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#10 《交われぬ愛》

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『交われぬ愛』
――アイデンセル城

ホワイト「それにしても大きなお城ね」
ザッザッザッ
ガシッ
ホワイト「きゃっ!?」
男「美しいお嬢さんだ。よければ私と踊らないか?」
ホワイト「え、ええっと…」
スッ
男「さぁこの仮面を」
ホワイト「えっ?」
スチャッ
男「お手を」
ホワイト「は、はぁ…」
スタスタスタ
ホワイト(仮面舞踏会のようなものなのかしら…周りは不自然なほどに仮面だらけだものね)
パチッ
ホワイト「きゃっ!?電気が…」
男「慌てないでも大丈夫さ」
ガシッ
ホワイト「あ、あら…どうも」
男「この演出は…彼女の出てくる合図のようなものだ」
ホワイト「彼女…?」
ザッザッザッ
?①「…」
男「この城の所有者にして絶世の美女と謳われる女性」
ホワイト「…!!」
男「彼女こそ全世界が羨む美貌。ベル様」

ベル「…」
【グリム】ベル

クルッ
ペコッ
女「きゃああああ!!ベル様ああああ!!!」
男「くっダメだ…なんて美しい…!!」
ドサッ
ホワイト「本当…なんて綺麗なの」
男「この仮面舞踏会も彼女が初めに開催したのさ」
ホワイト「そうなの?でもどうして仮面を…」
男「その理由については深く探らない方がいい」
ホワイト「えっ」
男「噂程度だが彼女は決して人前であの仮面を外さないんだ。確実に自分が1人になれる時間のみに外すと言われているが確証は無い。彼女が1人になることが条件だからな」
ホワイト「そうなのね…仮面越しでもあんなに綺麗なのに。少し勿体ない気がするわ」
男「ふふっ、俺も同感だよ」
ーーーーーー
コンコンッ
ベル「…お入りなさい」
ガチャッ
女「失礼致します」
ベル「どうしたのですか?」
女「奴の姿を確認しました。もうじきこの城に来るかと」
ベル「!?」
ダッダッダッ
女「ベル様!!」
ベル「国民の避難を最優先に動きます!全員に指示の伝達を!」
女「了解致しました!!」
ダッダッダッ
ベル「…嫌なタイミングで来るものですね」
ーーーーーー
ホワイト「ん!これ美味しい!」
男「そうだろう?ここの料理はどれも一流ものだ」
ホワイト「止まらないわね~」
男「そ、そろそろ…食事はやめて踊らないか…?」
ホワイト「あっ、そ、そうね!」
ビキビキッ
ホワイト「ん?」
男「どうしたんだ?」
ホワイト「いえ…気のせい―」
ピクッ
ホワイト「!!」
ダダッ
ホワイト「伏せて!!」
ガバッ
男「えっ」
ドゴォォォォォン
野獣「ぐおおおぉぉぉおおおおおお!!!!」
男「なっ!?」
ホワイト「なにこの野獣…!!」
ズンッ…ズンッ
女「きゃああああああ!!!」
野獣「出せ…」
ホワイト「!」
野獣「ベルを出せ!!吾輩と婚約を交わしたベルを!!!」
ホワイト「え!?」
男「またこいつか…!!」
ホワイト「し、知っているの?」
男「国中でいい迷惑だ!ベル様を狙う不届きな野獣が!!」
野獣「ベル!!どこにいる!!!」
ホワイト「…!!」
ホワイト(何がどうなっているの…)
ダッダッダッ
騎士女「去れ怪物め!!ここは貴様が来る場所では無い!!」
野獣「黙れ!吾輩も貴様らに用は無い!!ベルを出さぬか!!」
騎士女「ベル様を狙う怪物め…ここで成敗してくれる!!」
野獣「かくなる上は致し方ない…!!」
騎士女「国民の避難は済んだ!!うてぇーー!!」
ホワイト「!」
ダダッ
バババンッ
ガキキキキキィンッ
騎士女「!?」
ホワイト「…!!」
野獣「吾輩を…守ったのか…!?」
ホワイト「よかった…この世界でも無事に能力は使えるのね」
騎士女「貴様何者だ!!さては…野獣の差し金か!!」
ホワイト「!」
野獣「吾輩はベル以外の女など所望していない!」
ホワイト(そ、そうよね…冷静に考えたら出てきてもこの先どうするかなんて特に考えてなかったわ…)
ーーーーーー
ベル「あの方…なぜ庇って―」
女「…全てを整理するため今は多少の混乱を招きましょう」
ベル「えぇ。そうですね」
パチッ
ーーーーーー
ホワイト「また暗転!?」
騎士女「くそっ!!おい!すぐ復旧させてこい!!!」
騎士男「はっ!ただいま!」
シィン
パチッ
騎士女「やっとつい…くそっ!やはり逃げられた…早急に探し出すんだ!!野獣だけでなく…それに加担したあの女も!!!」
騎士男「はっ!!!」
ーーーーーー
ホワイト「はぁ…はぁ…急な暗転だったけれど助かったわ」
ザッザッザッ
ホワイト「それにしてもこれからどうしたら―」
グイッ
ホワイト「へ?」
ガチャッ
バタンッ
ホワイト「いたた…ここは…?」
ベル「手荒な真似をして申し訳ありません」
ホワイト「べ、ベル様!?」
ベル「しっ―!!」
ホワイト「むぐっ」
ベル「兵達にバレてしまうと厄介です。少しだけお静かに」
ホワイト「…」
コクン
ベル「…私の部屋へ移動しましょう」
タッタッタッ
ーーーーーー
ベル「ここなら落ち着いてお話も出来ますね」
コポポポ
ベル「どうぞ」
ホワイト「あっ、ど、どうも…」
ベル「この方と少しお時間を頂いてもいいですか?」
女「了解しました。では席を外します」
ベル「えぇ」
スタスタスタ
ーーーーーー
ガチャッ
バタンッ
女「…さて」
スッ
ザザッ
藍菜「私の役目はこれまで。後は次第に任せるとしようか」
ーーーーーー
ホワイト「あの…どうして私を?」
ベル「その前になぜあの時庇ったのですか?」
ホワイト「!!」
ホワイト(み、見られてたのね…)
ベル「不思議な力をお持ちなことも気になりますが」
ホワイト「えっと…実はどれから話していいのか」


ホワイトは自らがここに来た理由を
一切濁さずにベルへと伝えた。


ベル「シロさんの周りではそのようなことが起きるのですね…」
ホワイト「世界は広いってことですね…」
ベル「では本題に。庇った理由をお伺いしても?」
ホワイト「それは…どうも悪い人に見えなかったんです」
ベル「!」
ホワイト「ベル様からすれば付きまとわれて厄介かもしれ―」
ベル「いえ、貴方には全てをお話するとしましょう」
スッ
ホワイト「仮面を…!!」
ベル「私と彼に起こったことを」
ホワイト「…!!」


ホワイトは全てを話した後に全てを受け入れた
かつてはあの野獣が人間だったこと。
魔法で姿を帰られてしまったこと。
そしてベルと野獣は生涯を誓い合った
恋仲であったことを。


ベル「国民の誰にも話していませんが彼は私を知っています。そして当然私も彼を知っている…婚約は戯言などでは無いのです」
ホワイト「そうなんですか…」
ベル「彼は今では国中から恐れられている身…それなのに私の元へと何度も足を運んでくれてきています。ですが私は一国の女王。私から彼の元へ出向くことは出来ず…」
ホワイト「ベル様は…野獣さんをどう思っているの?」
ベル「えっ」
ホワイト「国の人達と同じで…厄介者のように思ってる?いくら自分に会いたいからと言ってあんなに周りを巻き込むような形をするのは許せないって」
ベル「そ、そんな事ありません!!彼は…ベットは!!確かに少し強引な部分もあるけど…それでも私は彼を…!!」
パンッ
ホワイト「それならもうお決まりです!」
ベル「お決まり…?」
ホワイト「彼の魔法を解けばいいの!」
ベル「と、解き方を知っているのですか!?」
ホワイト「もちろんっ!こういう場合にはたった1つ有効なものというのが昔からあるんです!!」
ベル「そ、その方法とは…」
ホワイト「ずばり!!愛する者からのキス!!!」
ベル「へ…?」
ホワイト「呪いをかけられた者は愛する者からのキスでその呪いを跳ね除け元の姿へと戻っていくの…」
ベル「う、嘘ですよね…」
ホワイト「もちろん本当よ」
ベル「キ、キス!?」
ホワイト「そう!」
ベル「そ、そんな!!婚約もまだなのに…」
ホワイト「恥ずかしがってたら解けるものも解けないんですよ!」
ベル「ですが…うう、分かりました」
ホワイト「!」
ガシッ
ホワイト「大丈夫です!2人は恋仲でベル様はこんなに綺麗なんですから!!」
ベル「…そう、ですかね」
ニコッ
ホワイト「笑った顔も素敵!」
コンコンッ
ベル「!」
騎士女「ベル様!お伝えしたいことが!!」
ベル「…そこでお話ください」
騎士女「はっ!例の不届きな野獣を捕らえました!!」
ベル「!?」
ホワイト「!」
騎士女「どうなさいましょうか…」
ベル(そんな…なんてタイミングで…!!)
ポンッ
ベル「!」
ホワイト「大丈夫!私に任せて ♪」
ベル「シロさん…」
コクン
ザッザッザッ
ガチャッ
騎士女「あっ、ベル様!」
ベル「案内をお願いします」
騎士女「はっ!ただちに!」
タッタッタッ
ーーーーーー
ベル「…」
ザッザッザッ
野獣「ベル…!!」
ベル(ベット…)
スッ
ベル「呪いを解きます」
野獣「なに…!?」
騎士女「ベル様?なにを―」
ベル「シロさん!!!」
タタンッ
ホワイト「行くわよ~」
ホワイト『天鎖創造てんさそうぞう煙玉けむりだま』!!!
ボフゥゥゥゥゥゥン
騎士男「な、なんだこれは!?前が見えん…!!」
騎士女「ベル様をお守りしろー!!!」
野獣「一体なんだと言うのだ…」
タタッ
ガシッ
野獣「!」
ベル「時間がありません…口を…!!」
スッ
野獣「なっ!?」
フッ
パァァァァァァァァァァァァァ
野獣「これは…姿が…!!」
ベル「!」
ホワイト「作戦成功っ♪」

ベット「おお…なんということだ…」
【グリム】ベット

ベル「ベット…元の姿に戻ったのですね…!!」
ガシッ
ベット「あぁベル!!ずっとこの腕で抱きしめたかった!」
ベル「ベット…私も…!!」
スッ
ベット「しかしどうやって私の姿を元に…?」
ベル「助言してくれた方がいたのです!彼女―」
スッ
ベル「あら?」
ベット「…誰もいないぞ?」
ベル「おかしいですね…私も誰のことだか…さっぱり」
シュゥゥ
ホワイト「…きっと私が消えたのはこのお話が終わりを迎えたからなのね。お力になれてよかったわ!ベル様!ベット様と末永くお幸せにね」
パッ
ベル「…」
ベット「ベル?」
ベル「なんでもないです。行きましょう?」
ザッザッザッ


不自然に落ちていた仮面。
意味を知ることは今は無いでしょう。
遠い未来で私が意図を見出した時
きっと新しく何かが生まれるのですから。

かつての創造を越えた貴方のように。

交われぬ愛 ~完~
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