PREDATOR

ANDEAD

文字の大きさ
上 下
80 / 135

#80 覚悟の違い

しおりを挟む
『覚悟の違い』
――建物カルデア
ガチャッ
ザッザッザッ
黒龍「…」
紅玉「ん?なんだもうおったのか」
黒龍「別段することも無かったからな」
紅玉「コーコッコッコ!暇なら飲みに誘えば良いものを」
黒龍「酒は好かん」
紅玉「つれないやつめ…それで?話とは?」
黒龍「…」
トスッ
紅玉「全く!こんなときまで強がってどうするか!」
ポンッ
紅玉「少しは頼れ?妾は随分長い付き合いの仲間ではないか」
黒龍「…」
紅玉「黒龍!」
黒龍「四神が言うには直近まで決戦日が近づいているらしい」
紅玉「そのようだの」
黒龍「最近は夜を眠る度に過去が脳裏に浮かび焼き付くんだ」
紅玉「過去…?」
黒龍「親友が死ぬ夢ばかりを…」
紅玉「!」
黒龍「…」
グシャッ
黒龍「気持ちが追いつかん…日に日に人を恨む気持ちが増えていく」
ググッ
黒龍「最早仲間であっても殺してしまいそうだ…!!」
紅玉「黒龍…」
黒龍「満桜が言っていたことを憶えているか?」
紅玉「…」
黒龍「奴は苦しくトラウマの記憶でさえも大切だと言っていた…真実は果たして本当にそうなのか?脳裏に浮かび上がる度に心が怨念で燃えるこの過去でさえ大切なものなのか」
紅玉「…随分迷走しているな」
黒龍「!」
ギロッ
ザッザッザッ
ガッ
紅玉「妾を殴るか?気が済むなら構わん」
黒龍「…!!」
紅玉「主は咲良に啖呵を切ったんだろう?記憶は飾りでは無いと…元々が人を恨んでいた主が今更憎悪を増やしたところで問題にはならない」
黒龍「…」
紅玉「仲間を殺す?コーコッコッコ!!龍はそういう生き物だろう?」
ザッザッザッ
紅玉「今の神格者は居心地が悪いよなぁ…妾も同じだ」
黒龍「!」
紅玉「主は藍菜を…妾は満桜を気に入っていた」
黒龍「…奴らはもう敵だ」
紅玉「全く…踏ん切りが良いのか悪いのか」
黒龍「そもそも貴様はどうして満桜を気に入っているんだ」
紅玉「ん?話したことが無かったかの?」
黒龍「あぁ」
紅玉「それが不思議でな…そんなことは無かったはずなのだが…200年前に妾が辛く泣き崩れた時…ずっと傍に居てくれたのだ」
黒龍「…」
紅玉「まぁ満桜ならしてくれるとは思うが…いまいち妾が泣き崩れるというのが中々どうして納得いく事象ではなくてな」
黒龍「ふっ」
紅玉「ん?なんか知っておるか?」
黒龍「なに…貴様が泣き崩れる姿を想像して笑いに老けただけだ」
紅玉「なんと失礼な…」
黒龍「…やはり頼めるのは貴様だけか」
ボソッ
紅玉「?」
黒龍「近いうちに起こる決戦…それまで何日の夜を迎えるかは知らんがこの憎悪はもう歯止めが効かなくなるだろう」
紅玉「…」
黒龍「敵を殺して尚まだ怒りに飲まれた我が居たら…貴様が
紅玉「!?」
ガバッ
紅玉「何を言うか!!妾に仲間殺しをさせると!?」
黒龍「戯け。ただの暴龍のどこが仲間だ」
紅玉「どんな形だろうが仲間には変わらんだろう!!」
黒龍「なら貴様はあの裏切り者共もまだ仲間だと言うのか?」
紅玉「…悪いのか」
ググッ
黒龍「………そうか」
紅玉「とにかく!そんなことは二度と言うな!他の奴にも頼むな!」
黒龍「貴様だから頼んでいるんだ」
紅玉「いい加減にしろ!!!自分の我儘を他人に付き寄せるな!!」
黒龍「自分で死ねるなら安いことだ」
紅玉「…ッ!!」
黒龍「紅玉」
紅玉「大体…人を滅ぼすのが主の狙いでもあるだろう?丁度いいのでは無いのか!」
黒龍「黒龍としての意識がある我の目的だ。怒りに飲まれた弱小な龍に叶えさせるわけには行かない」
紅玉「……妾は主に勝てるかどうかすら」
黒龍「頼む」
紅玉「!」
グシャグシャ
紅玉「~~~!!」
ザッザッザッ
紅玉「顔をあげろ!!」
グイッ
黒龍「…」
紅玉「はぁ…分かった!主の相手は妾がしてやる」
黒龍「…すまん」
紅玉「その代わり!妾の願いにも従ってもらうぞ」
黒龍「?」
紅玉「今夜はたっぷりと酒に付き合え!いいな!」
黒龍「ふっ…仕方ないな」
紅玉「対価だ対価!当然であろう!」
ザッザッザッ
紅玉「ほら!行くぞ!ついてこい!」
黒龍「もう飲むのか?」
紅玉「ほぉ~?文句があるか~?」
黒龍「…聞いただけだろう」
ザッザッザッ
ーーーーーー
黒龍「…」
紅玉「寝たか…まさかこんなに酒が弱いとは」
グビッ
紅玉「自分を殺せ…か」

---
黒龍「敵を殺して尚まだ怒りに飲まれた我が居たら…貴様が殺せ」
---

紅玉「阿呆が…」
ザッザッザッ
嶺華「ここに居たのか紅玉」
紅玉「ん?おぉ嶺華!何か用か?」
嶺華「いや姿が見えなかったから普通に探していたんだ…ん?黒龍」
紅玉「コッコッコ…寝ているんだ起こしてやるな」
嶺華「あ、あぁ」
スッ
嶺華「こんなに静かに寝るんだな……」
紅玉「時間はもうすぐ夜になるし丁度よいだろう」
ポンッ
紅玉「黒龍にも思うことが多数ある…相当な覚悟をもって奴等との決戦に挑むだろう」
嶺華「…?」
紅玉「隣に仲間が入れば不安な夜も薄れる…そう思わないか?」
嶺華「黒龍が不安事…だから一緒にお酒を?」
紅玉「コッコッコ…これは本人には内緒だぞ?」
嶺華「あぁもちろん。優しいんだな紅玉」
紅玉「褒めるな褒めるな」
嶺華「それじゃあ私もそろそろ…寝ようかな?」
紅玉「1杯くらい飲んでゆくか?」
嶺華「いやいや遠慮するよ、ここで寝ちゃいそうだからな」
紅玉「主も弱いのかぁ…残念だの」
嶺華「あははっ決戦まで時間があればまたゆっくり貰うよ」
紅玉「そうか…おやすみ嶺華」
嶺華「あぁおやすみ紅玉」
ザッザッザッ
紅玉「…」
グビッ
紅玉「さて…果たして妾は戦を楽しむことが出来るかな」
チラッ
黒龍「…」
ナデナデ
紅玉「なぁ黒龍…主の過去がどれほどのものかは分からないがいい記憶でないなら無理に大切にしようとはしなくていいはずだ。ただその記憶には強く根付いているんだな…主ほどの男が親友と呼ぶ者が」
スッ
紅玉「妾も何かをハッキリと思い出すのだろうか…永遠にかかってる心の異様なモヤを晴らす何かが」
ーーーーーー
――建物カルデアから少し離れた森奥
ザッザッザッ
咲良「…」
ズバッ
咲良「…」
ズババッ
咲良「…あはっ」
ズバババババババババババババババババッ
咲良「あはっ…はははっ!あはははっ!!!あっはははは!!!!」
グシャッ
咲良「ひゃはっ!!!あはははっ!!!っははははは!!!!!!!」

覚悟の違い ~完~
しおりを挟む

処理中です...