!!!
ズドドドドドドドドドドド
バラララララララララッ
ッドォォォォォォン
満桜「はっ…はっ…」
シュゥゥゥ
无名「満桜!」
タッタッタッ
満桜「もう1分間…!!」
无名「充分よ!凄い強かったじゃない!」
満桜「无名ちゃん…はいっ!」
ガラガラッ
ザッザッザッ
无名「!」
満桜「…!!」
草薙「あぁ…脳が揺れるくらいには強かった」
チャキッ
草薙「だがそれ止まりだ」
ダダッ
无名「近づくな!!」
ドゴッ
ガキィィィン
ズザザ
草薙「…」
无名「満桜は休んでていいわ!私がやる!」
満桜「无名ちゃん…」
満桜(気をつけて…!!)
草薙「お前はさして恐怖じゃない」
チャキッ
草薙「ソロで俺に適うほど実力があるかは疑わしいがな」
无名「適う確信が無いと相手してくれないわけ?違うわよね?」
スッ
无名「どの道私達を殺すのが目的なんでしょ?口先でツベコベ言う前にさっさとかかって来なさいよ」
草薙「あぁ…もうその憎まれ口も今日で終わりだッ!!!」
ズダァァァン
草薙『大切断だいせつだん』ッ!!!
ゴゴゴゴ
ババッ
无名「…ッ!!」
草薙「お前に満桜ほどの強化がない限り」
ドンッ
ガシッ
无名「!?」
草薙「俺には勝てないッ!!!」
草薙『凱林かいりん』!!!
ザクククククッ
ズバァァァァァッ
ッドォォォォォォン
満桜「え…?」
无名「かはっ――――!!」
ドサッ
満桜「无名……ちゃん…!?」
无名「――――」
ボタボタ
草薙「呼びかけても無駄だ…もう死んだ」
満桜「……ッ!!!」
草薙「呆気ない最後だったな」
満桜「そん……な」

ーーー
无名「はぁ?一緒にお喋り?アンタ本当に物好きね…い、嫌とは言ってないでしょ!!あぁもうそんな顔すんじゃないわよ…面倒くさいわね」

无名「満桜…超久しぶりに中々怖い夢を見た…の…隣に居てもいい権利をアンタにあげるから…ちょっと今日は…駄目よ」

无名「満桜!!今日はアンタの話が聞きたい!え?なんでもいいから話してくれればそれでいいのよ?私アンタの全部が大好きだもの!」
ーーー

満桜「无名ちゃん…いや……嫌………ッ」
ズズズ
満桜「あああぁぁぁあぁああああッ!!!!!!」
草薙「安心しろ…すぐ同じ場所に送ってやる!!!」
スッ
ドクンッ
草薙「げほっ…!?」
ガクガク
スッ
草薙「なんだ……これは…ッ」
「馬鹿ね…私がアンタ残して死ぬわけないでしょ」
フワッ
満桜「!!」
草薙「馬鹿な…あれだけ切り刻まれて何故生きてる……!!」
草薙「无名!!!」
无名「…」

ーーー
无名「――」

血が止まんない…このままだと死ぬわね…

ドクドク

…ははっ。綺麗な赤色してる……ムカつくわ

フッ

綺麗な…赤……
ーーーーーー
――幻離郷
パチッ
无名「!」
ガバッ
无名「ん…?私死んで…え、死んだの!?」
ザッザッザッ
「ここは天国じゃないよ」
无名「!?」
ポロッ
无名「なんで…アンタが……」
魁輝「貴方が僕の為に泣いてくれるなんて思わなかったな…无名さん」
无名「な、泣いてない!泣いてないから!!」
魁輝「あははっ!そうだったね…ごめんごめん」
无名「…悪かったわね」
魁輝「?」
无名「アンタの仇討ちたかったのに…負けちゃった」
魁輝「ううん負けていないよ」
无名「!」
魁輝「无名さん。貴方が僕に罪悪感を抱く必要はどこにもないよ。何度でも言う。僕はあそこに残りたくて残ったんだ…いつかどこかで死ぬのなら大切な人を守って死にたかった」
无名「…!!」
魁輝「だからどうか泣かないで…僕はその顔を見ていられないよ」
无名「なんで…どうしてよ…!!」
ポスッ
魁輝「…」
无名「なんでアンタが死んじゃうの…!!」
魁輝「貴方が大好きだったんだ。世界で1番…誰よりも」
无名「…ッ!!」
グシッ
无名「あぁもう駄目…ほんっとに駄目!」
魁輝「!」
无名「分かった…分かってるわ魁輝……こんな姿見たくないわね」
スッ
无名「私がアンタの仇を取る!!だから力を貸しなさい!!!」
ペコッ
魁輝「…もちろんですお姫様」
无名「ったく…ほんとキザったらしいわねアンタ…」
魁輝「ははっだからこの気持ちは叶わなかったのかもね」
无名「…そうね」
ググッ
魁輝「无名さん…?」
无名「私は気持ち伝えんのが下手だから!これも1度しか言わない!」
クルッ
ザッザッザッ
スッ
魁輝「……!!!」
无名「気持ち伝えてくれてありがと…私も好きよ魁輝」
魁輝「あぁ…せっかくこんなにいい気持ちなのに…!!」
ドサッ
魁輝「涙で前が見れないな…嬉しすぎるや…!!」
无名「馬鹿ね…大袈裟なんだから」
ポンッ
无名「よく見ときなさい魁輝」
魁輝「!」
ーーー

无名「…アンタが愛した女の生き様を」
草薙「…ッ!!」
ボタボタ
草薙「なるほど…お前が使うのはその能力か…!!」
无名「能力―【色覚鳳来しきかくほうらい】」
草薙「だが…お前に奴の能力が使えるのか!!!」
无名『真紅しんく
ドクンッ
ドンッ
ドゴォォッ
草薙「――っは…!!」
无名「…何当たり前の事聞いてんの?」
草薙「っあぁ!!!」
グァッ
草薙『大切断だいせつだん』ッ!!!!!
无名「そんなにデカい剣振り回した所で何を斬れるわけでもないわ」
スッ
无名「あぁこれ…」
无名『ガチのはなしだから』
ズッダァァァァァァァァァァァァァン
満桜「无名ちゃん!!!」
シュゥゥゥ
草薙「!?」
无名「何驚いてんの?忠告あげたでしょ?」
草薙「どこまでも…馬鹿げた能力だな…!!」
无名「はっ!!馬鹿上等!!」
パァァァ
満桜「!」
无名「もう残り時間少ない!立って満桜!私とアンタとアイツで―勝ちで終わらせる!!!」
満桜「…はいっ!!」
ダダッ

魁輝
无名 合技!!!『春色道はるのいろみち』!!!!!
満桜

合技#3『春色道はるのいろみち』魁輝&无名&満桜
段々上に地面が動き直線上に崩壊させる。
作られた桜に彩られる道には感嘆の声すら届かない。

ドッゴォォォォォォォォォン
草薙「………くそっ」
ドサッ
満桜「はっ…はっ…!!」
无名「…」
フワッ
无名「ありがとう…魁輝」
グッ
草薙「俺は…まだ…!!」
ググッ
満桜「も、もうやめてください!これ以上は草薙さんの身体が―」
草薙「黙れ!!!俺は掃除屋だ……あの人の命令は絶対だ…!!」
无名「…そこまでアンタが固執する理由はなんなの」
草薙「…!!」

ーーー
四神「…この魔獣をお前が倒したのか小僧」
草薙「……」
四神「若くして妙な力だな?何を求めてる」
草薙「特に何も」
四神「…」
草薙「…つまらないから壊した。それだけだ」
四神「自分の生きている今がつまらないか」
草薙「…」
四神「その力を我のために使う気はないか?共に来ればお前が退屈しない刺激を永遠と約束しよう」
草薙「俺の力が…怖くないのか」
四神「怖い?何を戯けた事を…お前は我より強いと言うのか?」
草薙「!」
四神「自分より強者に出会ったことがないか…小さな世界だな。お前より強いやつなどごまんといる…我はそれを見せられるぞ」
草薙「…!!」
四神「いい腕だ…これからの生涯を捧げろ。そして我の元で誰よりも強くなればいい。居場所なら此処にくれてやろう」
草薙「……名前を」 
四神「四神。今日からお前の主となる…異論は認めん」
ーーー

草薙「神格者は……四神様は俺の全てだった…!!」
无名「…あっそ」
ザッザッザッ
无名「行きましょ満桜」
満桜「无名ちゃん…」
草薙「待て!!…げほっ」
无名「…?」
草薙「行くなら……トドメをさせ…屈辱だ…!!」
无名「なんで私がアンタの言うこと聞かなきゃいけないのよ」
草薙「俺が……憎くないのか…!!」
无名「許さないわよ」
満桜「!」
无名「でも憎まない。アンタの動悸も感情も微塵も理解なんて出来ないケドそれはお互い様でしょ」
草薙「…!!」
无名「自分を押し殺した理解なんてたかが知れてんの。死にたいなら私の目のつかないとこで勝手に死んで!それに臆する程度ならさっさと檻ぶっ壊して出てきなさいよ」
草薙「!」
无名「もっともっと世界は広いわよバーカ」
満桜「无名ちゃんの言う通りです…どうかもっと広い世界をその目でご覧下さい」
草薙「……俺は」
ドサッ
満桜「!」
无名「やめときなさい満桜」
満桜「でも……」
无名「気絶してんでしょ?放っとけば起きるわよ!タフなんだから」
満桜「そう…ですね」
ペコッ
満桜「…お疲れ様でした草薙さん」
无名「…律儀ねぇ」
ザッザッザッ

草薙「――」

四神様…貴方はお許しになりますか
任務を何度も失敗する屑な俺を―
色々な事を知りたいと思う…愚かな俺を―

フワッ

君は死んではいけないよ
前にも言ったはずさ…君の事も好きなんだから

終戦編 憎みは死ない ~完~
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