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第1章 伝説の始まり
15.【幕間】王城のクロノスナンバー達
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「ねぇ夏凛、カインお義兄様のご様子はいかがでしたか?」
王城の一室で、
青色髪の美少女は、白髪の執事に向かって話しかけた。
白髪の執事は淡い光を放ち、
姿を銀髪の美しいエルフに変えた。
「満里奈が愛しのカイン様は元気でしたよ。」
スラッとした美少女だ。
エルフの特徴である耳が尖っている。
「どんな話しをしたのか聞かせて?」
目をキラキラして聞いてくる。
「マリーナ姫のご要望とあれば…。」
一礼をする。
「うむっ、セバス、
いえ、セレンに命じます。
って、冗談やめてよー。」
美少女二人が
キャッキャッとしているのは、
実に微笑ましい。
「話していて思ったんだけど、
カイン様は、朝霧海斗くんで間違いないと思うよ。」
流刑地に行く際にセバスに変装して
カイン様と話していた時のことを思い出す。
明らかに、この世界特有の貴族の雰囲気がない。
どう見ても平和な日本で生まれ育った、
おおらかな雰囲気だ。
それに、満里奈は小学校までしか同じではなかったけど、私は小中高まで彼と一緒だったのだ。
そんな私の記憶と彼の言動はよく似ている…ような気がする。
気がするのは、私もあまり彼と話したことがなくて、自信を持てないからだ。
ふと彼との数えるほどのエピソードやこの間の出来事を思い出す。
◇◇◇
小学生。
雨が降っていた日、私は傘を忘れ、校舎の出口で途方にくれていた。
そこに朝霧海斗くんが通った。
何かいいたそうだ。
でも、何も言わず、自分だけ傘を差して歩き出した。
まぁ、仲良くないし、そんなもんか。
そう思ったら、戻ってきた。
そして、「俺の家はここから近いから、傘つかって!あっ、ビニール傘が家に多くて困ってたから、そのまま返さなくていいから。お礼もいらないから!」っと一気に言って走り去ったのだ。
翌日、彼は風邪をひいて休んだ。
お礼を言おうにも、気まずくて声をかけられなかったのを覚えている。
中学生。
文化祭の実行委員に二人でなった。
当時、クラスの男女は仲が悪く、協力してくれる人が少なかった。
みんな部活といって手伝ってくれなかったのだ。
仕方がなく、二人で準備をすることが多くなったが、男女の板挟みにあい、お互いに雑談をする余裕がなかった。
無言で、黙々と作業をした。
何も会話しなかった私たちは、文化祭後、以前よりも会話がしづらくなってしまった。
高校生。
3年生の進路。
ついに朝霧海斗くんと離れる。
女子大に行くことになったからだ。
このまま、ちゃんと話せないままなんてイヤ!
私は親に頼み込んで、携帯電話を買ってもらった。
そして、翌日、彼に声をかけた。
「ずっと一緒だったのに、大学が別で寂しくなるね。携帯番号を交換させて!
???
あれっ、どうやって登録するんだろう。」
彼は苦笑しながら、変わりに操作してくれた。
彼は私の初めての男の子になったのだ。
えっ?もちろん携帯電話の電話帳のことですよ!
でも、すぐに他の人たちが声をかけてきて、携帯電話の電話帳に登録をしていくこととなり、会話はそれ以上つづかなかった。
それから4年後、転生する日。
私と満里奈は、カラオケに来ていた。
私がドリンクバーに飲み物を入れにくると、
なんと、受付に朝霧海斗くんがいたのだ。
でも、4年ぶりだし、何て声をかけたらいいか分からない。
どうしよう、ものすごく大人になってる!
あっ、こっちくる。
思わず部屋へ逃げてきてしまった。
そして私は転生する。
森のエルフ族にだ。
異世界転生。
大人たちが、みんな美男美女だし、
私も美女になるのだろう。
そこは感謝している…。
でも、なんで皆、女性の胸が小さいの!!
前世で小さかった私の胸は、
今世でも小さいことが確定だ…。
エルフとして育った私は、
何不自由なく幸せだった。
特に森での狩りが楽しかった。
弓が思うように当たるのだ。
そして、私は人間の町を、
よくふらふらと歩いた。
エルフだと町で危険じゃないかって?
もちろん、危険。
でも、私はクロノスナンバー8。
私の能力は、『千差万別』。
様々な姿に変えられる能力です。
毎回、姿を変え町を散策しました。
ある日、いつものように町に出かけ、エルフの森に戻ると、森が燃えていた。
人間が、攻めてきたのだ。
みんな捕らえられている。
人間は言った。
「お前一人が奴隷になれば、他は全て助ける。」
私には選択肢がなかった。
奴隷になり、主人にはレオンハルト公爵がなった。
そこで、マリーナこと満里奈と再会する。
本当に嬉しかった。
満里奈は、すぐに私を奴隷から解放しようとしたが、レオンハルト公爵に拒否されたようだ。
せめてものお願いで、マリーナの侍女にしてもらったのだ。
レオンハルト公爵家が、お取り崩しになると、
カイン様は、流刑地に行くことになった。
カイン様は、ステータス値が低い。
クロノス神の加護もないのだ。
もし、カイン様が朝霧海斗君なら、大変なことになる。
「マリーナ様、お願いがあります。
カイン様の流刑地での生活に不自由なく過ごせるようしばらく務めさせて下さい。
皇太子殿下にお願いできないでしょうか?
もちろん変装はします。」
私の奴隷としての主人は、皇太子殿下へ変更されている。
満里奈が逃げないのは、私が奴隷契約に縛られてしまっているからだ。
1週間を条件に、許可は降りた。
私は白髪の執事となって、カイン様とともに流刑地へ向かった。
そして、流刑地の島で、自給自足で生きるための簡単なエルフ流の生活方法を教える。
最終日の夜、彼が寝たあと、
私は変装を解いて、彼の寝顔を見ていた。
「私、朝霧海斗くんと1週間、
同棲しちゃったんだ。」
ふと寝顔を見て、胸がドキドキする。
この気持ちは何なんだろう。
私は、まだ自分の感情を持て余していた。
王城に戻ると、マリーナ姫と皇太子殿下が揉めている。
どうやら、皇太子殿下は、
マリーナ姫に縁談を薦めたいようだ。
この世界、一般的な貴族は、政略結婚が基本だ。
何とも腹立たしい。
「しつこいです!
私はカインお義兄様のものです!」
皇太子殿下は、粘る。
「彼は、すでに犯罪者の烙印を押されている。
どう望んだところで、ムリだ。」
「お義兄様の言葉をお忘れですか?
私の意思の自由を奪うと、どうなるかを。」
皇太子殿下は笑う。
カインが嘘八百を述べたのを分かっているのだろう。
ルッソニー宰相と同様、多くの舌戦経験者から見れば一目瞭然なのである。
そして、念のため時間をかけて実験し、神の天罰などないことを確信している。
「それでも、マリーナにお願いしたいんだ。
それでも聞き入れないのなら、
君のセレンがどうなるか、分かるだろう。」
マリーナは、本気で怒った!
「そんなこと、許しません!」
その時、東の空に光の柱が舞い降りた。
上空の雲が吹き飛び、
魔素の風が吹き荒れる。
皇太子殿下は、
かなり驚いた顔をした。
タイミングがあまりにも良すぎたのだ。
「ほらっ、お義兄様のいったとおりじゃない。
神の一撃よ!」
皇太子殿下は、引きつった顔をして、部下に光の柱の調査報告をさせるために部屋から出ていったのだった。
そして、冒頭に戻る。
◇◇◇
「ねぇ、夏凛。
夏凛も朝霧海斗くんに恋してるよね?」
思わず吹き出す。
「そ、そんなわけないじゃない。」
「この世界、一夫多妻制が普通だから、二人一緒でも大丈夫よ。」
満里奈は、何か思いを秘めつつも、満面の笑みで私へ言ったのだった。
そうか、この気持ちのことを、人は恋と言うのか…。
次回、『16.生涯の心友インパルス 』へつづく。
王城の一室で、
青色髪の美少女は、白髪の執事に向かって話しかけた。
白髪の執事は淡い光を放ち、
姿を銀髪の美しいエルフに変えた。
「満里奈が愛しのカイン様は元気でしたよ。」
スラッとした美少女だ。
エルフの特徴である耳が尖っている。
「どんな話しをしたのか聞かせて?」
目をキラキラして聞いてくる。
「マリーナ姫のご要望とあれば…。」
一礼をする。
「うむっ、セバス、
いえ、セレンに命じます。
って、冗談やめてよー。」
美少女二人が
キャッキャッとしているのは、
実に微笑ましい。
「話していて思ったんだけど、
カイン様は、朝霧海斗くんで間違いないと思うよ。」
流刑地に行く際にセバスに変装して
カイン様と話していた時のことを思い出す。
明らかに、この世界特有の貴族の雰囲気がない。
どう見ても平和な日本で生まれ育った、
おおらかな雰囲気だ。
それに、満里奈は小学校までしか同じではなかったけど、私は小中高まで彼と一緒だったのだ。
そんな私の記憶と彼の言動はよく似ている…ような気がする。
気がするのは、私もあまり彼と話したことがなくて、自信を持てないからだ。
ふと彼との数えるほどのエピソードやこの間の出来事を思い出す。
◇◇◇
小学生。
雨が降っていた日、私は傘を忘れ、校舎の出口で途方にくれていた。
そこに朝霧海斗くんが通った。
何かいいたそうだ。
でも、何も言わず、自分だけ傘を差して歩き出した。
まぁ、仲良くないし、そんなもんか。
そう思ったら、戻ってきた。
そして、「俺の家はここから近いから、傘つかって!あっ、ビニール傘が家に多くて困ってたから、そのまま返さなくていいから。お礼もいらないから!」っと一気に言って走り去ったのだ。
翌日、彼は風邪をひいて休んだ。
お礼を言おうにも、気まずくて声をかけられなかったのを覚えている。
中学生。
文化祭の実行委員に二人でなった。
当時、クラスの男女は仲が悪く、協力してくれる人が少なかった。
みんな部活といって手伝ってくれなかったのだ。
仕方がなく、二人で準備をすることが多くなったが、男女の板挟みにあい、お互いに雑談をする余裕がなかった。
無言で、黙々と作業をした。
何も会話しなかった私たちは、文化祭後、以前よりも会話がしづらくなってしまった。
高校生。
3年生の進路。
ついに朝霧海斗くんと離れる。
女子大に行くことになったからだ。
このまま、ちゃんと話せないままなんてイヤ!
私は親に頼み込んで、携帯電話を買ってもらった。
そして、翌日、彼に声をかけた。
「ずっと一緒だったのに、大学が別で寂しくなるね。携帯番号を交換させて!
???
あれっ、どうやって登録するんだろう。」
彼は苦笑しながら、変わりに操作してくれた。
彼は私の初めての男の子になったのだ。
えっ?もちろん携帯電話の電話帳のことですよ!
でも、すぐに他の人たちが声をかけてきて、携帯電話の電話帳に登録をしていくこととなり、会話はそれ以上つづかなかった。
それから4年後、転生する日。
私と満里奈は、カラオケに来ていた。
私がドリンクバーに飲み物を入れにくると、
なんと、受付に朝霧海斗くんがいたのだ。
でも、4年ぶりだし、何て声をかけたらいいか分からない。
どうしよう、ものすごく大人になってる!
あっ、こっちくる。
思わず部屋へ逃げてきてしまった。
そして私は転生する。
森のエルフ族にだ。
異世界転生。
大人たちが、みんな美男美女だし、
私も美女になるのだろう。
そこは感謝している…。
でも、なんで皆、女性の胸が小さいの!!
前世で小さかった私の胸は、
今世でも小さいことが確定だ…。
エルフとして育った私は、
何不自由なく幸せだった。
特に森での狩りが楽しかった。
弓が思うように当たるのだ。
そして、私は人間の町を、
よくふらふらと歩いた。
エルフだと町で危険じゃないかって?
もちろん、危険。
でも、私はクロノスナンバー8。
私の能力は、『千差万別』。
様々な姿に変えられる能力です。
毎回、姿を変え町を散策しました。
ある日、いつものように町に出かけ、エルフの森に戻ると、森が燃えていた。
人間が、攻めてきたのだ。
みんな捕らえられている。
人間は言った。
「お前一人が奴隷になれば、他は全て助ける。」
私には選択肢がなかった。
奴隷になり、主人にはレオンハルト公爵がなった。
そこで、マリーナこと満里奈と再会する。
本当に嬉しかった。
満里奈は、すぐに私を奴隷から解放しようとしたが、レオンハルト公爵に拒否されたようだ。
せめてものお願いで、マリーナの侍女にしてもらったのだ。
レオンハルト公爵家が、お取り崩しになると、
カイン様は、流刑地に行くことになった。
カイン様は、ステータス値が低い。
クロノス神の加護もないのだ。
もし、カイン様が朝霧海斗君なら、大変なことになる。
「マリーナ様、お願いがあります。
カイン様の流刑地での生活に不自由なく過ごせるようしばらく務めさせて下さい。
皇太子殿下にお願いできないでしょうか?
もちろん変装はします。」
私の奴隷としての主人は、皇太子殿下へ変更されている。
満里奈が逃げないのは、私が奴隷契約に縛られてしまっているからだ。
1週間を条件に、許可は降りた。
私は白髪の執事となって、カイン様とともに流刑地へ向かった。
そして、流刑地の島で、自給自足で生きるための簡単なエルフ流の生活方法を教える。
最終日の夜、彼が寝たあと、
私は変装を解いて、彼の寝顔を見ていた。
「私、朝霧海斗くんと1週間、
同棲しちゃったんだ。」
ふと寝顔を見て、胸がドキドキする。
この気持ちは何なんだろう。
私は、まだ自分の感情を持て余していた。
王城に戻ると、マリーナ姫と皇太子殿下が揉めている。
どうやら、皇太子殿下は、
マリーナ姫に縁談を薦めたいようだ。
この世界、一般的な貴族は、政略結婚が基本だ。
何とも腹立たしい。
「しつこいです!
私はカインお義兄様のものです!」
皇太子殿下は、粘る。
「彼は、すでに犯罪者の烙印を押されている。
どう望んだところで、ムリだ。」
「お義兄様の言葉をお忘れですか?
私の意思の自由を奪うと、どうなるかを。」
皇太子殿下は笑う。
カインが嘘八百を述べたのを分かっているのだろう。
ルッソニー宰相と同様、多くの舌戦経験者から見れば一目瞭然なのである。
そして、念のため時間をかけて実験し、神の天罰などないことを確信している。
「それでも、マリーナにお願いしたいんだ。
それでも聞き入れないのなら、
君のセレンがどうなるか、分かるだろう。」
マリーナは、本気で怒った!
「そんなこと、許しません!」
その時、東の空に光の柱が舞い降りた。
上空の雲が吹き飛び、
魔素の風が吹き荒れる。
皇太子殿下は、
かなり驚いた顔をした。
タイミングがあまりにも良すぎたのだ。
「ほらっ、お義兄様のいったとおりじゃない。
神の一撃よ!」
皇太子殿下は、引きつった顔をして、部下に光の柱の調査報告をさせるために部屋から出ていったのだった。
そして、冒頭に戻る。
◇◇◇
「ねぇ、夏凛。
夏凛も朝霧海斗くんに恋してるよね?」
思わず吹き出す。
「そ、そんなわけないじゃない。」
「この世界、一夫多妻制が普通だから、二人一緒でも大丈夫よ。」
満里奈は、何か思いを秘めつつも、満面の笑みで私へ言ったのだった。
そうか、この気持ちのことを、人は恋と言うのか…。
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