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ここで来ちゃうの龍の里編
何その信頼ありがた迷惑!?
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はい、回想終わり。
いやまあ今回に関しては真面目に予想外と言うか、全く何も考えてなかったと言うか。結局最終的には自業自得とか言われそうだけど、やっぱり私は悪くないと言いたい。
でも普段丸焼きか生かのレベルの物しか食ってなかったら、そりゃちゃんとした料理を食べれば一気に虜になるだろう。
しかも普段が普段で調味料なんか使ってないから、舌も敏感で下手をすれば人間よりも旨味を感じるかもしれない。
いやー、まさかの食テロですな。しかも皆を巻き込んでの。
でもやっぱり人手は必要だし、こうなったのはおばあちゃんに陳情行ったからだし、しょうがない事だと私は思います。
「──なのでこの手を離して頂けると嬉しいです」
その日の販売を終えた後の休憩時間、次の日の仕込みのじゃがいもを剥いていたトリスが遂にキレた。
なので私は自己防衛を図るべく、襟元を掴み上げるトリスに必死に弁明している最中だったりする。
しかも周りはいつもの事と無視した挙句、真面目にじゃがいもの下処理しててこっちも見ない。
まあ真面目。少しは助けてくれても良いんだよ?
そもそも休憩時間までじゃがいもを剥いていたのは、私の指示じゃなくておばあちゃんの指示やんけ、キレるならおばあちゃんにキレなされ。
因みに何故これをおばあちゃんの指示の元やっているかと言えば、修行の一言である。それは人化の術は割と高度な術な事に起因している。
高度な術である人化の術は、完全に人の姿に変化出来ていても普段との体の違いに、思う通り動かすのはなかなか難しかったりする。
そんな人化術。
実は変化している事自体が修行になる程の事なのだ。
なので上位の龍程、人の姿を取っている事が多い。
そして器用に動く事が出来れば力や魔力の運用が、ドラゴン状態に戻った時に、枷から解き放たれる如く変化するのだとか。
そんな訳で細かい作業である料理の下処理などを、修行と称しておばあちゃんに課せられているのである。
因みに一番上手いのは意外にもミコト、次点でレリウス、シーナとムニは同レベルで圧倒的に下手なのがトリスだったりする。
しかも皮を剥いた後に身が残らないとかは可愛い方、なんだったら剥いてる最中に握り潰すのがトリス様のクオリティです。
と、そんなこんなで遂にキレた、細かい作業なんて力で誤魔化せば良いじゃないの火竜代表枠、トリス様がおキレになりました。
「そもそも貴様が余計なことをしなければ」
「いやいや。あの時ちゃんと了承は取ったよね? こんなんになるなんて私も予想外でしたよ?」
「貴様の事だからこの展開まで予想していた可能性がある」
「何その信頼ありがた迷惑!?」
「もう終わってる?」
そんな風に騒いでいた私達の元に遅ればせながら一人の客がやってくる。
「ん? 姉さん?」
その声に私達の視線が客、風龍王に集中する。
顔を見たのは一度きりだが忘れるはずもない。まさかとは思ったが、シーナの言う通り本当に風龍王が一人で立っていた。
「姉さんも食べに来たんっすか?」
「ん。用もあったし、シーナがいつも美味しいと言っていたから来た。けど、もう終わってるみたいね」
「あっ……と」
元々店仕舞いしているのは参加していたシーナも知ってるが、思わずという風に後ろを振り向き私達を見て、少し残念そうな顔をする。
「大丈夫。元々やっていたらと思っただけ──」
「確かに店仕舞いはしてるけど、私達はこれから少し遅めの昼にする予定なんだ。良かったら一緒に食べる?」
「ハクア! いいんすか?」
「迷惑じゃない?」
「大丈夫だよ。シーナもいつも手伝ってくれてんだ、その家族にご馳走するくらいには感謝してるんだよ?」
いやマジで。私一人ではどう考えたってめんどくさい。それを何も言わずに(約一名を除く)皆手伝ってくれんるのだ。それくらいどうということはない。
と、言うわけで部屋に戻ってきた私は早速昼飯の準備に取り掛かる。
ちなみにトリス以外の全員が手伝うと申し出てくれた。もちろんトリス様は手伝わず何やら風龍王と話をしている。
さて、何を作るかな?
屋台をやって気が付いたが実は竜族は部族毎に好みの傾向があったりする。
火竜は濃い味のガッツリ系。特に肉料理が好きなようだ。
水竜は海鮮系や煮込み系が好みのようだ。
地竜は他の部族に比べて野菜や穀物を好み、自然由来のシンプルな味付けを好む。
そして最後に風竜は全体的にサッパリとした物を好み、薄味が好きな者が多いようだ。
まあ、全体的な統計から来る好みの傾向ってだけで個人個人で違ってくるのだが、それでもその傾向が多いから初見の相手に出す物の参考にはなるだろう。
作るのはチキンベアーの骨から出汁を取り各部位の肉と野菜をふんだんに使った鍋。それから簡単に摘めるサラダや鍋に放り込める肉団子などを作る。
〆には個人的に作ったそばとうどんの両方を用意する。
屋台の経験を活かしメニューをある程度決め、各員に指示を出しながら料理を始める。
まずは屋台のメニューで作った時に出たクズ野菜を適当にカットして、砕いたチキンベアーの骨と一緒に混ぜ鍋に放り込む。
鍋に入れる野菜や肉のカットはユエとシーナ、ムニの三人に任せ、私とミコトで肉団子を作り始める。
その時、ふと気になって視線を向けるとトリスと風龍王が話をしている姿が目に入る。
その光景はなんというか──。
「あの二人仲良いんか?」
「うん。良いっすよ」
「風龍王様は元々トリスと同じような立場だったの」
「そうなの?」
「うむ、先代の風龍王が次代を決める前に崩御してな。その時に一番実力のあったシーフィードが風龍王になったのじゃ」
「へぇー」
どうやら龍王の選抜方法は各部族で違うらしい。
火竜は一番強い者が、地竜は世襲制、水竜は話し合いで、そして風竜は指名制なのだそうだ。
そんな中、先代の風龍王は指名をする前に亡くなってしまった。
だから当時、次期龍王候補としてトリス共に修行に励んでいた、一番の実力があり年若かったシーナの姉、シーフィードが風龍王の座に収まったらしい。
あの二人はその関係で今も仲が良いのだそうだ。
「ふーん。つー事はシーナは龍王候補とは言われてても実際龍王になる訳じゃないんだ?」
「そうっすね。私はどちらかと言えば姉さんのスペアって立ち位置っす。まあ、私としても龍王なんて面倒な事にやりたくないっすから、姉さんの補佐で充分なんっすけど」
「それを言ったらムニだって面倒だからやりたくないの。ずっと寝てたいの」
その気持ちはよく分かる。
「随分とハッキリ言うのう」
「ハッ! いやその違うっす!」
「そうなの! 今のは冗談なの!」
二人の言葉に苦笑しながら言葉を漏らすミコトに、しまったという空気を滲ませながら慌てて弁明する二人。
いやもう遅いでしょ。
「いや、気にせんで良い。わしとてその気持ちはわからんでもないからな」
そんな二人に気分を害した風もなく同調するミコト。
立場で言えばこの二人よりも更に重い責任のあるミコトは、二人の気持ちもよく分かるのだろう。
「さっ、話しも良いけどさっさと作って食べようか。腹減ってきた」
「そうじゃな」
ミコトの背負うものに、私が軽々しく言える言葉は無い。だからこそ空気を変えるように言った言葉にミコトも笑いながら同調した。
ミコトがミコトの選びたい道を選ぶ。それは私が思うよりももっと難しいのだろう。そう思いなが料理をつづけるのだった。
いやまあ今回に関しては真面目に予想外と言うか、全く何も考えてなかったと言うか。結局最終的には自業自得とか言われそうだけど、やっぱり私は悪くないと言いたい。
でも普段丸焼きか生かのレベルの物しか食ってなかったら、そりゃちゃんとした料理を食べれば一気に虜になるだろう。
しかも普段が普段で調味料なんか使ってないから、舌も敏感で下手をすれば人間よりも旨味を感じるかもしれない。
いやー、まさかの食テロですな。しかも皆を巻き込んでの。
でもやっぱり人手は必要だし、こうなったのはおばあちゃんに陳情行ったからだし、しょうがない事だと私は思います。
「──なのでこの手を離して頂けると嬉しいです」
その日の販売を終えた後の休憩時間、次の日の仕込みのじゃがいもを剥いていたトリスが遂にキレた。
なので私は自己防衛を図るべく、襟元を掴み上げるトリスに必死に弁明している最中だったりする。
しかも周りはいつもの事と無視した挙句、真面目にじゃがいもの下処理しててこっちも見ない。
まあ真面目。少しは助けてくれても良いんだよ?
そもそも休憩時間までじゃがいもを剥いていたのは、私の指示じゃなくておばあちゃんの指示やんけ、キレるならおばあちゃんにキレなされ。
因みに何故これをおばあちゃんの指示の元やっているかと言えば、修行の一言である。それは人化の術は割と高度な術な事に起因している。
高度な術である人化の術は、完全に人の姿に変化出来ていても普段との体の違いに、思う通り動かすのはなかなか難しかったりする。
そんな人化術。
実は変化している事自体が修行になる程の事なのだ。
なので上位の龍程、人の姿を取っている事が多い。
そして器用に動く事が出来れば力や魔力の運用が、ドラゴン状態に戻った時に、枷から解き放たれる如く変化するのだとか。
そんな訳で細かい作業である料理の下処理などを、修行と称しておばあちゃんに課せられているのである。
因みに一番上手いのは意外にもミコト、次点でレリウス、シーナとムニは同レベルで圧倒的に下手なのがトリスだったりする。
しかも皮を剥いた後に身が残らないとかは可愛い方、なんだったら剥いてる最中に握り潰すのがトリス様のクオリティです。
と、そんなこんなで遂にキレた、細かい作業なんて力で誤魔化せば良いじゃないの火竜代表枠、トリス様がおキレになりました。
「そもそも貴様が余計なことをしなければ」
「いやいや。あの時ちゃんと了承は取ったよね? こんなんになるなんて私も予想外でしたよ?」
「貴様の事だからこの展開まで予想していた可能性がある」
「何その信頼ありがた迷惑!?」
「もう終わってる?」
そんな風に騒いでいた私達の元に遅ればせながら一人の客がやってくる。
「ん? 姉さん?」
その声に私達の視線が客、風龍王に集中する。
顔を見たのは一度きりだが忘れるはずもない。まさかとは思ったが、シーナの言う通り本当に風龍王が一人で立っていた。
「姉さんも食べに来たんっすか?」
「ん。用もあったし、シーナがいつも美味しいと言っていたから来た。けど、もう終わってるみたいね」
「あっ……と」
元々店仕舞いしているのは参加していたシーナも知ってるが、思わずという風に後ろを振り向き私達を見て、少し残念そうな顔をする。
「大丈夫。元々やっていたらと思っただけ──」
「確かに店仕舞いはしてるけど、私達はこれから少し遅めの昼にする予定なんだ。良かったら一緒に食べる?」
「ハクア! いいんすか?」
「迷惑じゃない?」
「大丈夫だよ。シーナもいつも手伝ってくれてんだ、その家族にご馳走するくらいには感謝してるんだよ?」
いやマジで。私一人ではどう考えたってめんどくさい。それを何も言わずに(約一名を除く)皆手伝ってくれんるのだ。それくらいどうということはない。
と、言うわけで部屋に戻ってきた私は早速昼飯の準備に取り掛かる。
ちなみにトリス以外の全員が手伝うと申し出てくれた。もちろんトリス様は手伝わず何やら風龍王と話をしている。
さて、何を作るかな?
屋台をやって気が付いたが実は竜族は部族毎に好みの傾向があったりする。
火竜は濃い味のガッツリ系。特に肉料理が好きなようだ。
水竜は海鮮系や煮込み系が好みのようだ。
地竜は他の部族に比べて野菜や穀物を好み、自然由来のシンプルな味付けを好む。
そして最後に風竜は全体的にサッパリとした物を好み、薄味が好きな者が多いようだ。
まあ、全体的な統計から来る好みの傾向ってだけで個人個人で違ってくるのだが、それでもその傾向が多いから初見の相手に出す物の参考にはなるだろう。
作るのはチキンベアーの骨から出汁を取り各部位の肉と野菜をふんだんに使った鍋。それから簡単に摘めるサラダや鍋に放り込める肉団子などを作る。
〆には個人的に作ったそばとうどんの両方を用意する。
屋台の経験を活かしメニューをある程度決め、各員に指示を出しながら料理を始める。
まずは屋台のメニューで作った時に出たクズ野菜を適当にカットして、砕いたチキンベアーの骨と一緒に混ぜ鍋に放り込む。
鍋に入れる野菜や肉のカットはユエとシーナ、ムニの三人に任せ、私とミコトで肉団子を作り始める。
その時、ふと気になって視線を向けるとトリスと風龍王が話をしている姿が目に入る。
その光景はなんというか──。
「あの二人仲良いんか?」
「うん。良いっすよ」
「風龍王様は元々トリスと同じような立場だったの」
「そうなの?」
「うむ、先代の風龍王が次代を決める前に崩御してな。その時に一番実力のあったシーフィードが風龍王になったのじゃ」
「へぇー」
どうやら龍王の選抜方法は各部族で違うらしい。
火竜は一番強い者が、地竜は世襲制、水竜は話し合いで、そして風竜は指名制なのだそうだ。
そんな中、先代の風龍王は指名をする前に亡くなってしまった。
だから当時、次期龍王候補としてトリス共に修行に励んでいた、一番の実力があり年若かったシーナの姉、シーフィードが風龍王の座に収まったらしい。
あの二人はその関係で今も仲が良いのだそうだ。
「ふーん。つー事はシーナは龍王候補とは言われてても実際龍王になる訳じゃないんだ?」
「そうっすね。私はどちらかと言えば姉さんのスペアって立ち位置っす。まあ、私としても龍王なんて面倒な事にやりたくないっすから、姉さんの補佐で充分なんっすけど」
「それを言ったらムニだって面倒だからやりたくないの。ずっと寝てたいの」
その気持ちはよく分かる。
「随分とハッキリ言うのう」
「ハッ! いやその違うっす!」
「そうなの! 今のは冗談なの!」
二人の言葉に苦笑しながら言葉を漏らすミコトに、しまったという空気を滲ませながら慌てて弁明する二人。
いやもう遅いでしょ。
「いや、気にせんで良い。わしとてその気持ちはわからんでもないからな」
そんな二人に気分を害した風もなく同調するミコト。
立場で言えばこの二人よりも更に重い責任のあるミコトは、二人の気持ちもよく分かるのだろう。
「さっ、話しも良いけどさっさと作って食べようか。腹減ってきた」
「そうじゃな」
ミコトの背負うものに、私が軽々しく言える言葉は無い。だからこそ空気を変えるように言った言葉にミコトも笑いながら同調した。
ミコトがミコトの選びたい道を選ぶ。それは私が思うよりももっと難しいのだろう。そう思いなが料理をつづけるのだった。
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